萩大島船団丸

(有)松原水産(三成丸)、(有)岡村水産(福寿丸)、(有)吉光水産(満漁丸)
ジャンル:漁業 Fishery
地域:山口県萩市 Hagi-city Ymaguchi

035A.pngスクリーンショット(2012-09-26 17.02.46).png

萩のブランド魚を獲って、加工して、販売する。
まき網漁業者3社がタッグを組んだ6次産業化。

 山口県萩市から北西へ約8キロ。日本海に浮かぶ大島は、まき網漁業(※)を主体とした漁業が盛んで、県内離島中ではトップの漁獲高を誇っている。しかし3年前から環境の変化などにより漁獲量・漁獲高ともに急激に減少。漁業経営の悪化を改善しようと、山口県漁協大島支店に所属する、まき網船団の3船団がグループを結成し、2012年より共同で6次産業化に取り組んでいる。六次産業化法 総合化事業計画に認定された内容は、鮮魚を船上で箱詰めし直接販売する「鮮魚BOX」と、高級干物「船上一夜干し」と「寒風一夜干し」の製造・販売。3船団のグループ結成までの経緯や、難しいとされていた漁協との協力体制の構築など、全国の漁業関係者から注目を集めている6次産業化の取組である。
※まき網漁業…魚群の回りを逃げられないように網で囲み、徐々に網を狭め、魚を獲る漁業。
(2012年11月17日 取材・撮影/RPI)

萩大島船団丸Facebook

インタビュー

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漁業経営の悪化を食い止めるべく
まき網漁業3つの船団の結集

035B.pngまき網漁業の形式には様々なものがあるが、萩大島船団丸は7隻でチームを組み、探索船や網船、運搬船など役割を分担し、18~20人でまき網漁を展開している。 日本の海の魚の生態系が変化している。地球温暖化による影響と思われるが、萩市大島のまき網漁業も、3年前から漁獲量が急激に減っている。最もよかった船団の例をあげると、5年前に年間約3億2〜3千万円あった売り上げが、昨年では約1億8千万円にまで落ち込んだ。人件費や設備代については、この中から支払われるので、利益幅はかなり薄くなった。さらに、山口県では中型まき網漁業の禁漁期間(12/16〜3/15)が3カ月設けられているので、漁ができるのは一年で9カ月の期間。その中でも、10月を過ぎると天候が荒れることが多く、漁に出られない日も増えていく。

 「水揚げすれば儲かるような時代は、これから先は望めない。少ない魚でも安定経営できるように、そのために萩の魚を自分たちで宣伝して、販路を開拓して、売っていかなくてはいけない。そういう時代が来ていると感じました。そんな時に、ある方から六次産業化法というのを教えてもらい、これを活かしたいと思ったんです」と話すのは、松原水産に所属し、6次産業化に向け、今回の3船団のグループ結成に力を尽くした萩大島船団丸の団長・長岡秀洋さんだ。


大陸棚の漁村(さと)からの贈り物、
萩・大島の財産であるブランド魚を再認識する

035C.pngまき網漁業は夕方から出船し、一夜を海で過ごしながら漁を行い朝に帰港する。燃料代だけでも1日30~50万円ほどかかる。 萩の海は、日本でも有数の好魚場と言われている。対馬、朝鮮半島にまで達する大陸棚には天然礁(瀬)があり、この海域を流れる激しい潮流がプランクトンをたっぷりもたらす。水深100m前後の起伏の多い瀬は、魚にとって絶好の棲家となっており、萩では年間、250種もの魚介類が水揚げされている。中でも萩のブランド魚として有名なのは、瀬つきあじ、剣先イカ、甘ダイで、県内外で高値で販売されている。素材の良さで料理勝負するテレビ番組でも紹介されたことのある「萩の瀬つきあじ」の魅力について、番組で“まき網漁”の一部始終を取材された岡村水産の岡村直明さん(萩大島船団丸の副団長)が、話してくれた。

 「アジは回遊魚なのですが、日本海、萩沖には大陸棚があって、そこが豊富なエサ場となり、留まってくれているんです。良質なエサを食べ、潮流にもまれた萩の瀬つきあじは、身がしまっていて旨み成分が高い。これは、数値的にもあるシンポジウムで発表されています。ブランド品のアジといえば関アジが有名ですが、萩の瀬つきあじも高く評価されています。今回の6次産業化では、この瀬つきあじの船上一夜干しと、鮮魚BOXを展開していきます。キャッチコピーもみんなで考えましたよ。“大陸棚の漁村(さと)からの贈り物”です」。


漁協との協力体制が必須。思いだけでなく
レポートをしたため交渉を続けた3年間

035D.pngまき網漁業に就いてから、まず覚えることのひとつが網の修理。漁に出られない日は悪天候の中、港に係留されている船の上で作業を行う。 もう一人の副団長、吉光水産の吉光皇典さんが話してくれた。「和歌山で6次産業化を行っている、同業のまき網漁業者を見学してきました。そこで外から見た萩の漁業というのを思い知りました。厳しい状態にある萩の漁業について見直しが必要であること。そして、萩大島船団丸の6次産業化についての考えを漁協に提案しました」。
 通常、水揚げされた魚は漁協を通し市場に出荷される。そこを6次産業化で、自分たちで販路を開拓し販売していくことになるのだから、地元漁協との交渉が必須となる。漁協の経営にも関わることであり、交渉は容易でなく3年の月日を要したが、市場価格に影響を与えない程度の数量であれば、漁師が自ら加工し、消費地へ直接販売しても良いと認められた。

