旭川あらかわ牧場合同会社

達人名:荒川忠基(旭川あらかわ牧場合同会社 代表業務執行社員 家畜・牛舎部門責任者)
ジャンル:酪農 Dairy
地域:北海道旭川市 Asahikawa Hokkaido

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酪農家から日本のチーズ作り文化を育てたい!
日本のジュヴァリエを目指す酪農の開拓者

鹿児島県に生まれ、青森県で育つ。大学卒業後、30歳で友人と兄の3人で北海道に移住し、農業を始める。3人で(有)オサラッぺ牧場を立ち上げ、その後それぞれが独立。現在、荒川牧場で酪農を主体に事業を運営している。11年ほど前から、地域交流牧場、酪農教育ファーム認証牧場として一般人向けの乳搾りや哺乳体験、アイスクリームやチーズの加工体験、また民泊を通じ、農業や食の大切さを消費者に伝えるサービスをスタート。今年5月、酪農以外の分野として、新たに牛乳、チーズの加工品製造に乗り出すために6次産業化の認定を受けた。

■旭川あらかわ牧場

インタビュー

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今回認定を受けた6次産業化の事業内容と、それを試みようと思ったきっかけを教えてください。

interview_photo01.jpg自分たちの牧場で獲れる生乳を使って自家製チーズやオリジナルブランドの牛乳といった乳製品の加工品を手掛けていくために、2011年5月に6次産業化法の認定を受け、6月に合同会社を立ち上げました。目的は消費者に直接販売できる体制を築くことです。加工品分野への事業展開に踏み切ったきっかけ・背景の一つには、これまで約30年間酪農を主体とした牧場経営をしてきたなかで、牛は狂牛病を始め、口蹄疫、O-157など数年に一度は大きな病気が流行し、その度に被害を受けてきたことがあります。また、各酪農家には生乳の出荷限度枠が設けられており、勝手に搾乳量を増やす事は出来ません。今後は農家の戸別補償など国の補助に頼らず、できるだけ自立した経営をして、リスクを減らしたいという思いを持っています。もう一つのきっかけは、私たちが11年間に渡って行ってきた地域交流牧場、酪農教育ファーム認証牧場の活動で一般消費者の方々と交流してきたなかで、酪農体験も含めてより一般消費者向けに直に販売できるような新製品を作ってみたいと思い始めたことです。この2点が6次産業化にチャレンジしてみようと思った主な理由です。まず、これから取り掛かりたいと思っているのはチーズ作りです。一口にチーズといってもさまざまな種類があります。大きく分けてプロセスチーズとナチュラルチーズがあるのですが、ナチュラルチーズの中でもフレッシュなものから熟成させるものまで幅広いです。フランスなどのヨーロッパでは、フェルミエチーズのように個々の牧場が独自の味わいを持つオリジナルのチーズ作りをしているという文化がありますが、日本のチーズと言えば、ほとんどが大手食品メーカーによって大量生産されているチーズということになります。そこで私たちが将来的に目指したいと思っているのは、荒川牧場独自の本格的なチーズ作りをすることで、日本のチーズ文化を育て、広めていきたいということなのです。具体的な商品として計画しているのは、1ヶ月以内に出来上がるモッツァレラチーズのようなフレッシュタイプのチーズです。売り上げが軌道に乗ってきたら、次の段階として熟成系のセミハード、ハードまで挑戦できればと思っています。長期熟成の商品を作るまでには、商品製造のレシピなどにも時間がかかりますので、まずは結果が早く分かるものから商品にしていこうという計画です。

新たな加工品製造分野に乗り出すために、どんな方に協力を仰いでいますか?

interview_photo02.jpg農政事務所に紹介をされた6次産業化プランナーの小倉さんという方がこの地域を担当されているのですが、事業をスタートするにあたって、彼にいろいろとアドバイスをもらっています。これまでに、経営全般については会計士を紹介いただいたり、商品企画についてはその道のプロの方にパッケージデザインについて教えていただいたり、また販路についてはイベントや催事への出店方法やバイヤーさんとの交渉についての知識も教えていただきました。これまで私たちは酪農だけをしてきたので、商品企画や販売に関するコネクションがまるでありません。そのため、多方面のプロの方を紹介してもらえることは大変助かります。6次産業化法がこれまでのような補助金制度と違う点は、お金だけの補助ではなく、実際に事業を成り立たせていく過程で必要になるアドバイザー、知識を授けてくれるプロの人材面でのサポートが手厚い点だと思います。その核となるのがプランナーの方ですが、北海道は現在4人のプランナーがそれぞれのエリアを担当されていて、今後はもっとプランナーの方の人数も増えてくれるといいと思います。新しく自分たちでオリジナルの商品を作りたいと思っても、農家が一から何かを始めるのは実際問題として非常に困難です。ですから、資金だけでなく、こうした人材、コネクションのサポートが充実していることで、私たちのように家族経営で成り立っているような小規模の農家であっても6次産業化に十分チャレンジしていけるのだと思います。プロの方に相談しながら、きちんと“売れる商品”、そして“市場のニーズにマッチした商品”を作っていきたいと思っています。

