奥野田葡萄酒醸造株式会社

達人名:中村雅量(奥野田葡萄酒醸造株式会社 代表取締役)
ジャンル:農業 agriculture
地域:山梨県甲州市 Kosyu Yamanashi

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カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、シャルドネ。
世界のワイン造りに匹敵する、日本の本格ワイン製造のパイオニア

山梨県富士河口湖町に生まれる。大学卒業後、日本におけるワイン製造の革新期に山梨県勝沼の老舗ワイン醸造会社グレイスワイナリーに入社し、海外研修や国の醸造試験場への出向を経て、ワイン製造の生産管理者に就任。その後26歳の若さにて独立、山梨県甲州市の奥野田の地にて奥野田葡萄酒醸造株式会社を設立。同時にヨーロッパ品種である、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、シャルドネを用いた本格的なワイン用ブドウ品種の栽培を手掛けるため有限会社夢郷葡萄研究所を立ち上げる。世界に通用するワイン製造を目指し、苦難の末に高品質なワインづくりに成功。その味わいは海外からも高く評価されている。

■奥野田葡萄酒醸造株式会社


インタビュー

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今回6次産業化で認定された取り組みについて教えてください。

interview_photo01.jpg私がこの地でワイン造りがしたいと望んで、まず98年に「農業生産法人 有限会社夢郷葡萄研究所」を立ち上げて、ぶどうのヨーロッパ品種である、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、シャルドネを用いた本格的なワイン用ぶどう品種の栽培を手掛けてきました。そしてそれ以外にワイナリーとして「奥野田葡萄酒醸造株式会社」があり、二次加工としてワイン醸造を行っています。ぶどうの栽培とそのぶどうを使ったワインの製造という両輪で、この13年間、事業を展開してきました。
我々は日本において、垣根栽培を主としたヨーロッパ系のワイン醸造用のぶどうを植え付けた第一世代にあたるんです。ちょうど17、8年前のことです。白ワイン用のシャルドネ、赤ワイン用でカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ。植え付けを始めた当時から周囲からは「日本はヨーロッパとは土壌も気候も違うのだから、ヨーロッパのようなワイン造りはできない」と言われ続けてきました。ヨーロッパ品種のぶどうを植え付けるなんて試みはクレイジーだとされていたんです。しかし、試行錯誤を繰り返しながら植え付けから10年、しっかりとぶどうの根が土壌に張り込み、樹齢が成木になって、ようやくミネラル豊富な味わいとシャルドネらしい香りを発する、説得力の強いワインがつくれるようになったのです。そんな中、これまでの経緯を見守ってくださっていた方々がいて、週末に一緒に畑に入って我々のワイン造りに参加してくださるようになっていったのです。そのうちこれをサービス化して欲しいという声があがったのがきっかけで、ワイン畑にお客様を迎え入れるための会員制度として商業化することにしたのです。ぶどうの栽培が1次産業、そのぶどうを加工してワイン造りをする2次産業、そして消費者にワイナリーでワイン造りを体験していただくというサービス業として新たに3次産業が生まれた。この一連の流れが、今回の6次産業化に認定された私たちの事業なのです。

ぶどうの栽培、ワイン製造を始めて、どんな課題を感じていましたか?

interview_photo02.jpgワインを造りながらぶどうを栽培するというのはやはり大変なことなんです。第一に、ぶどうの栽培部門が経営的に非常に厳しい。法人として農業が採算に合わないことを痛感しましたね。一般的に農作物は付加価値の向上を目指すべきということがよく言われますが、僕らの場合、ぶどうの値段を上げれば、そのままワインの値段が上がるだけなので、自分の首を絞めるような状況になってしまうのです。そしてぶどうの栽培農家が高齢化していることも問題です。ワインを造りたいと思っても、まずぶどう造りすらままならなくなるのではないかという危機感がありました。そもそも日本のワイン造りは、ここ100年くらい、生食用のブドウの余剰品からお土産用にワインを造ってきたという背景があるのです。でも自分は世界に通用するワインがどうしても造りたかった。98年にワインブームが到来して、食卓でもワインが気軽に楽しまれるようになりましたし、日本は、世界中の良質なワインが飲める珍しい国でもあるので、消費者の舌も肥えている。だったら日本人が楽しんでいるヨーロッパのワインと同じ土俵に日本のワインも肩を並べて欲しいと願いました。私と同じようなチャレンジをした生産者がこの地域では5社あります。彼らも栽培で採算が取れないという悩みは同じです。畑に取り組む人件費に見合った値段をつけると、ワインの値段がとんでもなく高くなるのでそれができないのです。赤字になった財源はどこかから借金するしかないんです。赤ワインブームの時に稼いだものは、すべて栽培事業の赤字補填に費やされてしまったのです。だから少しでも栽培事業で収益を上げるために、消費者向けのワイン造り体験をサービス化しようという考え方になりました。ワイン造りは5月に芽が出てから9月の収穫に至るまで半年に渡っていろいろなストーリーを持っています。その間の栽培技術のノウハウを消費者に体験してもらうことにより、日本でも美味しいワインが造れるんだということを皆様に知っていただきたい、そう願っています。また、我々の畑では環境負荷の少ないワイン造りにも取り組んでいるのですが、富士通株式会社でも社内でグリーンポリシー2010というものを掲げていることから、協働協定を結び、富士通の社員20万人を対象にした福利厚生、社員研修、商品開発の分野での取り組みを展開させていただいています。今後、企業契約でのサービス展開は積極的に推し進めていきたい分野だと思っています。

