有限会社澤田農場

達人名:澤田篤史(有限会社澤田農場(3代目))
ジャンル:農業 Agriculture
地域:北海道斜里郡清里町 Kiyosato-cho Shari-gun Hokkaidok

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北海道の地域農業の新たな胎動
「オホーツク・テロワール」の推進者

60年前に有限会社澤田農場が設立され、現在3代目。畑作を中心に小麦やビートなどを手掛ける傍ら、肥育牛の飼育も始める。その後、品種改良によって大豆を手掛けられるようになり、生産する作物も増えてきた。清里町で取り組んでいるオホーツクの食のPRを担うメンバーに参画し、新しい「オホーツク・テロワール」のブランド確立にも尽力している。6次産業化では、親からの世代交代のタイミングで、新たに加工食品分野への進出にチャレンジしており、Facebookを使っての情報発信も行いながら、試行錯誤で商品開発に取り組んでいる最中である。商品は、手作り味噌や牛めし、豆腐、あげなど大豆や米、牛肉といった本業で手掛けている農作物の有効利用を促進する内容となっている。

■澤田農場

インタビュー

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澤田農場の新しい取り組みの背景となる、これまでの経緯や主な事業内容を教えてください。

interview_photo01-1.jpg父が澤田農場の代表をしているのですが、6次産業化については息子である私が主に担当しています。家族経営を中心にしながら、数名の従業員を雇って運営しています。62年ほど前からこの地で農業を営み、自分で3代目になります。もともと畑作が専門で、30年ほど前から肥育用に牛を飼い始めました。15年ほど前に技術的に大豆の品種改良が進み、北海道の寒冷地域でも「ユキホマレ」という大豆が作れるようになったので、それをきっかけにうちでも扱うようになりました。作った作物の販売先はホクレンや商社になり、直販はまだ本格的に始めてはいません。6次産業化に関しては、大豆を使った手作り味噌を新たに作ろうとしています。この6月に加工場ができたので、直売会などを通してお客様の意見を聞きながら試作品の改良をしている段階です。味噌については、母が自前で以前から自宅で作っていたものですが、何年か前に世の中で事故米などが問題になった時、麹から全て自分たちで作ってみようと思い立ち、麹を作る機械で米から味噌を作り始めたのです。豆は自分たちの畑から上がった大豆を使ったところ、出来た味噌は甘みがあってとても美味しかった。これをきちんと加工して、たくさんの人にも食べてもらいたいと思うようになりました。今回6次産業化の申請をした大きな理由としては、私たちへ農業を受け渡し、親としては世代交代にあたり農業の第一線を離れ、そしてまた、これまでとは違う、何か新しいことにチャレンジしてみたいという考えもあります。本格的な農場経営は私が担っていきますが、母もまだまだやれることがあるので、少し勇気を出して前向きに取り組めるものがあるのではないかと思ったようです。食品加工に関しては、母にも話を聞いてもらえたらと思います。

お母さんの久美子さんに伺います。加工品を手掛けることになったきっかけや想いを教えてください。

interview_photo02-1.jpgこの地域の農家は自分たちが作った作物はほとんどすべてホクレンが買い取ってくれるので、自分たちで手掛けたものを自分たちで食べるということがあまりありません。また、清里ではいい牛が育ちますが、清里牛を地元で食べることがなかったので、牛肉に関しても加工品を作りたいと思っています。自分たちで作った清里牛の肉をいろいろ加工して地域の人たちに提供したらどうかと思いました。販売のターゲットは地域の人たちをメインに考えていて、まだ広く全国展開を考えるところまでは至っていません。私の世代では、これまで規模拡大を目指してずっと主人と突っ走って来ました。現在78haの農地と15haほどの牧草地を持っていますが、そのおかげで大規模経営ができるようになり、日本全国の農家の中では安定した経営ができるようになっています。ですから、他の地域の農家の方々とは少し6次産業化に対する気持ちもゆるやかなものかもしれません。私たちとしては60歳を迎え、息子たちの世代へ引き継ぐタイミングで、自分があと10年できることといえば、手作り味噌や牛肉を加工し販売することかなと、そのような気持ちで今回6次産業化に取り組んでいます。ただ大規模農家にも悩みがあり、大量生産しなければならないので、労働力が要り、人を雇用しなければならないことや、冬は農作物の生産は無理なので、その間の労働力をどうするのかが経営上の課題となっています。加工品を手掛けることで労働力の有効活用にも、いい影響が出るのではないかと考えています。