これから開発する新商品の販路や販売先のターゲットを教えてください。

interview_photo03.jpg新商品のターゲットとなるのは、まず第一に旭川市内に来た観光客。お土産や贈答品で、道の駅や空港など人が集まる場所へ出していくことです。それから、料理の材料としてのチーズを商品化し、旭川市内の家庭で手軽に使ってもらえること。この2パターンを考えています。市外での販路として考えているのは、物産展やイベント・催事などへの出店がメインになります。懸念点としては、やはりどうしても旭川は過疎地域ですので、街自体がもっと元気にならないとなかなか難しいのではないかというところです。ここ旭川は全国的にも動物園が有名ですが、動物園以外の観光資源はまだまだ乏しいのが現状です。例えば飲食店や宿泊施設を含めた魅力的な観光スポットを複合的に展開するなどして、街の中心街がもっと栄えるようにしていかなければならないと思っています。動物園に来て、遊んで、泊まって、ということができるようになればいいですね。近くの兄が経営しているオサラッぺ牧場では、全国的にも知名度のある短角和牛の放牧をしていたり、また友人は北海道ならではの美味しい牛乳を活かしたソフトクリームのお店なども経営しているので、そういう地域の特性を活かしたスポット、点と点をつなぎ合わせて人の通る“動線”を作り、やがては線を面にして展開していければ、旭川の街自体の地域活性化にもつながるのではないかと思います。旭川空港からも1時間で来れる場所ですので、都心からのアクセスもほどよく、都会にはない大自然に触れられるようないい観光スポットになるのではないかと思っています。そのためには、地域での連携はもっと強化されていくべきでしょうね。

酪農家でこれから6次産業化を目指している方々に一言。

interview_photo04.jpg私が酪農をしてきたなかで苦労したこと、利益を上げることに関して難を感じるのは、牛乳が法律的な面で、普通の農産加工の場合よりも条件が厳しい点です。例えば酪農体験に来られた方が、自分たちで作ったチーズやバターなどを買って帰りたいと言われても、牛乳は資格をもった建物で適性な処理をしないと渡すことができないですし、近くで何かイベントがあって、うちの牛乳を提供してくれと声をかけていただいてもやはり提供できないのです。そういう部分でのジレンマを感じてきました。また生産サイドだけではなく、販売サイドに関する制約も厳しいですね。今は牛乳を作る施設や設備も進化していますし、それに合わせて法律も、もう少しやりやすく、ある程度の柔軟性があってもいいのではないかという気がしています。また牛乳の国内消費量も年々減少しています。しかも、もともと搾乳した生乳の販売方法やルート、また生産調整など国の施策の影響をもろに受ける業種ですので、こうした現状を考えると、必然的に牛乳だけでなく乳製品の加工品にも目を向ける必要があるのだと思いますね。よく農家の人たちはお金の計算ができないと言われます。どうしても農家の人たちは自分たちの労働力や生産物を原価に入れて考えないような感覚があるかもしれません。でも商売上はやはりそれでは問題があるので、6次産業化への試みを始めるにあたっては原価を把握して、この商品が儲かっているのかどうかをしっかりみていかなければならないと思いますね。何事も新しいことを始めるときはいろいろと不安になることも多いかもしれませんが、プランナーの方を始め、いろんなジャンルの人たちと交流、連携しながら、一つひとつの課題を解消して進んでいければよいのではないでしょうか。現在、日本独自の製法が確立され、製造されているチーズはほとんどありません。その一方で、ワインの消費量が増えてきていることもありますし、また日本には世界に誇る日本食と言う文化もあります。ですので、それらに合わせた日本産のチーズ作りも、もっと増えてもいいのではないかと思います。将来は牧場直送のチーズを日本全国の人々に楽しんでもらえるようになるといいなと思います。
※ジュヴァリエ・デュ・タストフロマージュ…伝統的チーズの製造という文化、およびチーズ製造・販売に携わる人々。フランスでのフランス伝統チーズを愛する人の証であり称号となっている。

サポーター

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消費者と日本のワイン造りの素晴らしさを分かち合う
“人を癒す農業”に賛同するサポーター

地域交流牧場全国連絡会

support_photo01.jpg団体名:地域交流牧場全国連絡会
ジャンル:酪農家同士のネットワーク組織
日本の酪農の未来に向ったさまざまな活動を展開全国約300人の酪農家を中心とした会員が主体的に、消費者との交流をテーマとした活動や広報・PR活動、会員牧場同士の交流活動などを行っている。




旭川市民農業大学(旭川市農政部農政課)

support_photo02.jpg組織名:旭川市民農業大学(旭川市農政部農政課)
ジャンル:農業体験
旭川の農業者と市民の交流の場やカリキュラムを提供。旭川市農政部農政課が事務局となり、旭川市民から学生を募って1年間に渡って、月1回農業講座を実施。農業者と市民とが一緒になって旭川の農業の在り方を考えていく場を創出している。

達人からのメッセージ

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◆達人の第6感
農業体験に来てくれたお客さんと接するなかで牧場直送の加工品のニーズがあることを知った。酪農家も、人と接しながら農産物を売れるようになったら面白い!

◆達人の教訓
自分自身が魅力的な農家になることで、自ずと後継者もついてくる。これからの農業を担う後継者を育てるためには、農業だけでなく一般企業での社会経験を積ませることも大事。

旭川あらかわ牧場合同会社の製品

001 広大な自然
旭川空港から車で1時間ほどの距離にある荒川牧場の周辺は、北海道の広大な自然が広がっている。ペットとして放し飼いしているサラブレッドや犬、猫など、牛以外の動物にも触れ合える。

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002 放牧肥育
北海道に移住した際、最初に立ち上げた(有)オサラッぺ牧場は、今では兄・荒川信基さんが運営している。赤身主体の健康肉として全国的にも知られている日本短角牛の放牧肥育を行っている。

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