農事組合法人 丸広出荷組合

達人名:杉本雅照 Masateru Sugimoto
農事組合法人 丸広出荷組合 代表理事
ジャンル:農業 Agriculture
地域:奈良県北葛城郡広陵町 Koryo-cho Kitakatsuragi-gun Nara

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地域の農業のため6次産業化を目指す!
組合で挑む、名産品育成から販路開拓まで


1958年、畜産を営む家に生まれる。家業を継ごうと奈良県農業大学校畜産科に進学するが、父親が病に倒れ、それが叶わなくなり進路を変更。土木業、運送業、農業と幅広く事業を展開し、2004年に農事組合法人丸広出荷組合の代表理事に就任。作付面積の減少、農業従事者の高齢化など諸々の問題を抱え、広陵町の農業が先細りになっていく現状を目の当たりにし、農家の収入向上等を目的として組合の法人化を推進。6次産業化を念頭に置き、給食での大量消費を想定した冷凍野菜の試作や、販路開拓のために各地を飛び回る日々を送る。「やまと小町サラダ茄子」をはじめとする広陵町の多様な野菜と、料理の専門学校で磨いた腕を活かし、将来は農家レストランを展開したいと夢を語る。
(2013年1月16日 取材・撮影/RPI)

農事組合法人 丸広出荷組合

インタビュー

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「広陵町の農業を守りたい。」
その想いを組合で共有し、新たな特産品を模索

42B1.png冷え込みの厳しい季節、出荷作業が進められていたのは小ぶりの水菜。サラダで食べられる生食用だ。衛生管理された室内で、パートさんたちが重量に応じて仕分け、次々と袋詰めにしていく。 近畿随一の茄子産地として名高い、奈良県広陵町。丸広出荷組合の代表を務める杉本雅照さんは、この地で6次産業化による新たなビジネスモデルを構築中だ。きっかけは、長年なすの栽培を続けてきたために生じた連作障害だった。高齢化などの理由により手放された耕作地が次々と宅地へ変わっていくなか、かろうじて農業を続けている生産者でも、将来の見通しが立ちにくくなってきている。そこで杉本さんは、組合の方向性を変えることで広陵町の農業スタイルを変革しようと決心をした。

 平成18年、組合を法人化した当時を振り返り、杉本さんは語る。「有機を基準に皆で考えていこうと組合を法人化しました。牛糞ともみ殻を発酵させた有機肥料の堆肥を用い、土の力を再生させる。組合員には、茄子以外の野菜栽培に挑戦してもらい、広陵町の風土に合う新たな作物を探しだす計画を立てました。同じ志を持つ生産者それぞれが、茄子の栽培と並行させながら、20品目近い野菜を試験的に栽培します。そうしていくうちに、ほうれん草をはじめとする軟弱野菜の栽培に可能性が見えてきました。体にいい有機栽培の青菜となれば、まずは近隣の皆さんや子供たちにぜひ食べてもらいたい。そういった思いから、地元の給食センターへの供給を考えるに至りました。」

展示会での出会いから、
軟弱野菜の加工が具体化

42B2.png急速冷凍技術により、加工品としての可能性が高まった軟弱野菜は、ほうれん草、小松菜。 地元の有機野菜ということで、町の支援を得ることができたが、給食センターへ野菜を卸すには、様々クリアしなければならないことがあった。まず、泥や虫の付いた状態での野菜の納品は、給食を作る側の人間にとっては手間がかかる。そして一番の大きな課題が、前々から決められている献立に沿って、旬でない時期にも野菜を一定量供給し続けなければならないことだ。特に夏場過ぎは軟弱野菜の収穫は難しい。となれば、旬に収穫した有機野菜を洗浄し、何らかの方法で加工した上でストックしておく手段が必要となってくる。

 どのような加工をすれば、軟弱野菜が長期保存できるのか。情報や人脈を求めて足を運んだ展示会で、杉本さんは特殊な冷凍技術を開発している企業に辿りついた。その場で、水分量の多い青菜でも一定の温度で急速冷凍を施せば、水分の多い軟弱野菜でもおいしさはそのままで冷凍保存できることを知ったのだ。丸広出荷組合が、六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の認定を受けたのは平成23年度。認定から半年で、今度はこの急速冷凍の施設整備への補助を申請し、テンポよく6次産業化を進めている。


10年先までを見越し、
若き就農者へのケアも忘れない

42B3.png「6次産業化で、旬の美味しい野菜を加工してストックしたい」と試行錯誤してきた杉本さん。農業経営コンサルタントのフォローを受け、オリジナルで発想豊かな組合を築きあげる。 広陵町の10年後の農業について、「丸広出荷組合だと、今の農家さんの半分は居ませんね……年齢的に不可能でしょう。」と杉本さんは話す。それでも、若くして参入する就農者は少なからず存在している。彼らへ期待を寄せているからこそ杉本さんは、5年後には6次産業化を成功させようとする高いモチベーションを崩さない。5年先、10年先、広陵町の農業にどのような選択枝が突きつけられようとも、さらなるステップを踏めるよう、経済面を含めた環境基盤を整える必要があるからだ。