6次産業化に申請をした商品について具体的に教えてください。

interview_photo03.jpgいま試作品として開発しているのが、牛めし、豆腐(黒大豆を使ったものと普通の大豆の2種)、あげ、おかず味噌、手作り味噌などです。6月に出来上がった加工場で作っていますが、味噌は熟成期間があるので、仕込みが終われば、それ以外の期間は同じ道具で他の商品もいろいろと加工できます。味噌だけは1年半ほど熟成させていますので、来年から本格的に商品化を進めていこうと思っています。今試作で作っている商品は全て手作りなので、大量生産はできません。本当に少量からのスタートですが、販売会などではお陰さまで売り切れになりました。味についてはまだ改良中で、お客様に実際に食べていただき感想を伺うなどフィードバックをもらいつつ改善していこうと考えています。やはりお客様に直接販売をすることで、直に反応が返ってくるのでこちらもやりがいはあります。豆腐は、大豆の「トヨムスメ」と「ユキホマレ」の2種類を使っているので、「雪娘」と命名しました。 この土地は雪が降り、風が吹いて、しばれる気候。“娘”という字には“地元の食を育てる”という意味合いが込められています。これからの販路としては、道の駅にも出していきたいと思っていますが、販路開拓の前にまず安定した物を作ることが目標です。具体的な数字としては、5年間で、メインで手掛ける味噌を1トン売れるようにすることが目標です。それでも売り上げとしては全体の1%未満ほどにしかなりませんが、新しいことにチャレンジするということが大事なのではないかという思いで取り組んでいます。

どのような方々と6次産業化を進めていますか?

私たちは加工のプロではないので、農政事務所や保健所、食品加工の技術所などにも協力していただいています。またプランナーの方にも大変お世話になっています。そういった地域の農業を知り尽くした専門の方々のお知恵をいただくことができるので、私たちも大変心強いです。
大規模農場を経営していると、毎年大量の農作物を生産する必要があるので、ほんとうに労働力を賄うのが大変です。じゃがいもや小麦以外の野菜など、手のかかる作物を育てるまで手が回らないのが現状でした。この辺りの農家はどこも広い土地で大量生産する農業のやり方をしているので、どこのうちもそれほど野菜づくりに専念していません。ただ、数年前から「食のオホーツクブランド」を確立して一層の地域産業の振興につなげようという、「オホーツク・テロワール」という取り組みがこの地域で行われるようになりました。その影響もあって、地域ならではの特色を活かした作物を加工して打ち出すような動きが出始めているのではないでしょうか。

今後の地域の農業の展望についての考えをお聞かせください。

interview_photo04.jpg日本全国のなかでも北海道は他を凌ぐ大自然があります。昔の農民には教養がなくても、その恵みを活かした「手業」というものがあるそうで、いわば生きる知恵とライフスタイルの融合のようなものが自然と育まれてきたのではないかと思います。特別に何か手を加えなくても美味しいものができあがる、そういう恵まれたところがあります。先人から伝わるノウハウでコツコツ生きていくことができる、それが本来の農家の姿ではないでしょうか。北海道の農業が他の地域と比べてなんとなく漠然と見えるのは完成されているからということもあるかと思いますね。これからの日本の農業は、「国際化」もひとつのキーワードになってきますが、1000年先に遺るような美しい農村を200年くらいかけて作り上げていく、今はそんな社会の仕組みができていくための迷い道の通過点にいるのではないかと思います。まさに北海道の“農業のグロバリゼーション”だと思います。これからも新しい農業に向けて少しずつ前進していければいいなと思っています。



サポーター

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“食のオホーツクをブランド”に
北海道清里町の農業を盛り立てるサポーター

さまざまな事業体、組織体同士の連携を通して北海道清里町の農業を盛り立てるサポーター

support_photo01-1.jpg氏名:岩井 宏文さん
ジャンル:北海道の6次産業化プランナー
北海道の農林漁業現場からの新しいビジネス開発と、農業活性化の両輪の仕組みづくりに奔走している6次産業化プランナー。澤田農場の6次産業化を支援している。




「食のオホーツクブランド」を確立して一層の地域産業の振興を

support_photo02-1.jpg活動名:「オホーツク・テロワール」
農業が盛んなオホーツク地方でも、地域一丸で「食のブランド化」に向けた動きがスタート。メンバーが地元の食材を使った新製品の開発に取り組んだり、商品を共同販売する「オホーツクマルシェ」を展開。

達人からのメッセージ

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◆達人の第6感
麹から自家製で作りあげた味噌は甘みがあってとても美味しかった。これなら一般消費者にも受け入れられるものができるのではないかと確信した。

◆達人の教訓
畑も牛も投資をしながら進める必要がある。投資をしない農家が増えると、後継者が減り農家が減り、農業がままならなくなる。地域内で連携して何かをやっていくことは、投資分を有効活用し、農業を維持していくことにつながるのではと思う。

有限会社澤田農場の製品

001 牛めし
清里牛を使って加工した牛めし。清里の特産である清里牛を地元の人にも食してもらうために開発した。大手チェーン店が展開する牛めしとはまた違う、農家ならではの栄養たっぷりの一品だ。

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002 味噌
麹から手作りしている味噌は、現在熟成中。母、久美子さんの想いが詰まった手作り味噌の完成が楽しみだ。

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