このコーナーでは6次産業化に関わる様々な識者の方々のインタビューを取り上げています。
今後の6次産業化事業展開のヒントにしていただければと思います。

スペシャルインタビュー


地域発で地域資源を最大に活かして日本を元気にする。
それが私たち世代が後世に贈る最大のプレゼント。 

interview_photo0001.jpg農林水産省食料産業局長 針原 寿朗 氏(当時)

日本の経済を元気にする取り組みならすべてが6次産業化だから
『私の6次産業化、あなたの6次産業化』があっていい


「6次産業化」という言葉が耳慣れないものだと感じてらっしゃる方もまだまだ多いのではないかと思います。この言葉はここ十数年 の間に農林水産業界に出てきたキーワードのひとつなのですが、掛け算で、1次産業、2次産業、3次産業を連携させることで1次産業とその周辺にある関連産業の業界規模を拡大させていこうとするものです。1と2と3は足し算でも6になりますが、1次、2次、3次産業のどこかひとつが欠けても成り立たないという意味で掛け算だと言われているのです。それぞれの分野での事業者が連携することではじめて、6次産業化としての本質が発揮されるわけです。では具体的に6次産業化とは何かと言いますと、1次産業に携わる農林漁業者の方が自ら加工や販売に乗り出していき、自分たちが作った農産物の価値を高めることで、所得を高めていくというのが最も基礎的な取り組みです。いわゆる『農林漁業の6次産業化』の例です。しかし私どもがもうひとつ重要なポイントだと考えているのが『農山漁村の6次産業化』です。農山漁村には美味しい水や空気をはじめ、自然を育む動植物などさまざまな資源が存在しています。これら農山漁村のすべての資源を活かした『産業興し』を考えていく必要があります。農山漁村の6次産業化を進めることで、まだ十分に発揮されていない農林漁業の1次産業のポテンシャルを活かし、日本経済を元気にする原動力となるような役割を期待しているのです。
 ここでひとつ強調しておきたい点は、私どもの考えている6次産業化というのは、農業の周辺にある関連産業(食品産業、肥料や農薬、資材などの産業)を含めた業界規模、産出額でいうと100兆円をどう成長させるかという点に焦点を当てているものだという点です。 10兆円と言われている1次産業の産出額を20兆円にする方法、そして同時に関連産業も100兆円からどんどん飛躍していく。つまり農業と関連産業がWIN WINの関係になって、共にお互いを補いながら長所を伸ばし合う。そして日本を元気にすること、それこそが6次産業化の本質なのです。なので6次産業の推進に関してよく懸念されることとして、1次産業が新たに加工・販売分野に進出すれば「既存の2次、3次産業の利益が侵食されるのではないか」、「6次産業化を行っても日本経済全体でみれば何も変わらないのではないか」という意見がありますが、実際は逆で、食料産業局ではより広い視野で業界全体を活性化させるための前向きな施策として6次産業化を位置づけているのです。
 またもうひとつよく言われることに「農商工連携との違いはなんですか?」というものです。これはいろいろな方がそれぞれの思い で6次産業化を語られている状況のなかで生じた言葉の混乱のせいもあるかと思います。ですが、実はそこはもっとシンプルに考えていただいてよいと考えています。『私の6次産業化、あなたの6次産業化』があって良いと思います。それぞれがそれぞれの思いを持って『私の6次産業化』をたくさん打ち出していただきたい。私ども食料産業局では、そうした多様な6次産業化の取り組みをバックアップするために、個別の案件に対してすべてオーダーメイドで対応できるような政策を整えていく必要があると考えています。そこでは従来のような補助制度をメインにしたものではなく、政策自体も柔軟化させる試みを行っていこうとしています。
 例えば、輸出、観光、IT分野などに乗り出すことも6次産業化の一環となるでしょう。ですから、食料産業局も輸出、観光、ITなどより幅広く新しい分野にまたがる政策を視野に入れた予算の充実を企画しているところなのです。

