株式会社木頭いのす

達人名:神代晃滋 Kouji Kamiyo
株式会社 木頭いのす 代表取締役
ジャンル:農業 Agriculture
地域:徳島県那賀郡那賀町木頭 Kito Naka-cho Naka-gun Tokushima

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昔ながらの手搾りの柚子果汁を市場に流通させ
食品に留まらず、画期的な魅力ある新商品を模索し続ける


大阪府出身。アパレル輸入商社のサラリーマンを経験後、独立。39歳のとき、木こりになろうと木頭(きとう)での定住を決意。木頭は、徳島県と高知県の県境に位置し、人口総数は1,410人。その98%が森林で、徳島県有数の河川である那賀川の源流が流れる自然豊かな山村。年間降雨量は四国一の地域だ。そこで林業に従事する中、神代さんは木頭ゆずの魅力に気付き、休耕地となりかけた柚子農園を借り受けて農林業家として再スタートを切ることになる。柚子の栽培から収穫、手搾りの加工までを行い、柚子果汁商品を開発。平成17年より「木頭ゆず一番しぼり」の発売を始め、同年にHPも開設。その後、柚子果汁を使ったポン酢や柚子胡椒など商品アイテムを徐々に増やし、平成21年にはアメリカへの輸出もスタート。平成23年6月に、株式会社木頭いのすを設立。同年11月には六次産業化法に基づく総合化事業計画が認定された。現在、日本有数の柚子の里の食文化の継承を模索しながら、化粧品など食品以外の商品開発の計画も進めている。※写真は、収穫期まっさかりの11月、たわわに実った柚子農園に立つ神代晃滋さん。
(2012年11月3日 取材・撮影/RPI)

木頭いのす

インタビュー

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果実の質は日本一と称される柚子の名産地で
加工品でも日本一を目指す!

039I1.png“いかに美しい青果を作るか”に命をかけてきた木頭柚子の栽培の歴史。その技術は日本トップレベルだが、形は不揃いで色が悪くなってしまう無農薬栽培を神代さんはあえて進めている。 西日本第二の標高を誇る霊峰・剣山の南斜面にあたる木頭地区(旧木頭村)。古くから杉の美林で知られるほか、地域のほとんどの住民が柚子栽培に従事しているという、日本有数の柚子の里でもある。木頭では11月になると、あちこちで柚子の収穫と搾る作業が行われ、村中が芳しい柚子の香りでいっぱいになる。冬は零下10度、夏は最高気温が40度まで上がるという年間の気温差の激しさ、四国一の降雨量、朝夕に霧が多いといった気象条件が、香り高い最上級の柚子を実らせ、昭和52年には果樹として初めて朝日農業賞を受賞した。「木頭柚子は今でも最高級ブランドとして築地で取引されています。」と語るのは、木頭いのす代表の神代さん。受賞後、名実ともに日本一の冠を得た木頭柚子は、生産を拡大して市場に一気に広まった。

 しかし、極上の柚子を生産するための気象条件や柚子玉(丸のままの柚子の果実)を栽培する高い技術など、柚子栽培に関する最高の条件は揃っていたが、市場に柚子の加工品が一気に増えてからは、知名度などで他県に遅れをとってしまった。「農産物としての柚子の栽培には命をかけていますが、私自身加工品は農産物にできなかった形の悪い柚子を使えばいいという考えだったんです。でも、最高級の柚子玉を作っても、市場の相場で価格が左右されたり、その品質の良さが伝わっていないと感じました。柚子玉だけにこだわるのではなく、上質な加工品を作ることで、柚子の里の新しい未来が開けるのではと商品開発を考えました。」と、神代さんは消費拡大を狙う。


