農業法人有限会社甲賀もち工房

達人名:河合定郎(農業法人有限会社甲賀もち工房 代表取締役)
ジャンル:農業 agriculture
地域:滋賀県甲賀市 Koka Shiga

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「滋賀羽二重糯」で町おこし
米粉を用いた新商品開発で、日本のもち文化をよみがえらせる仕掛け人

滋賀県甲賀市生まれ。JAの営農指導員を中心に議員活動も行ってきた。その後、この地域のブランド米である滋賀羽二重糯の加工、販売を手掛ける農業法人有限会社甲賀もち工房を立ち上げ、平成18年に法人化。お正月用のもちの加工品のほかに、米を砕いてつくる米粉を用いたさまざまな加工品を手掛け、米粉たい焼きや近江米めん、米粉ロールケーキなどユニークなアイデア商品を打ち出しマスコミでも取り上げられるようになる。一年に一度地元で開催される甲賀もちふる里祭などでもちの販売を行い、地域活性化にも貢献している。

■農業法人有限会社甲賀もち工房

インタビュー

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6次産業化への取り組みについて、また、事業内容や商品について教えてください。

interview_photo01.jpg滋賀県甲賀市の小佐治地区は、琵琶湖の南に位置し、もち米に適した粘土質の土地から、全国でも最高級のもち米といわれる「滋賀羽二重糯」が収獲できる産地として有名です。「滋賀羽二重糯」はきめが細かくて味が良く、「ねばり」「コシ」「伸び」と三拍子そろっているのが特徴です。しかし、稲の背丈が高く倒れやすいことや、穂がこぼれやすく栽培が難しいことから生産する農家が減少しており、現在では市場流通が少なく「幻の餅」といわれています。そこで、この希少価値の高い高級もち米「滋賀羽二重糯」を加工し、特産品として販売することで地域活性化、町おこしができないかということでスタートしたのが、農業法人有限会社甲賀もち工房です。もちは、年末からお正月のシーズンには全国から注文が殺到するほどの売れ行きですが、夏やほかの季節にはあまり売れるものではありませんでした。ですから、特定の月に偏らずに売れる商品をなんとか作りたいと思い、「滋賀羽二重糯」のもち粉や、うるち米「キヌヒカリ」の米粉を利用し、これにイモ澱粉を加えた「近江米めん」、米粉と豆乳を使った「米粉たい焼き」、「ロールケーキ」などを商品化しました。これらの商品ができたことにより、各月の売り上げの均一化が実現できたのです。今後は、新たな加工品として、もちピザシートや米粉ラーメンなどの商品開発と生産に取り組みたいと考えています。今、もち米も米も消費量が減少し、日本の昔ながらの米やもち文化が忘れられてしまっています。昔は、お祭り、人生の節目となる行事・イベントではいつももちがありました。季節ごとにもちの食べ方もいろいろあるように、米文化のある日本ならではのもち文化があったのです。今、おもちはお年寄りなどある年代の人たちには「懐かしい食べ物」として受け入れられますが、若い人たちにはあまり馴染みがない。だからこれからは米を違う角度で捉え、また食料自給率の観点からも米を「米粉」の商品として皆さんに食べてもらうようにしたらどうか、という発想になったのです。その当時はまだまだ米粉の価値も見出されていないときだったのですが、私たちは時代の方向性をみて商品化に踏み切りました。この事業が日本に新たな米粉文化を普及するきっかけとなればと願っています。ひいては米どころであるこの地域の活性化にもつながるものだと考えています。

もちの加工品を始める以前の地域の農業の状況、また課題となっていたことはどんなことですか?

interview_photo02.jpg滋賀県は平野が多いこともありもともと近江米の産地でしたし、また近江牛も有名で畜産農家も多かった地域です。滋賀県の中でもここ小佐治地区は中山間地で棚田が広がっており、米の規模拡大はなかなか難しい地域でもあります。実は私は、この事業を手掛ける前はJAで畜産指導をしていました。酪農家が、苦労して牛乳を搾っても、新商品としてどんどん打ち出されてくるペットボトルの清涼飲料水などに押されて価格は上がらない。牛の世話をし、飼料づくりをし、搾乳し、牛乳を作るというのは大変手間のかかることなのです。それにもかかわらず、牛乳が水より安い、採算が合わない。そのような状況には常に疑問を抱いていました。彼らも同じ思いをしていましたので、もちの加工品として新規事業を立ち上げるころから稲作に転じた農家も多いです。私どもがもち加工や、米の加工品を作るようになった時からすでに6次産業化の取り組みは始まっていました。私たちの所では昭和40年代あたりから農村の女性が中心となって発足した生活改善グループという普及組織がありました。ここでは、農村の生活改善のためのさまざまな取り組みを行ってきたのですが、この女性たちがもちに加工したりするような取り組みも行ってきたのです。そうした背景をもとに、米の生産から加工までの流れ、基礎はできていました。この地域ではそういう経緯でかねてより6次産業化が進められてきており、私どもがそれを本格的に事業化し、商品販売や流通を推し進めることで、今回6次産業化の認定を受けるに至りました。これからの問題は、流通、販路の開拓です。今は作った商品をどうやって売ればいいのか、どこに売っていくのかを試行錯誤で取り組んでいる最中です。地産地消に理解のある小売店・スーパー、生協などを考えています。

6次産業化の事業を進めるにあたって今、課題となっていることや難しい点はどんなところですか?