政策の3つの軸、ソフト、ハード、そしてファンドの形成

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次年度の具体的な施策について関連予算の内訳には大きく3つ、ソフトの関連予算とハード関連予算、そしてもうひとつは新しい取り組みとして立ち上げるファンドの形成・創設があります。ソフト面につきましては、各地域ごとにそれぞれの農山漁村で6次産業化を推し進める人材として「6次産業化プランナー」を設置しました。またそれに加えてより専門的な知識やネットワークを有する「ボランタリー・プランナー」等とを合わせて、今年度は全体で300名ほど任命しています。この指導層を次年度には500名に増強する予定です。そのなかには、前述の輸出やITの専門家など新しい分野で専門的なアドバイスを行える人材を任命することを考えています。
 次にハード面ですが、多様な6次産業化の取り組みに柔軟に対応するために、すべてオーダーメイドで受けるということをやっていきます。これまでは、農業主体タイプなのか、農商工タイプなのか、地産地消タイプなのかといった具合に要件定義が細分化され過ぎてきた面がありますので、6次産業化の施策では、そうした枠組みを取り払おうとしているのです。いくつかの型にはめ込むのではなく、柔軟にあらゆる事例を整備の対象とするようにして地域のお役に立てるようにハード面も強化したいと考えているのです。


1次産業が生み出したバリューを消費者につなげる、
相互にコミットメントする事業者間の強固なパートナーシップの形成


最後にファンドの創設ですが、これには財政投融資資金を活用します。要求額は初年度200億円。これに加えて民間からの拠出として20億円ほどをお願いしたいと考えています。中央に農林漁業を成長産業化するためのファンドを創設し、そのファンドから各地域に創設する20ファンドに出資をする。そしてさらに各地域の20ファンドが地域の6次産業化に取り組んでいる各事業者へ資本を提供をするという形で、地域の取り組みを支援していきます。
 このファンド創設の意図は、農家が作った生産物の持つバリューを消費者である国民の皆さんにきちんとお届けできるような体制を築くことにあります。いまの体制の問題は、農家の方がどんなに一生懸命美味しいものを作っても、その商品価値が川下まで伝わらず途中で途切れてしまっていることなのです。当然マーケットからも商品価値を評価されない。そこで流通、加工、マーケティングにおよぶ3次産業分野の事業者までが1次産業従事者とリスクを共有しながら、共同の事業にコミットメントしていくやり方を作りたいと考えました。リスクと利益を同じように共有することで、事業者間のパートナーシップを強化し、そこから生まれる新しい展開でもって、最終的に商品のバリューチェーンをつなげていけるようにしたいのです。
 その際に、1次産業はどうしても資本力の面が弱いことが問題になります。そこでファンドからの出資という形で資金面を支援していく。なぜ補助金ではいけないのかといいますと、補助金だとどうしてもさまざまな縛りがかかってきてしまうのですが、出資金であ れば柔軟に資金を活用することができます。こうしたファンドの出資による資金の支援体制を形成することで、さまざまな6次産業化の取り組みが円滑に進められ、1次産業が生み出すバリューが国民の皆さんまで滅失されずに届くことにつながるのではないかと考えています。初年度の200億では200ほどの取り組みしか支援できないかもしれませんが、それを何年も継続させることで、地域の所得が増え、1次産業10兆円が20兆円に膨らみ、関連産業100兆円がさらに膨らんでいく。そうしたWIN WINの関係を積極的に支援する、そのためのファンドを作りたいと考えています。
 これまでは、間接金融や補助金を1次産業側に投入する形の政策を行ってきたのですが、今回は関連産業側に直接出資を行うという新しい政策手法を持ち得る、そうした転換をやっていきたいと思います。
 資本金を大量に出資した際、同時に会社の経営もきちんとした体制で行わなければ、資本が減失する可能性があります。そこでソフト面として設置しているプランナーや各ファンドのファンドマネージャーがきちっとその取り組みの出資価値を上げていくようなお手伝いをしたり、出資者の利益を保護しながら会社の適切な運営を行えるようにサポートしていく役割をしていただきます。6次産業化の取り組みに関しては、こうしたソフト面でさまざまな分野のひとびとがアドバイスを行える環境を整え、重層的な取り組みを地域発でやっていただきたいと考えています。
 6次産業化の取り組みは始まったばかりですが、継続させ、地域発で地域資源を最大に活かして日本を元気にする。それが私たち世代が後世に贈る最大のプレゼントになるのだと思います。皆で頑張っていきましょう。(2011年10月11日 取材・撮影/RPI)