 今、広陵町を代表する新たな商品となりつつある「やまと小町サラダ茄子」も、そのステップのひとつだ。当初は名前も育て方も分からず、試験的に植えてみた茄子だった。当初はツヤのない茄子、いわゆる“ぼけ茄子”が実るばかりだったが、枝先を切り落として新たな枝の伸長を待つと、今度はツヤのある見事な茄子が育った。調べてみたところ、生のままでも食べられる珍しい品種であることがわかった。広陵町を代表する新野菜として、杉本さんは本腰を入れ、2年程かけて広陵町の地に即した栽培方法を探った。結果、通常の茄子と比べ栽培の手間がかかるが、付加価値が高いことを実感。広陵町の農業がさらなる発展を遂げることを願いつつ、若き就農者に魅力を感じてもらえる野菜にしていこうと、「やまと小町サラダ茄子」の栽培を今後も推し進めていくという。


農家の安心のため「出口」を確保、
そしてステップアップへ

42B4.png事務所の壁に貼られた感想文は、農場見学に訪れた近隣の小学生たちから贈られたもの。地元農家の苦労と、収穫したばかりの野菜の美味しさを知れば、子供たちはもっと野菜が好きになるはず。 6次産業化では、新商品や加工品の開発に重きを置きがちであるが、最終的な販売先を事前に定めておくのは何よりも重要である。野菜で言えば八百屋やレストランといった販売先、いわゆる“出口”の確保は、丸広出荷組合では杉本さんが一手に引き受けている。「すべて僕が売ります。その点は心配しないでいい」と、関係する農家を安心させる言葉をかけられるのも、組合の代表としての責任感と営業活動での手応えがあるからだ。

 6次産業化の5カ年事業計画についても抜かりはない。現在は試作品開発の補助を申請しており、急速冷凍庫はすでに所有している社会福祉法人に協力を仰いでサンプルを制作中。最初から冷凍設備や加工場といったハードを全て揃えるのでなく、外部と協力して事前に試すことでリスクヘッジを行う。5カ年計画の最終年には、設立予定の新工場で大部分の野菜加工を処理しつつ、小ロット分については引き続き社会福祉法人に発注するつもりだ。そして今後、地元の中学校でも弁当の持参から給食に変更となる。給食センターへ冷凍野菜が卸せるようになった暁には、広陵の子供たちが地元の有機野菜を笑顔で頬張っていることだろう。

サポーター

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ここで働く仲間、外部でサポートしてくれる仲間がいて成り立っている

42SP.png農業経営コンサルタント、中小企業診断士の高橋太一郎さん。
6次産業化プランナーとして、杉本さんと二人三脚で六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の認定を進めてきた。31歳と若手ながら、6次産業化の案件でサポートを行っている農家や企業は30軒近くもあり、多忙な日々を送っている。杉本さんについて、「人を巻き込む魅力を持っていらっしゃる方で、それをうまく事業展開につなげていると思います。杉本さんが、私の存在を必要としてくれていることは、ありがたいことです。」と高橋さんは語る。





達人からのメッセージ

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どうしたら組合を自分たちで守っていけるか、というのが組合代表理事である私の課題。1次産業だけではなかなか儲からないから、組織ぐるみで6次産業化を決心しました。自分で加工まで手がけ足場を固めたら、儲けは後から付いてくるはず。そういう前向きな話をしている組織であれば、若い就農者が入ってきやすくなるでしょう。

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農事組合法人 丸広出荷組合の製品

001 冷凍カットほうれん草
食感や栄養を十分に残した冷凍カットほうれん草は、まだ試作品段階。今まで冷凍に不向きとされてきた軟弱野菜も、専用の急速冷凍庫を用いれば見事な状態で長期保存できる。また、葉や茎が固まらずにバラバラなままなので、適量を手にすることができるのも強みだ。給食のような大量調理のほか、一般家庭でも重宝しそうな商品だ。

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002 やまと小町サラダ茄子
やまと小町サラダ茄子は、4月の終わりごろから収穫が始まる。蜜蜂が飛び交うパッケージ・デザインは、受粉に蜜蜂を用いるなど有機農法を実践している事実をアピールしつつ、実は蜜蜂それぞれが生産農家の顔に似せてあるコミカルなもの。

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003 サラダ茄子ジャム
形が整っておらずそのまま出荷できなかったやまと小町サラダ茄子は、ジャムの原料へと転用。福祉法人へ茄子を渡してジャムを作ってもらい、それを組合が買い上げインターネット上や直売所にて販売する仕組みだ。茄子の加工品としての可能性を探る試みであり、採算は度外視だとか。

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