目をつけたのは、柚子本来の香りと風味が活かせる
昔からの手搾り・非加熱の製法

039I2.png地元の主婦や女性に手伝ってもらい、手で搾られる柚子果汁。柚子果実部分の約10%しか使わないという贅沢な搾り方だ。 木頭には柚子を搾った果汁加工品がすでに存在していた。それらのほとんどは柚子の皮を消毒して機械で搾り、発酵をやめるために熱を加えて出荷されていた。「機械での作業は余分な皮まで搾り過ぎてしまいエグミが出ます。人の手、それも女性の力で程よく搾ると、本当の柚子の香りと酸味だけが果汁に残る。また、柚子果汁は高温状態に置かれると発酵してしまうので、熱処理して出荷されることがほとんどですが、熱を入れるのと入れないのでは風味の差は歴然です。」と神代さんは語る。そのことに気付いたのは家庭用に搾られる柚子果汁を知ったからだ。「この村には米酢という概念はなく、柚子果汁を酢として使っています。各農家で一年分の柚子を搾りますが、販売用ではない自家消費の柚子果汁は消毒をせず、手搾りで熱も加えていません。その方が格段においしい。」と神代さん。

 手搾りだからこそ出せる素晴らしい柚子の風味は、この村が大切にしていかなければならない食文化だと確信した神代さんは、無農薬栽培、手搾り、非加熱、無添加の商品に取り組む。「非加熱の柚子果汁は要冷蔵保存となるので、加熱果汁よりも売りにくい商品となってしまうが、他の地域との味の差別化を出すには非加熱は外せない。そして、良い商品を作るためだけではなく、手搾りの柚子の味と、この村の伝統を次代に残していきたい思いもあります。そのためには地域ぐるみでの協力が不可欠。今までは青果にできなかった形の悪いものを加工品に回せばいいという考えでしたが、これからは無農薬栽培など、よりよい柚子加工品を作るための栽培方法も考えていかないといけません。生産管理ができない限りブランドは構築できませんし、6次産業として成り立たない。青果商品で日本一だからといって、加工でも日本一の味が出せるわけではない。そのあたりの意識改革も進めていきたいですね。」と神代さんは語る。


地域との連携、そして幅広い人脈の活用。
サポーターの存在が6次産業化を支える

039I3.pngアグリゲートの企画により、著名な料理研究家・枝元なほみさん率いる「チームむかご」のメンバーによる柚子の収穫や、郷土料理の体験を2年連続で行う。リアルな体験談がフェイスブックに流れ、10万人が閲覧。 「小さな一農家で6次産業を進めていくのは、とても難しい。栽培と果汁を搾ることまでは私どもでやりますが、加工する2次産業や販売する3次産業に関しては、それぞれのスペシャリストに協力をお願いしています。」と、神代さん。柚子果汁の瓶への充填、ポン酢やマーマレードの加工は、地元で柚子の加工の歴史が長い「柚冬庵」などの協力を得て実現。ポン酢など商品のレシピの一部は、学生のころから神代さんがお世話になっていたという大阪の有名割烹の板前に依頼、柚子胡椒の生産は九州の業者に、そして、商品のパッケージはデザイナーである神代さんの妹が担当するなど、自身の人脈をフルに活用。関西圏へは神代さんが自ら営業に出向き人脈を開拓、販売ルートを広げているが、関東圏の販売ルートはアドバイザーとして協力するアグリゲート(東京)の協力を受けている。

 アグリゲートについて神代さんは「私たちが知りえない消費者のニーズや、マーケットが求めていることなどを教えてくれる貴重なサポーターです。HPの作成もお願いしましたが、フェイスブックなど現代ならではの手間やお金がかからないメディアの提案もしてくれますね。」と、販売ルートを広げるだけではない、ソーシャルメディアのメリットについても話してくれた。


柚子の里の技術を次代に伝えるべく、
生産性を上げる商品開発を進める

039I4.png柚子酢(柚子の搾り汁)を使った寿司や柚子みそなど、木頭の柚子料理。神代さんは「柚子の味をききわける“きき酢”や、柚子の種飛ばし競争なども復活させたい。」と話す。 「私が柚子の栽培を始めたばかりの頃、農家の経験が一切ない素人の自分に対し、柚子の栽培方法や、長い年月をかけて村独自で開発した枝の剪定方法や時期など、周りは包み隠さず何でも教えてくれました。最高の生産適性地である気象条件と、経験に基づく高い栽培技術をこの村は持っています。しかし、村の人口の50%が65才以上。この村が育んだ柚子栽培の技術や食文化を継承するためには、外に出て行ってしまった若い人を呼び戻すことが必要です。嬉しい事に故郷に戻りたいという木頭出身者は多いと聞きます。また生産性を上げる事も急務と感じています。」と神代さんは語る。

