農事組合法人 いこいの杜

達人名:土肥義光(農事組合法人 いこいの杜 代表理事)
ジャンル:農業 agriculture
地域:富山県中新川郡立山町 Nakaniikawagun Tateyamamachi Toyama

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地域密着型の”隣産隣消”の集落営農で
地域の人々の食を支える”いこいの杜”の束ね役人

富山県中新川郡立山町に生まれる。30歳で農家をしていた父親が他界し、地元の建設会社で土木建築業に従事しながら、兼業農家として農業に携わる。会社を定年退職したのち、農事組合法人いこいの杜の理事長に就任し、約59軒の農家を束ね集落営農事業に貢献している。周辺の農家の高齢化や農業経済の不況の影響から組合に農地を譲渡する農家が増えており、作付面積は年々増加傾向にある。今後も拡大が予想されるこうした農地を活かして、地元密着型の集落営農を確立するために今年6次産業化の取り組みへと踏み切る。直売所への展開、加工品の商品企画の舵取りとして事業化を推進していく。

■農事組合法人いこいの杜

インタビュー

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今回6次産業化の認定を受けた事業について聞かせてください。

interview_photo01.jpg今回、我々が生産している米(コシヒカリ)と大豆(エンレイ)を使った、みそ加工の分野への進出の取り組みについて6次産業化の認定を受けました。今年の6月に認定を受け、8月に補助金交付団体の選定を受けました。9月30日には総会を開き、組合員の同意を得ましたので11月の加工場建設に向け準備中で、来春には100kg程度の試作品ができあがる予定です。通常のみそ以外にもにんにくや柚子などを入れたおかずみその展開も考えています。実は、我々が想定しているみそ加工施設は、今回の6次産業化支援事業でなされる他の事業のうちで最小規模の1つになるかもしれません。なぜなら、我々がターゲットとしているのは管内に暮らしている650戸の人々に絞っているからなのです。その特徴は「囲い込み」という販売方法にあります。みそや米・大豆・ネギ・里芋等の販売に際し、生協の宅配方式を取り入れようと思っています。つまり、地区の住民に組合員になってもらい(囲い込み)注文書に従い、希望の日時に配達するというものです。6次産業化に認定されている他の地域での取り組みには、全国展開や大都市への販路を想定した事業が多くあると思いますが、我々は逆で、完全地域密着型で顔の見える地元の人々向けに、食生活の基礎となるみその加工品を販売していくものになります。それは、世間でよく言われる地産地消という概念よりももっと身近でリアルなものです。私たちは自分たちの取り組みを”隣産隣消”の農業という風に呼んでいます。

なぜ、みその加工品を作ろうと思ったのですか?

interview_photo02.jpgもともと富山県では、水田が多く、それ以外の食品は他県から仕入れないといけないというほど自給率が低い珍しい県でもあります。水害や天候被害は少なく、農作物は安定して育つ土地柄ではあるのですが、冬は雪が降るためほとんど農業はできません。そんな中、昔から水田と水田の間の畦道に大豆や小豆を植えて収穫するという農家の知恵があり、皆どこの家庭でも自分たちで作った大豆と米で自家製の手前みそでみそ汁を作ったり、みそ漬けを作って食べていたものです。そういうみそづくりの文化も今では廃れてしまい、地元の人たちは街のスーパーでみそを買うようになりましたね。でもだったら昔ながらのみそづくりを我々いこいの杜が行い、それを地域の人たちに供給すればいいのではないかという発想になったわけです。隣産隣消という言葉は、隣の家で作ったものを隣の人に分けて食べてもらうという意味合いが込められています。隣の畑をみれば、その原料もどうやって作られているのかが見えますし、作り手も知っている人です。だからそれが安心につながりますし、逆に作る側にしてもいつも食べてもらう人たちにみられているわけですから、安全安心の良いものを作りたいと思う。そういう循環がうまくできるのではないかと思います。

6次産業化に取り組もうと思ったいきさつとして、いまの農業にどんな課題を感じていましたか?

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いこいの杜を立ち上げてから10年になりますが、農業を取り巻く状況は年々厳しくなっています。実は64ヘクタールの経営面積のほとんどが借地なんです。それは地域の農家の高齢化が進んでいることと、農業経済の不況のためいま農業をやるメリットがないことが原因です。農作物の値段は自分たちで決められないですし、富山県のように米以外でひとつの作物の大規模生産をしているような大規模農家がいない。集落営農では、みんな大競争の時代なので生き残りをかけていますよ。みんな何をつくればいいのか、本当に真剣だと思います。作物を作っても当たり外れがあると思いますので、どうしても経営に限界がありますよね。だからこれからはどう加工するか、どう販売していくかにも目を向けないといけない。そういう危機感は皆が持っていて、試行錯誤の結果私たちは、6次産業化に踏み切ったわけです。反対する組合員もほとんどいません。それにたとえ6次産業化の認定をうけなくても自前でこじんまりとでもみそを作ったり、直売所での展開をしたいとは以前から思っていました。制度に関係なくこれからの農業は、作物を作ること以外にも目を向ける必要があるということです。

