有限会社杉・農園

達人名:野島五兵衛(有限会社杉・農園 園主)
ジャンル:農業 agriculture
地域:大阪府枚方市 Hirakata Osaka

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ロバがいて、人がいて、野菜がある
百姓・農耕文化の理想郷を実現した農業の天才

大阪府枚方市に生まれ、農業を営む父の跡を継ぐ。22歳の時、都市近郊農業の在り方を模索した結果、日本の都市近郊型農業の行き着くところは大規模生産による農場経営ではなく、農家にとって生活の場である農園を築き、人々に情操や安らぎ、文化といった五次的産業を含むものだと位置づけ、農業を越えた農耕の園「杉・農園」を開園し、40年前から既に何百年も続く有機農家の知恵を活かし、農園レストランを営む独自スタイルを確立。今後も都市農業地域におけるモデル的な農業経営の収益を拡大すべく、調理加工飲食設備のある直売所の整備や加工品の開発に取り組む。

■農園 杉・五兵衛

インタビュー

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農園 杉・五兵衛 の取り組みや事業についてお聞かせください。

interview_photo01.jpgここ農園 杉・五兵衛は、現代の日本の農業に失われつつある農耕の本来の姿を再現する場として私が40年前から築いてきたものです。ありのままの自然を活かした農園において、そこで実る農作物を収穫し農園のレストランで食事を提供。また、収穫された作物の加工品を販売するほか、有機農法を基に農薬や化学肥料を使わず自家製のたい肥と有機肥料で行う野菜づくりの体験スクールなども実施しています。農園には、ロバなどの動物たちがいて、それらのたい肥により作物を育て収穫し、そして訪れる人々に加工して提供する。レストランで出た野菜のヘタなどの残渣や畑の雑草が、またロバの餌となり新たな畑作りへとつながっていく。そんな「有機循環農法」を実践しているのです。食器洗浄やトイレ洗浄にも重曹電解水や微生物活性液を使用するなど化学薬品ゼロへの挑戦も行っています。今、都心では農園レストランのようなスタイルもある程度認知され、広まり始めていますが、私が始めた40年前では誰もそんなことをしようと思っていませんでした。ここでは40年の間に築き上げた日本の本来の農耕の姿を体験していただきながら、自然の中で実る1次産業、それを加工する2次産業、そして農耕文化のなかで育まれる情操、教育、安らぎといった文化と心が入った5次的な産業として、今、人々に求められる農業の価値を提供していきたいと思っています。

なぜ、農園 杉・五兵衛のような取り組みを始めようと思いましたか?そのきっかけや経緯を教えてください。

interview_photo02.jpg今の日本の農業は、言ってみれば同じものを大量につくる農業です。農耕文化が農業という産業に分化してからは、いかに多くの金銭を得るかとする事ばかりに重点が置かれ、農の楽しみがなくなり教育や文化までもが衰退してしまっています。本来、農家にとって農耕は生活の場そのものであるはずです。室内ばかり美しく整えて生活するのではなく、農園そのものを美しく、快適に整えることがそのまま心豊かな農家の暮らしだといえるのではないでしょうか。私が先代の父から22歳で土地を譲り受けた時に、日本でやる農業の意味を自分なりに突き詰めた結果、ひとつの作物を大量に生産して販売するスタイルでは、都市近郊農業は廃れていくだけだと考えました。海外の広大な土地で行う大規模農業で生産される作物は、人々にも安く提供できますから、日本の農業では到底勝てないことがわかったからです。現在の日本の農業が衰退している原因は、大量生産しなければ採算が合わないような農業経済の上に立っているためです。しかもこれからは農作物そのものの価値を高める以外には価格は下がる一方です。だからこの農園 杉・五兵衛では、消費者一人ひとりに対してきちんと価格を設定できるような、価値のある農作物を販売していくために、農園全体の思想に基づく、教育、情操、安らぎ、文化をも含んだ農業を体験できる場を実現しようと思ったのです。

現在のような農園のスタイルが確立するまでに苦労したことはどんなところでしたか?

interview_photo03.jpg私がこの農園を作り始めたのが40年前になります。当時は、今の農業の生産・加工・流通の基礎ができはじめているころでしたので、なかなか自分の考えは理解されませんでした。日本の農業は、次第に生産者と消費者が切り離され、同じような野菜がスーパーに並び、そうした合理主義に則った農業経済の上に推し進められ、それが当たり前のように「これが農業だ」と言われるようになりました。これでは小規模農家はやがて立ち行かなくなってしまいます。しかし、今になってようやく、採れたての野菜や有機農法、農家が手をかけて育んだ心と文化的背景を持つ野菜が見直されるようになってきました。都会に暮らす人々のなかにも、農業体験を通して自然に触れることを求める人も多くなってきました。「6次産業化」という言葉が生まれるようになったのも、こうした時代背景があり、必然的なことなのでしょう。例えば、私の農園レストランでは20年以上前からランチの価格が4,000円という、当時としてはかなり破格な価格設定でした。しかし、わざわざこの地まで足を運んでいただくならば、逆にそれだけの価値のあるものを提供しなければ成り立たないわけです。ですから、価格はずっと変えないままです。近くに高速道路ができてからはアクセスも良くなりましたので、近所の人たちにも気軽に来ていただけるように「農園のお弁当」という名のランチを2,000円で提供しています。これは、かご盛りのお弁当とそのかごを使って自分で好きなおかずを取っていただく「煮しめ」という大皿料理が並ぶコーナーがセットになっているもので、一見するとただのバイキングのようですが、その意味はまったく違います。古くから日本には冠婚葬祭など人が集まる日には大皿に料理を盛り付けて、一人ひとりが自分の体調や好みに合わせて摂ることができる食事のスタイルがありました。私たちは食べ残しなどのムダが減るという、日本に伝わる昔ながらの家庭の知恵を生かす、エコロジーな想いを込めて提供しているのです。そこには懐かしさが漂い、伝統が息づく食事のあり方を再現したものなのです。杉・五兵衛でお食事を楽しんでいただきながら、そうした日本の食文化も一緒に感じていただけると幸いです。