プランナーインタビュー


6次産業化プランナー 毛賀澤 明宏
(長野6次産業化サポートセンター)

長野県の農産物直売所をベースとした地域活性化をサポート
中山間地域の農村文化の再生と復興

interview_photo01.png 長野県は全国の中でも北海道に続いて農家が多い県ですが、耕作面積でいうと42番目になります。就農者の多くが兼業農家で、しかも高齢化が進んでいる。農家の数は多くてもほとんどが中小規模で、雪の降る冬は農業はできません。私は大型農業地域や力のある農家よりも、こうした中山間地域の小さな農業をどうやって守っていけばいいのかという問題意識を持ちながら長期にわたり、長野県の農業に関わってきました。今、農業を取り巻く状況は多様化しており、アグリビジネスとして『儲かる農業』の仕組みづくりを目指す人たちも多い。しかし、一方で疲弊した中山間地域の集落の維持、農村のあり方が問われている状況があります。社会全体でビジネスとしての効率化や合理化に注力する事業経営に目が奪われがちですが、小さな農山漁村のあり方の中にこそ本来の社会の原型が立ち現 われているとも言えます。こうした場を絶やさないためにも、今後本当に支援を必要としている農家が継続可能な形で生き残っていけるような施策を考えていかなければいけない。その時に6次産業化の施策をいかにして有効に活用するのかが重要です。
 1× 2× 3の6次産業化ですが、その「1」の部分である農山漁村の第1次産業をどう守っていくのかを考えたとき、キーワードになるのが直売・加工・グリーンツーリズムだと私は考えています。5年ほど前から直売所をベースとした農村の活性化活動を展開し、地域に根付いた直売所での人々のつながりや他の地域とのコミュニケーション、そして情報発信がとても重要だと感じています。そこで月刊の産直新聞の発行を行うなどの取り組みをし、長野県の直売所ネットワークをつくってきました。
 我々プランナーは、地域に根付いた地道な活動を通して農村集落の農業を守る施策を推進していくわけですが、農業の基盤としている大きさの違い、作物の違いで、当然農家の人たちの6次産業化との関わり方も違ってくると思います。そもそもこれからの農業政策は地域政策と一体のものとして考えられなければいけません。地域の6次産業化が大きなテーマとしてあり、プランナーは市町村が構成する地域、集落単位での農業の6次産業化を主軸にした地域おこしを進めていくというスタンスでなければ、本当の意味での農業改革は難しいでしょう。だから6次産業化のサポートにあたり、各農家の試みと地域政策とのつながりをどう進めていくのかがキーになると考えています。例えば直売所のあり方や農村集落のあり方をプランニングする際は、総合的かつ包括的にそれぞれの事業を位置づけていこうとすべきだと思いますし、地域を俯瞰する視野を持ちながら申請者である農家の事業計画を策定し、協業者などもコーディネートしていきたいと思います。またプランナー同士のネットワークや情報交換を通じて、6次産業化に関わっている人たち全体の力で農業改革の方向性を定めていかなくてはいけないとも思っています。
 いま長野県の直売所には、非常に意欲的で、自分で生きがいのある農業をやり始めている人が集まってきています。今後もそういう人々の大きな受け皿になる直売所をサポートし、自分たちで自分たちの地域を守っていく、それによって日本の農業を守りたいという思いを持つ農業生産者たちが増えてくれることを願ってやみません。