 一農家が市場で売るためには、商品を特化させるための”他との違い”が必須と神代さんは話す。現在、木頭いのすでは、柚子果汁100%の「木頭柚子一番しぼり」のほか、醤油だれやトマトポン酢、魚用や肉用の多様なポン酢に、柚子ジャムや柚子フレーバーのオリーブオイルなど魅力的な柚子加工商品を揃え、販売先のデパートや高級スーパーなどで、食に関心が高い人々より好評を得ている。「今後は食品にとどまらず、化粧品などの開発も進めていきます。稲畑香料(大阪)と連携して柚子の皮を水蒸気蒸留し、柚子の香りのする水を抽出しました。それをコスメティックジャパン(東京)で柚子の香りがするミストやスプレーにするなど、商品化を進めている最中です。内容、パッケージ、ブランド作り、木頭柚子の魅力を伝えるべく、模索を続けていきたいと思います。」と、今後の展望についても話してくれた神代さん。木頭いのすの挑戦は、まだ始まったばかりだ。

サポーター

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ここで働く仲間、外部でサポートしてくれる仲間がいて成り立っている

039SP1.pngアグリゲート 代表 左今克憲さん(左)
地元の林業業者を通じて知り合った、農家と消費者をつなぐサポート会社。一時期で終わりの商品にならないよう、長期的な視野で商品のファン作りを進めるなど、具体的なアドバイス、今後のプランを提案してくれる事業計画の強力なサポーターだ。また、木頭いのすのホームページも作成。食に対して関心の高い人々を対象に、柚子の収穫体験なども企画する。


039SP2.pngメディア・ドゥの瀬戸本さんと村の人たち
神代さんの隣、左から2番目の男性がメディア・ドゥ木頭事務所所長の瀬戸本さん。奥の両端の女性はメディア・ドゥの社員。木頭に徳島営業所を置くメディア・ドゥとは、今後の情報発信を計画中である。前列右の女性2人は柚子の収穫を手伝ってくれる村の人たち。後列中央は、木頭で柚子を使った郷土料理を伝承している中山さん。


039SP3.png木頭いのすスタッフ 大西正裕さん
高校から木頭を離れ、奈良県で就職するが、故郷で子育てと人生を送りたいと平成19年に家族ととともにUターン。木頭いのすでは枝の剪定や収穫などを手掛ける。

達人からのメッセージ

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果樹では日本一の評価を得た木頭の柚子。加工品を作るならば、無農薬栽培にするなど加工品のための新たな栽培方法や、柚子の魅力を最大限に活かす工夫が必要。今後は若手が地元に戻って働けるよう、柚子の生産量をもっと上げるための魅力的な商品作りを進めていきたい。

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株式会社木頭いのすの製品

001 木頭柚子一番しぼり
無農薬・無化学肥料で育てた特別栽培の柚子を、収穫したその日のうちに一個ずつ丁寧に手搾りしたもの。柚子果汁に添加物や保存料、着色料などは一切使用せず、柚子果汁本来の風味や成分を損なわないよう熱処理も加えないため、要冷蔵の商品となる。100mlと200mlの2サイズを商品展開。

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002 木頭柚子 生搾り醤油だれ
生の柚子果汁をふんだんに使った醤油だれ。爽やかな柚子の香りと、ごま油のコクのある香り、ガラスープのうまみなどが楽しめるさっぱりとしたたれで、生野菜やサラダのドレッシングはもちろん、うどんや中華麺のつゆ、焼肉やから揚げのつけだれなど、様々な料理に使える万能調味料。

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003 木頭柚子エクストラバージンオリーブオイル
世界初の柚子の香りのするエクストラバージンオリーブオイル。オリーブオイルはイタリア産の有機栽培で、柚子の香りを活かすまろやかで癖のない香りのタジャスカ種をセレクト。自社の特別栽培木頭柚子の果皮より抽出した柚子オイルを使い、その香りを最大限に表現した自信作。

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