今後、農園の6次産業化の取り組み、新たな展望について教えてください。

具体的には新たに調理加工飲食設備のある直売所を整備し、有機農産物を使った創作惣菜の開発・生産・販売・飲食提供を展開していこうと考えています。また、素材の新鮮さを損なわない調理法を研究し、生産直売の強みを活かしたサービスを提供していきたいと思っています。販売ルートの開拓や販売方法にも創意工夫と効率化に取り組むことで、都市農業地域におけるモデル的な農業経営を目指していきます。
ここは大阪からも近い住宅地のすぐ傍にありますが、一歩足を踏み入れたら、全く違う世界が広がっています。春夏秋冬を通して草花が移り変わり、季節ごとの味わいや自然の趣、時の移り変わりを堪能できる場所になっています。そんな場所は今の日本ではとても貴重なのではないでしょうか。農業体験をする人は言わば農家の応援団です。子供たちにも、体験を通して農業が「命を育てる仕事」であることを理解してもらいたいのです。ですから、この農園では物質的なもので対抗するのではなく、“心”で勝負していきたい。それが6次産業化を進めるにあたっても、実はとても重要なポイントになるのではないでしょうか。

これから6次産業化を目指している人たちへ一言いただけますか?

989.jpg今の日本の農業は生産量がガタ落ちです。だから、今こそ本格的に生産に力を入れるべき時です。生産力を上げるためには、働く人を育てることがまず必要になります。新規就農を喧伝しているようなものも世間には見受けられますが、今の農業の状況からすればそれは無謀というものです。最初から独立しようとするのはムダな努力です。新規就農で独立するためには、始めのハードルを越えるためのなんらかの打開策を考える必要があるでしょう。農業をするのは厳しいものです。ですが、一つだけ伝えられることがあるとすれば、絶対に諦めないことです。諦めることと、サボることは違います。農作物を育てるコツは、最初の命が芽生える部分にだけ手を加えてやればいいのです。毎日勤勉に手をかける必要は実はありません。芽を出すことができれば、あとは自然が勝手に育んでくれます。命をコントロールするのではなく「もともと育つ命の手助けをする」、それが農業の道理です。管理したり、効率化を求めれば、命は失われます。そうしたことを踏まえて、どんな困難があっても諦めるのではなく、一休みする、手を抜く、さぼる…、そういう心持ちでいることも物事を成就するためには大切なことかもしれません。

サポーター

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命を育てる「食」と「農」を人々に提供する
農園 杉・五兵衛のサポーターたち

トシノウ(都市農業)をもっと身近に、かっこよく。

support_photo01.jpg氏名:空畑クラブ
ジャンル:プチ自給農プロジェクト
自宅での農作物づくりのサポートや、様々な農的情報を発信・共有するクラブ。また作る人と食べる人をつなげる、まち側の窓口となっている。枚方食農の会として、農園 杉・五兵衛周辺の畑を年間60,000円で提供し、体験農業を通じたサービスを行っている。





伝統芸能の披露や餅をモチーフに盛り上がる地域の一大イベント

support_photo02.jpgイベント:食と農の交流会 楽農まつり 2011
ジャンル:イベント
2011年で4回目を迎えた楽農まつりでは、2日間にわたって、採れたての有機野菜をふんだんに使った料理を屋台形式のブースで提供。また、そばの脱穀体験、動物とのふれあいやゴマクッキー焼き体験など、多彩なワークショップを催し、「育てる」楽しみや「食べる」楽しみを体験する場となっている。

達人からのメッセージ

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◆達人の第6感
物で対抗しても負ける。これからの農業は“心”で勝負。それが日本の1次産業が存在する意味。日本の本来の農耕文化が人に与える、情操、安らぎ、教育を形作る農園を作りたい。

◆達人の教訓
農業をやるならば、絶対に諦めるな。諦めるのとサボるのは違う。もともと育つ命の手助けをすることが農業の本来のやり方だ。

有限会社杉の製品

001 農園レストラン
自家製野菜、山菜、川魚などをふんだんに盛り込んだ農園会席や地どり鍋、陶板焼などを趣のある個室でゆっくりといただける。他では体験できない農園レストランだ。

麹蓋のお膳3【春】.psd

002 園内の農園
園内には四季を通じて様々な草花が咲き、都市近郊とは思えない農園が広がっている。40年の間に醸成されたひとつの世界観が見事。

商品紹介3(農園散策).jpg

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