interview_photo03.jpg加工用の米(新規需要米)はすべて契約農家に作ってもらっていますが、米の買い取り価格に関して問題になったのは、農家の人は契約という言葉に対する意識が低い点にあります。契約というのは、米の市場価格が変動しても一定の価格で米が売れるということを保障することですが、農家の人たちは米の価格が高い時などは高いところに売ったらいいじゃないかという発想になりがちです。これでは契約は成り立ちません。しかも今年高くても来年の保障はなく、収入の見通しも立ちにくい。そこで、やはりそんないい加減な値段の付け方でいいのかという議論になり、私どもが先に立って米の価格を決めて3年間の期間を設けて契約栽培してもらうように地域の農家に働きかけてきたのです。こうすることで生産者側も加工製造側も安定した生産、製造、販売が行える体制が築かれたのです。「目先の利益よりも長い目で見た安定を」、と農家の人たちの考え方を啓発することが一番大変でした。しかし、様々な問題が生じ、改善を重ね、現在は1年契約にしています。また販路の拡大についてですが、販売量と生産量の調整に注意しないと、注文が来ても対応できないというリスクが発生します。そうなると信用を落とすことに繋がります。規模を拡大するためには設備投資も必要。だから、今現在の我々の事業はどのくらいの規模が適正なのかを見極めることも重要だと思っています。

これから6次産業化を目指している人たちへ一言いただけますか?

6次産業化の認定を受けてから、地元の中小企業診断士をされているプランナーの方にもお会いしました。いろいろな方からのサポートもいただくことはできます。しかしまずは、私どもが今後事業をどうしていくのかをもっと明確にする必要があると思っています。米をどういう形で皆さんに食べてもらいたいのかを考え、若い消費者を取りこめるような話題を作らなければいけない。同時に自分が先導し、旗振りをして物事を推し進めても、皆がついてきてくれているのかということにも配慮し、協力し合いながら地域全体で事業を進めていくことがとても重要だと思います。6次産業化は、個人的な事業というよりも産地を取り込み、地域の人たちと特産品を作り、それを市場に仕掛けて芽生えさせていくことだと感じています。
また、マスコミの影響力も有効に利用していくことも必要です。以前NHKのテレビ番組やTBSの全国放送でこの工房が紹介された際には注文が殺到したのですが、物が売れるようになればどうしてもクレームも来てしまいます。これまでは農作物だけを相手にしてきた農家が、これからは人と向き合わなければならない。相手がいることで、クレーム対応などのノウハウも必要になってきます。作る技術、加工する技術に加え、物を販売する技術も学ばなければならないのです。また6次産業化をダシにした取材の申込みや甘い言葉での注文など、詐欺事件も多発しています。私どももこれまでに実際に大失敗したことがあり、警戒心は強くなっています。皆さんもぜひ気をつけていただきたいと思います。ただ新聞やテレビに取り上げていただける話題性としては広報的にものすごいメリットがあります。有難いことです。注目を浴びるということには光と影のような面がありますが、上手に対応しながら、資金力をつけ、知識を学びながら、サービス業として事業を運営していくことです。それまで農家が人任せだった部分かもしれませんが、私はこれを面白い!と感じています。例えば直売すれば消費者からのクレームも直に返ってきます。そういうリスクを背負いつつ、販路を拡大していかなければなりません。そう考えると生協などに卸すことで確かに手数料は取られてしまいますが、チラシを撒いて、注文を取り、配達し、代金回収までしてくれる。だからこちらも安心して取引きできますよね。手数料はあって当然なのです。だから本来であれば生産側が流通コストも踏まえた価格設定をしなければならないはずです。流通には流通なりの手数料の理由があるのです。いかにコストをさげるかということを考えると、これはまた難しい課題になります。そうした意味でも6次産業化はものすごく面白いけれども、怖さもある。いまホップ・ステップまできていて、次にどうジャンプしようかなというところです。

サポーター

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「滋賀羽二重糯」の加工品を地域の特産品に、
日本の新たな餅・米文化を興すべく奮闘するサポーターたち

バラエティー豊かなもちの加工品の販売と多彩なもちメニューが揃う軽食コーナー

support_photo01.jpg氏名:もちもちハウス
ジャンル:飲食店・直売所
もちふる里館に隣接する直売店、もちもちハウスでは、羽二重糯を使って加工した切りもちやしゃぶしゃぶもちなどの加工品が販売され、軽食コーナーでは、ぜんざい、つきたて餅のほか、もちパスタやもち麺などユニークなもちメニューが食せる。





伝統芸能の披露や餅をモチーフに盛り上がる地域の一大イベント

support_photo02.jpgイベント:甲賀もちふる里祭
ジャンル:イベント
2010年に13回目を迎えた「甲賀もちふる里祭」では、伝統芸能の披露や、もちつき、もちまき、もち俵力自慢などが行われ、日本古来の餅文化を再現しつつ、新たな商品を提案する場として地元の人々や近隣の県からの観光客で毎年賑いを見せている。

達人からのメッセージ

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◆達人の第6感
お洒落感も盛り込んだ新しい米粉商品で若い人にもお米に親しんでもらいたい。米パスタは、ケチャップやソースなど若い人向けの味付けでしかも即席で食べられる。これならいけると思った。

◆達人の教訓
損して得取れ。何事も失敗から学べる。閃いたら即行動することは大切だが同時に、自分だけでは何も成就しない。地域全体で物事を動かしていくために仲間づくりも大切だ。

農業法人有限会社甲賀もち工房の製品

001 長寿切りもち
看板商品「長寿切りもち」ほか、ぜんざいや近江米パスタ、柚子みそ(福島)、しゃぶしゃぶもちなど米を加工した多彩な商品を詰め合わせた贈答用セット(4,500円)。

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002 朝食たい焼き
ウィンナー、ベーコン、玉子などが入っており、これまでのたい焼きのイメージを覆すユニークな商品。

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