合同会社 まっかなほんと

達人名:対馬正人 Masato Tsushima
合同会社 まっかなほんと 代表
ジャンル:農業 Agriculture
地域:青森県弘前市 Hirosaki-shi Aomori

43A.pngスクリーンショット(2012-09-26 17.02.46).png

「生産物の価格は自分で決めたい」
その願いを、有機りんごと6次産業化がかなえる


1965年、青森生まれ。ホテルマン、地方公務員、病院給食センター所長など様々な職を経るうち、不思議なことに毎晩りんごの夢を見るように。そこで2002年、親兄弟に反対されながらも実家のりんご園を継ぎ農家へ転身を遂げた。虫の付きやすいりんごは無農薬栽培がほぼ不可能とされてきたが、虫よけには食酢を用い、摘果はすべて手作業で行うなど、独自の手法で無農薬りんご栽培を成功させ「対馬式自然循環農法」として確立。2010年には農薬・化学肥料を不使用の農産物として青森県特別栽培農産物認証制度で第1号の認証を受ける。現在、皇室御献上品のりんごジュースをはじめとする加工品を多々製造し、同時に生産から流通までを一手に行うべく設備を整えている真っ最中だ。
(2013年1月18日 取材・撮影/RPI)

合同会社 まっかなほんと

インタビュー

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身内の反対を押し切り転職、
サラリーマンからりんご農家へ

43B1.png雪深い冬のりんご農園でも、剪定作業などノルマは山積みだ。だが「農家はサラリーマンと違って自由です。1日16時間、20時間働いてもいいのですから」と対馬さんはポジティブに話す。 りんご産地として名高い青森県弘前市。その中で、他の畑とはあきらかに風景の異なる一画がある。対馬正人さんは、化学物質を一切用いない厳格な自然農法を実践する、全国でも数少ないりんご農家のひとり。年間300日以上は畑へ出かけ、冬は雪に埋もれながら剪定作業にいそしむ。初夏ともなれば表土が雑草で覆われた中を、緑の葉を濃く茂らせるりんごの木が立ち並ぶが、彼の畑では雑草をそのまま残し、また他の農家が行っている除葉をすることもない。その代わり、果実に光が当たるよう、そっと葉を持ち上げ位置を変えてやる。

 りんご農家に生まれた対馬さんは、家を出てから様々な職に就いたが、不思議なことに毎晩りんごの夢を見るようになったのがきっかけで、実家の畑を継ごうと決心。当時38歳、収入の安定した会社員であり妻も幼い子供もいる彼の転職には、親兄弟そろって反対したという。りんごを市場に卸すと、価格は競りで決まるため、自分で価格を決めることができないし、天候のリスクも全面的に負わなければならない。しかし、「皆に『やったら』と言われたら面白味がない」と、逆に火がついた。

完全無農薬の自然農法で、
人に誇れるりんご作りへ

43B2.pngりんごは化学肥料を使うと簡単に甘くなる。農薬や化学物質を一切使わず、土壌にある栄養分だけで果実に自然な甘みを含ませていくのが、対馬さんのやり方だ。 ちょうどそのころ、自然農法に興味を抱くきっかけとなる出来事が起こった。対馬さんが農家を志すほぼ同時期に、病で倒れた父親を病院へ見舞い、自園のりんごを同じ病棟の患者へおすそ分けしたが、その時にりんごを1口かじりし、「おいしかったよ」と言い残して亡くなっていく人の姿に心が揺さぶられたのだ。「何のためにりんごを作るのか?」との命題を突きつけられたと感じた対馬さんは、「元気、エネルギーになるような、そして自分の大切な人に自信を持って提供できる農産物を作る」と答えを導き出した。その手段として選んだのが、完全無農薬の自然農法。通常、化学肥料を使わないと実が極小サイズとなり、採算性は限りなく低い。さらに、対馬さんには知識と経験が足りない。だが、先達より伝授された技術、本や雑誌で得た情報、自らのひらめきなどあらゆるものを織り交ぜ、奇跡的にも1年目から見事な大玉りんごを実らせた。

 味と栄養価を最重要視し、見た目は二番目。そう考え、2009年より完全無農薬の自然農法栽培のりんごを収穫しを続ける対馬さんだが、やはり農薬を用いる通常の栽培法よりは傷のついた果実が多い。上空には鷲が舞い、りんごを狙う小動物や鳥をある程度捕食してはくれるものの、それでもりんごへの被害を完全には避けられないのだ。