 団長の長岡さんが話す。「漁協の協力はどうしても必要なんです。これから先の萩の漁業の課題についても、積極的に話し合っていきたいと考えています。我々としては、萩の魚に付加価値をつけて宣伝していき、萩全体の漁業を底上げしていきたいと思っています」。副団長の吉光さんからは、「信念やね。どんなに難しいことがあっても、信念を持って最後までやりきるというのが大事」と、これから6次産業化に取り組む人に向けてアドバイスにもなる言葉をいただいた。


人と人とのつながりを大事にした6次産業化で
様々な課題を解決、そして従業員の経済状況を改善していく

035E.png萩大島船団丸 代表の長岡さん(右/53歳)、副代表の吉光さん(中/54歳)、副代表の岡村さん(左/56歳)。3人は大島生まれの大島育ちの幼馴染み。とはいっても、漁業の世界では本来ならライバルの関係にある。 六次産業化法の総合化事業計画の書類作りは、萩大島船団丸で営業・事務を務める坪内知佳さんが担当した。「魚を獲る以外は、全部私の仕事です!」と話すだけあって、船員にとっては頼りになる存在。売上目標の設定や販路の開拓など、シビアな数字と対面しながら交渉を続ける坪内さんが、一番気にかけていることは、萩大島船団丸の従業員60人の雇用対策だ。「いくら数字をあげても、現場が良くならないと意味がありません。生活環境、経済状況の改善を行い、働きやすい環境、みんなが居つきたくなる会社にしていきたい。」と話す。萩大島船団丸の若い従業員たちにとっても、今回の6次産業化は自分たちが獲った魚が、どのように流通されていくのかを学べる絶好の機会となるはずだ。

 幹部が話す、萩のブランド魚の消費ターゲットは富裕層。百貨店や高級干物を扱うインターネット販売業者とも交渉を重ね、ある程度の手応えを感じているそうだ。そうしている間にも、一夜干しの加工技術のさらなる向上、安定供給できるような生産システムの構築など、次から次に課題があがる。団長、副団長、坪内さんが口を揃えていう言葉が「人と人のつながり」。今後、このつながりが、萩大島船団丸の6次産業化をどう展開させていくのか、全国の漁業関係者からも注目されている。


サポーター

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ここで働く仲間、外部でサポートしてくれる仲間がいて成り立っている

035F.png営業・事務・広報を担当する坪内知佳さん(26)。漁業未経験者から、萩大島船団丸を束ねる大黒柱に成長。代表や副代表たちも「彼女なしでは、今回の6次産業化はなかった」と口をそろえる。申請書類作りから取りかかり、六次産業化法で総合化事業計画が認定されてからは、事業を推し進めるために県内外を奔走し営業。6次産業化の事業の成功には、生産者(従業員)の意識改革が必要と唱え、歯に衣きせぬ物言いで船団を盛り上げている。


035G.png大島には、10代、20代、30代の漁業従事者が多く存在する。他の漁協から見れば羨ましい労働力であり、未来への展望が開けているようにも見える。「若い力が財産」と唱える萩大島船団丸の幹部たちが彼らに用意したのは定休日。天候に左右されず、彼らの休みは毎週土曜日で、漁の有無や日数に関わらず、安定した収入が保証されている。恵まれた条件で漁業という仕事に就いたが、彼らが取り組んでいくべきこれからの漁業は、漁獲量が減少していくなか、ブランド力を活かし6次産業化をどう進めていくか、というシビアな漁業だ。




035_original.png19歳~56歳まで、萩大島船団丸には60名の海の男たちが在籍している。萩・大島で育った漁師の2代目、3代目もいるが、県外から就労してきた若者も多くいる。水産を勉強して漁業に就労した若者でも、勉強した内容と現場は違うと話す。船の上では危険も多く、ケガをさせないため、仕事を覚えてもらうため、親方からは大きなゲキが飛ぶ。





達人からのメッセージ

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漁業者だけで6次産業化を進めていくのは非常に大変です。漁協が中心となり、僕ら生産者と一体となって販路を拡大したり、事務については受け持ってもらうことがベストだと思います。今後、漁業で6次産業化を考えていらっしゃる方は、やはり漁協を巻き込んで話し合って、6次産業化に取り組まれることをオススメします

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萩大島船団丸の製品

001 鮮魚BOX
「さかなの宝庫」と言われる萩沖の日本海で獲れた魚たち。漁獲後にすぐに活け絞めを行い、旨みを凝縮させた鮮魚を箱詰めにして、船上直送便で注文を受けたクライアントへ発送する。ちなみに、この鮮魚BOXに入っているのは、サゴシ、シロサバフグ、アジ、イカ、サバ。鮮魚BOXの中には季節の旬の魚がズラリと並んでいる。

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002 萩のブランド魚「瀬つきあじ」
長崎県の五島列島沖で生まれ、対馬暖流に乗り、日本海の萩沖に来遊し天燃礁(瀬)に住み着いたマアジのこと。萩沖の大陸棚は激しい潮流がめぐり、プランクトンやシラスなど豊富で良質なエサに恵まれる海域。エサを食べ成長したマアジの体は、潮流にもまれ身がしまり美味しい瀬つきあじとなる。旬は5~8月で、萩を代表するブランド品のひとつである。

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003 船上一夜干し
刺身にして食べても美味しい鮮魚を、船上で一夜干しにした贅沢な加工商品。漁獲後すぐに活け絞めし、首折れ、血抜きを行うので、身に透明感があり臭みがないのが特徴。営業先から評価を受けている点は、その日の天候や気温に合わせ、最適なタイミングで行われる加工技術。長年の漁師の勘がモノをいう技術であろう。萩市の特産品「椿油」とのタイアップ商品の開発も試みているが、一定の成果を上げてからは、まき網の禁漁期間中に加工を行う「寒風一夜干し」についても、漁協と協力体制を取りながら取り組んでいく予定だ。

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