6次産業化認定においての協力者にはどんな方がいましたか?

interview_photo04.jpg申請についての書類作りは大変でした。ですから、もともと付き合いのあった地元の企業で農協建築という農協の系統の建設会社に協力いただきました。我々の事情をよく知っている方にお願いするのが一番いいと思いました。6次産業化の制度ついては、この春に農政局のセミナーで知り、手を挙げました。北陸三県でも20数社ほどが申請を出しているはずです。そのうちの3社に認定がおりました。私たちはこじんまりとした小規模な事業計画だったのですが、管内の住民を囲い込んで宅配方式で販売をしていくという新しい試みを評価いただいたのだと思います。農業もその土地その土地で事情が違うと思いますが、実際に買う人が見えていること、販売先のターゲットが明確な地域密着型の農業展開であったことなどが良かったかもしれませんね。現在では青果物の99%はJAを通して出荷されています。売上の管理などもすべて農協のコンピューターで管理してもらっています。従って、今回の6次産業化の試みは、農協を通さない新しい流通の形にチャレンジすることになります。やはり少しでも独自で販路を開拓していくことが、これからの農業には必要だと感じています。具体的な販路としては宅配方式以外に、現時点でも富山県中新川郡の地域密着型のケーブルTV局Net3主催の仮想商店街「フレンドリーclub」に出店していますので、そこにも新たに加工品を出品することになると思います。

これからの日本の農業の展望、そしてこれから6次産業化を目指している人たちに一言。

interview_photo05.jpg富山の農業は、大都市向けの農業というよりは、富山県内であったり、長野県や岐阜県などの近場の市場をターゲットにしたものです。今年は、とくに東日本大震災や天候不順などによる影響もあり、葱の値が例年よりも高くつきました。和歌山などの台風被害があったこともあり、東京では全体的に葉物が不足しているようで、去年ほどではないですが値段がよく、出荷の要請なども多く来ています。ただ、やはり天候や自然環境に左右される農業を盛り立てて自ら担っていこうとする若い人たちは不足しています。6次産業化の取り組みは、農家が主体となって取り組む新しい事業を支援するものなので、少しでも農業に興味がある人が今後増えてきた時に、そういう人たちの受け皿となるために、農事組合法人として経営を成り立たせたいという思いでいます。実は私は退職したあとに理事長になったので給料は日給なのです。ですが若い人たちには月給で給与を支払っていますよ。今は百姓の家に生まれたからといって、家業を継ぐ時代ではないですね。むしろ非農家のひとが就農するケースの方が多いかもしれません。自分が作り、そして販売ができる環境が整えば、そういう人たちを後押しできる。または異業種の企業が農業に参入して地元の人を雇用するケースもあるでしょう。農業は産業になっていくのだと思います。こうした制度に我々も参入し、立山ならではの自給自足の集落農業を今後も発展させていきたいと思っています。


サポーター

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昔ながらのみそづくり文化を復興し
地域に根差した6次産業化を目指すいこいの杜のサポーターたち

立山町金剛寺 農家の宇佐美則光さん

support_photo01.jpg氏名:立山町金剛寺 農家の宇佐美則光さん
ジャンル:農家
昔ながらの手作りのみそを作る、地域一のみそづくり名人。毎年、自宅でみそを作っている宇佐美さんは、今回の6次産業化で認定されたみその加工品の商品化を手掛けるみそづくりの達人。美味しいみそを作るコツは長年の経験とメソッドに裏付けられている。


Net3インターネット「フレンドリークラブ」

support_photo02.jpg組織名:Net3インターネット「フレンドリークラブ」
ジャンル:ケーブルテレビ局
地域をサポートする地元のインターネットサービス。
滑川市・上市町・立山町をカバーするCATVインターネットサービス。地域の農作物の注文をメールで受け付けている。いこいの杜のサトイモや米、大豆などを取り扱っている。
■Net3インターネット「フレンドリークラブ」:http://www.net3-i.jp/

達人からのメッセージ

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◆達人の第6感
稲作中心の地元で、昔から生産されてきた大豆と米麹を使ったみそづくり文化を背景にした手前みそで加工品を作れば、地域の人々を囲い込んだ商品展開ができると確信を持った。


◆達人の教訓
農業は地域の人、農業を担う人のため。採算の合わない農業経営を見直して、社員として務める若い人たちを養える組織体をつくるために新たな施策にチャレンジしていく。

農事組合法人 いこいの杜の製品

001 富山米コシヒカリ
立山連峰の豊かな自然と清らかな水で丹精込めて作られた富山米コシヒカリ。食味検査で全国トップクラスを維持。

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002 白ネギ
県内でトップクラスの白ネギ生産者でもあるいこいの杜。シーズン中(8月~11月)は、市場向けに、3kg(10把入り)の箱詰めで出荷している。

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