「加工用りんごを高く売るには、
自分で加工する」という発想

43B3.pngほんの少し傷付いたものや、葉の影に位置して色ムラの出たものなどは加工用にまわす。味や質は生食用と同じなので、加工品のクオリティも自ずと高くなる。 消費者へそのまま渡る生果のりんごは、傷のないものを選り分ける。そして、少しでも傷や傷みのあるものは加工品用として捌くのだが、加工用のりんごはそのまま販売しても売れば生果用と比べて価格が1/6程度まで下がってしまう。「なら、自分で加工をし、加工賃を引いても同等以上の収益を上げられるような仕組みを構築できないだろうか」との発想へ至るのは、実に自然な経緯だ。農薬を使わないりんごの加工品は、生果と同様、全国に60万人ほどいるとされる化学物質過敏症で苦しむ人々にも支持される。必ず需要はある。自然農法のりんごの農家として一定の社会的評価を得てきた対馬さんの次の目標が、徐々に定まりつつあった。

 まずは個人消費用に作っていた無農薬りんごジュースをインターネット販売と通信販売で売り始め、次にジュースの搾りかすからペクチンを含むサプリメントを製造。しかし、果たして生産から流通まで自分ひとりの力でやれるのか、不安はぬぐえなかった。会社員時代の経験もあり、人脈作りや企業との折衝は何とかこなせるとして、事業を広げる上で行政とのやりとりは避けて通れない。とはいえ、いかんせん馴染みがない。そこで連絡をとったのが6次産業化プランナーの杉山孝彦さんだった。


やりたいビジネスが
6次産業化そのものだと気付かされて

43B4.pngお互い波長が合うと語る対馬さんと杉山さんは、「戦友」のような関係とか。6次産業化の流れに乗るには広く俯瞰する力、知識、そして人との繋がりがカギであることを、対馬さんたちは今、深く実感している。 青森の農業に通じている杉山さんは、商品開発から資金調達まであらゆるジャンルをコーディネートしてきた猛者だ。彼は、対馬さんの思い描く事業展開をじっくりと聞き出した。すると、当初は6次産業化との意識を持っていなかった対馬さんも、「自分がやろうと思っていたことが、6次産業化と一致していた」事実に気付かされる。ここから、六次産業化・地産地消法に基づく認定申請へ向け、2人はタッグを組むこととなった。

 当時対馬さんが一番困っていたのは、りんごを長期保存できる冷蔵庫がないこと。冬場は零下の気温が長引く弘前で、積みあげたりんごの一部は毎年凍りついて使い物にならない。選果作業を行う倉庫の建てなおしも課題だった。自分で加工して販売する6次産業化にはどうしても必要な施設だったが、「事業計画をしっかり作成すれば大丈夫、と杉山さんに教えていただきました。」と対馬さん。と同時に杉山さん側は、対馬さんが独自に編み出し実践している“対馬式自然循環農法”そのものを認定に含めようと尽力を重ねた。2012年11月、ついに農法も含めて六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の認定を受け、スタートラインへ。施設の整備へも無事に国からの支援を得、対馬さんは理想のりんご事業を今後着実に進めていく予定だ。

サポーター

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ここで働く仲間、外部でサポートしてくれる仲間がいて成り立っている

43C1.png合同会社チーム スシー代表CEOの杉山孝彦さん。
中央官庁に勤務時、民間の立場から産業を支える人材が不足していると痛感。48歳で青森へ戻り、起業・創業支援のコンサルタントとして奔走している。法人化を考えていた対馬さんに、株式会社でなく低資金、短時間で設立できる合同会社を勧めるなど、相手に適した具体案を提示できるのが強み。農業の6次産業化にあたり、「環境保全、エネルギー問題などにまつわる仕掛けや知恵を出せば、まだ面白いことができます」と杉山さんは訴える。

達人からのメッセージ

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あらゆる食材のなかで、私はりんごしか作っていません。でも、そのりんごで何が提供できるか、と常にアンテナを張り巡らせています。りんご園の経営が「生活のため」だけだと、さみしいものです。農薬を一切使用しない農業とは、自然との共存でもあります。りんごへの消費者のニーズや、環境保全までを見通しつつ、私は6次産業化を選択しました。

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合同会社 まっかなほんとの製品

001 農薬不使用 りんごジュース
「りんごジュースの格を上げたい」との目標を掲げて作られたジュース。農薬不使用なので、化学物質過敏症の人にも安心して飲んでもらえると好評だ。まっかなほんとの加工品はどれも、インターネット販売や通信販売にて入手可能。

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002 神々の林檎
特選りんごは通常、色や形のいいものを指すが、対馬さんの場合は日当たりのよい樹の上部に実る、味わい深いもの。その特選りんごのみを用いた贅沢なジュースが「神々の林檎」の名で販売される。2012年11月、皇室御献上品の栄誉を賜った。

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003 まっかなほんとのアップルペクチン
ジュース用にりんごを搾ったあとの残渣物から何かできないか、との考えで生み出されたのが、このサプリメント。市の加工品アイデア公募に応募したところ見事採用され、とんとん拍子に製品化が進んだ。当初は「アップルファイバー」の名に決まりかけていたが、食物繊維だけでなく、医学界でも注目を集めるペクチンを豊富に含むことがわかり、急きょ「アップルペクチン」へと名称を変更した。

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