6次産業化認定に申請したきっかけや協力者について、また今後の展開をお聞かせください。

interview_photo03.jpg私たちの1次から3次産業に至るまでのこうした試みがユニークだということで、今年の春に食品流通局長の方が視察に来られました。その時に6次産業化認定の申請を勧められたのがきっかけです。今後の事業展開に関するコーディネーターさんは県から派遣された方に協力してもらっています。取り組み始めたばかりの3次産業の部分には、まだ問題点がたくさんあります。よりよいサービスを提供するための改善点としては、例えば畑の周りでランチをするにしても、テントやトイレ設備をもっときちんと整えたいと思っています。畑に入る前には講座があり、しっかりと私たちのワイン造りの技術についての知識を学んでいただき、ランチの時にはワインと料理を楽しんでいただけるようなサービスになります。集まっていただいた人には楽しんでいただいています。さらに、ここは都心からも近いので、都内のレストランのシェフを招いて地元の食材を使った料理を楽しんでもらうイベントなど、いろいろなアイデアを企画していますよ。

今後の日本のワイン製造についての展望と、これからワイン製造の6次産業化を目指す方に一言。

interview_photo04.jpg6次産産業化を申請した理由のひとつに、農業をやりたいという人の受け皿になりたいという思いもありました。突然農村にやってきて、農家を訪ねたところで農地すら借りられないわけですから。そこで法人があればそこに入社して農業をすれば厚生年金と社会保険の傘に入りながら、給料をもらい、就農できるわけです。若者の受け皿になりたいんです。春から女性がひとり、東京から移住してきています。これは厚生労働省の事業になるのですが、雇用保険を早期に支給されながら家賃補助を受け、週に3日は農業大学校に通学して、残りの2日は農業生産法人で研修するという就農スタイルです。春から彼女に任せた畑から5トンのぶどうが採れました。彼女が手塩にかけたぶどうが瓶詰めされて商品になりました。消費者にとっても、同世代の女性が手掛けたワインとしてリアルなストーリーを分かち合えることは、とても素敵なことだと思います。見に来て実際に触れることができる。これが国産ワインの魅力にもなるといいですよね。日本のワインはいまが日の出です。確かに山梨県とヨーロッパでは気候も違うし、土壌も違う。でもヨーロッパの気候や土壌をここで再現しようとしているわけではないのです。私は、伝統的なヨーロッパの製法を見据えながら、甲府盆地というワイン産地のポテンシャルを探っているのです。私たちの祖先が数万年間やってきた農業の知恵を私の畑に再現して行う日本のワイン造り。虫の生態系をつくり、草を生やし、微生物土壌を作る。そして養分を固定化し、植物にストレスを与えながら栽培する、それが日本の伝統的な農業です。甲州ワインは今盛り上がっているので、どんどん若い人たちがチャレンジしてもらうということが大事ですね。また、山梨県は、都市部にも近く景観のいい農地が多いので、“人を癒す農業”を標榜していきたいですね。直売所などの計画もあります。若い世代の人たちの中には、ぶどうの苗の栽培を手掛ける仕事人として「栽培家」という名で雑誌に登場するような人たちも出てきましたよ。今後は、どの栽培家の作った苗のワインなのかということもワインの価値の指標に入ってくるような、ぶどう苗のブランド化の潮流も生まれ始めています。甲府出身の栽培家がブランドとして評価される日が来るのが楽しみです。次世代の人たちに負けないように、自分も頑張っていきたいです。


サポーター

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消費者と日本のワイン造りの素晴らしさを分かち合う
“人を癒す農業”に賛同するサポーター

富士通株式会社

support_photo01.jpg企業名:富士通株式会社
ジャンル:電子機器メーカー
環境負荷の少ない農業に貢献するシステムを開発!山梨県が進める「やまなし企業の農園づくり」制度を絡め、夢郷葡萄研究所と協働協定。 富士通社員が、家族とともにワイン畑での作業を通じて、圃場維持の難しさを学び、環境問題について考えながら、ワインについても楽しく学んでいただくプログラムとなっている。「富士通GP2020ワインファーム」オリジナルワイン300本を製造予定。



農業協力隊

support_photo02.jpg組織名:農業協力隊
ジャンル:厚生労働省の支援機関
都心から地方へ!若者の就農斡旋のための試み。農業協力隊は、支援企業の指導の基に農業を目指す若者が栽培技術の習得と同時に地域交流や都市交流のスキルを身に付け、新たな担い手として就農、定住を目指していく制度。農業生産法人(有)夢郷葡萄研究所は山梨県の農業協力隊の支援機関。

達人からのメッセージ

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◆達人の第6感
10年間試行錯誤を繰り返したシャルドネの味が変わった時、これはいける!日本のワインもできる!これを大勢の人に伝えたい。

◆達人の教訓
人って案外、本当のことを言っている。友達やお客様は大切。周囲の言うことを受け入れて実行することが大事。

奥野田葡萄酒醸造株式会社の製品

001 2009桜沢シャルドネ 【オーク樽発酵】
シャルドネの持つミネラル感に溢れ、樽由来のバニラやナッツ、キャラメルなどの香りとコクを持つリッチな味わいで海外からも高く評価された。

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002 コンフィチュール
ワイン用ブドウを一粒一粒丁寧に選別して、小さな鍋でじっくりと時間を掛けて煮詰めたコンフィチュール。アイスやヨーグルトにかけるだけでなく、肉料理との相性も抜群。カレーの隠し味にもおすすめ。

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