ボランタリー・プランナー 澤浦 彰治
(株式会社 野菜くらぶ グリーンリーフ株式会社 代表取締役)

6次産業化を目指す者は、まず数字に強くなる必要がある
農業簿記をやっていますか?

interview_photo01-1.png 自ら6次産業化認定を受けながら、ボランタリー・プランナーとして地域の6次産業化を牽引する澤浦氏は「片手に理念、片手にそろばん」を合言葉に安心安全な農産物とその加工食品を、農家の暮らしが成り立つ価格で販売するというスタイルを貫く。それは「農家を守ることは日本の農業を守り、ひいては食べる人たちの生活を守ることにつながる」からだ。それでは『農家の暮らしが成り立つ価格』とは何か。それを導くための手法が『農業簿記』。農業経営は、一般的な業種に比べ、保有する資産の種類も多く、生産される作物の種類も多いため収入や支出の形態も複雑。しかし、実態を正確にとらえていることが農業経営には非常に重要なため、簿記記帳をつけて生産業務の管理記録などと見比べて対応する必要がある。そのことが『農家の暮らしが成り立つ価格』付けに結びつくことは言うまでもない。さらに「資金の借り入れ」のための長期計画に基づく必要な資金額や返済計画のためにも農業簿記は必須だ。
 6次産業化はまさに新しい事業への挑戦。そこには事業への夢と同時に経営戦略が不可欠であり、その指針となる『農業簿記』は事業経営の基本的なスキルとなる。
 その上でその事業を行うための設備投資と資本金がいくら必要なのか。自前で用意するのか、出資金を集めるのかを検討し、1年間程度の運転資金を用意する必要がある。事業の成果はすぐに出るものではない。そのため周到な計画こそが事業化への第一歩なのだ。
 それでは、事業化に必要なものは何か。『商品・実績・顧客・資金』の4つが不可欠だと澤浦氏は言う。
 先ず、商品。これは何を作るか、と言うことだが、澤浦氏によると特殊なものでなく、その土地に根付く商品(作物)を手がけること だ。それは育てやすく加工品として開発しやすいからだ。これはこれまで6次産業化の達人を取材した経過でも実証できるが、福岡のいちご(あまおう)からできた『美酢』にしても、熊本のさつまいもを加工した『いきなりだんご』にしても地元の特産から生まれた商品だ。
 第二に実績を積み重ねることが重要だ。どんないい商品ができても、いきなり大手と取引できるはずはない。小さな取引の実績を積み重ね、徐々に市場を広げていくのだ。
 第三に重要なことは顧客。顧客を創造することも重要だ。「周りが農家なのに地産地消はあり得ない」と話す澤浦氏のマーケットは東京。東京には何がなくて顧客がどんなものを欲しがっているのかを想像して商品を創造するのだ。さらにその顧客とコミュニケーションを行うためには、その商品に『物語』がなければ伝わらない。美味しさはもちろん、その商品の背景や歴史、オリジナリティを伝え、納得した上での購入を行っていただかな ければリピートやファン化は不可能なのだ。
 最後は資金。これについては先に述べたように事業に伴う設備資金と資本金(運転資金)をいかに準備して計画を立てるかだ。どんなに素晴らしいアイデアがあっても資金がなければ事業はできない。
 今後6次産業化に取り組む方にまずアドバイスできることは、現在の状況について自分自身で問題意識を持つこと、そして課題を抽出し、その課題に向けて自分で情報収集を行いながら解決を試みることだ。現在では欲しい情報はほとんどネット上で手に入る。先ず自力で努力してみることだ。その上で、様々な相談に応じたいと話す。事業化に乗り出すエネルギー源は他の誰でもなく、自分自身なのだから、と。

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