中島アグリサービス

達人名:松田 武 Takashi Matsuda
中島アグリサービス(NAS)代表
ジャンル:農業 Agriculture
地域:石川県七尾市 Nanao-City Ishikawa

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栄養素が高くホロ苦い地場野菜「中島菜」で勝負!
乾燥粉末から始まる二次&三次産業、そして6次産業化への道

1955年、石川県に生まれた松田さん。今でこそ能登を代表する野菜「中島菜」の生産者として有名だが、実は商船学校の出身。卒業後10代から船の上で技術者として活躍。石油タンカーに乗ってイラクやクウェートへと赴く海の男だった。その後はミシン会社の営業職、食品卸会社、小売店、スーパーマーケットと職を転じていった。結婚を機に七尾市へ移住し、縁あって44歳で農業の世界へ。農作業の受託事業で規模を拡大し、水稲、赤ネギ、中島菜の栽培や販売を模索。なかでも中島菜は、安価な手段で乾燥粉末に加工することが可能で、6次産業化を促進する貴重な資源となっていった。「これから将来、農家にとって加工は避けて通れない」と唱える松田さん。海の男は陸の男となり、農業で、中島菜で6次産業化を展開していく。
(2013年1月30日 取材・撮影/RPI)

■中島アグリサービス
http://www.nakajimana.jp/

インタビュー

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この地でしか育たない中島菜は、
雪にも耐える生命力の強い野菜

46B1.png従来、地元では中島蕪と呼ばれていたが、中島町が商標登録を行った際、「蕪ができないのに蕪ではおかしい」との説が出て中島菜へと名称変更。今でも年配者は中島蕪の名に馴染みがあるとか。 「中島菜」は、石川県の能登半島に位置する七尾市中島町で育つことから名付けられた。生命力の強い葉物で、ビタミンC、ルチン、葉酸を豊富に含み、路地物になると葉がトゲトゲしく、食すと舌上に苦味ジンワリ残る。昔から、肥沃な土地でしか育たないと言い伝えられており、山から養分と清水を運ぶ、幾つもの川が七尾市を通り海へ流れこんでいることから、この地形の利によって「中島菜」は中島町の青菜であり続けてきた。

 さらに中島菜は雪に強い。降り積もる雪の下でも枯れずに、春をじっと待つ。雪解けの瞬間から一気に成長する中島菜は、青菜の少ない2月下旬や3月上旬に供給できるため重宝される。今は、通年供給するためビニールハウスでも栽培されているが、ハウス栽培の中島菜はアクが減ってまろやかな味になる。それはそれで、中島菜を食べ慣れない人の口には合うものの、地元では、ホロ苦さが残る路地物の中島菜を求める人が多いという。「中島菜は品種改良を行っていない原種なので、すぐ他の植物と仲良くなる欠点があります。キャベツやブロッコリーと交配しやすいので、種を守るのが大変です」と語る松田武さん。彼こそ、中島菜の加工品を次々と手がける中島菜のプロフェッショナルである。

機械化と離農者増加の波に乗って、
気がつけば海の男が農業へ

46B2.png七尾市の田畑は、山と海のちょうど中間にある。「作る人、売る人、買う人それぞれの関係と同じように、山、田畑、海、すべてが良くないと」と言う松田さんは、ビオトープ設置など環境への配慮も欠かさない。 農業との接点は実家に小さな畑があった程度だったという松田さんは、中学卒業後、商船学校に入り海の世界へ。アラブから原油を運ぶタンカーの中で長期間過ごす船乗り生活を送っていた。結婚をして妻の家に婿に入ったのを機に七尾市へ移住。それまでに様々な職業を経験してきた。船から降りてからは、食品の卸会社に勤務、引き抜かれた先の小売店で働いていた時期は市場へ出入りし、次に移ったスーパーマーケットでは仕入れ担当と流通をつぶさに見てきた。その他、ミシン会社の営業、発電所勤務、と履歴書がいっぱいになりそうなくらいの職歴だ。

 発電所に勤務しながら30アールほどの水稲を手がけてはいたが、その当時は機械化の波が押し寄せてきた頃。手作業から、耕運機やトラクターを利用した畑仕事へ移り変わろうとしていた。とはいえ、全ての農家が自前で機械を購入するには、費用負担が大きくのしかかる。そこで松田さんは機械利用組合を作り、皆で機械を共同利用しようと思いつく。しかし松田さんの思いとは反対に、離農者が増え、耕作されない田畑が増えていくことに…。それらの土地の農作業すべてを組合で受託し取り仕切るとなると、専業に徹するしかない。松田さんは、農業の人へと転身した。


中島菜の人気上昇とともに、
安定供給できる乾燥粉末にニーズが

46B3.pngほとんど自社畑を持たない松田さんだが、作業場も借り物。その昔、機織場であった建物を加工場に再利用させてもらっている。冬の閑散期、中では赤ネギの出荷作業が行われていた。 七尾市の農業は水稲栽培が主力。専業農家になりたての松田さんは水稲のほか、ネギを栽培していた。中島菜の栽培を始めるきっかけは何だったのだろう?「実は水稲栽培の人員確保のためです。『田んぼの忙しい時期だけ手伝いに来てください』というお願いの仕方では、人を集めるのが難しいのです。一年を通じて仕事ができる環境を作るために、春の初頭に収穫できる中島菜の栽培を始めました。」と松田さんは説明してくれた。ちょうどそこへ、健康ブームの襲来とともに中島菜の栄養成分に世間の注目が集まった。すでに一定量の中島菜を扱っていた松田さんにとって、それは最大の商機の訪れだった。

 人気が出てくると、一年を通して安定供給が求められるようになる。中島菜は年に2回収穫できるとはいえ、生鮮食品は短期勝負だ。そこで、たまたま松田さんは、実家に置いてあったシイタケ乾燥機に目を向けた。中古の機械を利用すれば、安価に乾燥野菜を造ることができる。乾燥してもビタミン類の栄養成分はそのまま残り、緑色の天然色素も目に鮮やかで、保存期間は飛躍的にあがる。粉末状にすれば、使用用途が無限に広がる。そして、加工品の袋詰め作業などは閑散期の仕事にもなる。商品の供給、雇用、収入、全ての安定のために、松田さんは中古のシイタケ乾燥機をかき集め、中島菜の乾燥粉末製造を展開していった。


切磋琢磨できるライバル歓迎、
そして6次産業化で事業拡大へ

46B4.png七尾市の近海にはカキの養殖場があるおかげで、容易に畑にカキの殻を撒くことができ、酸性土壌をアルカリ性へ変えられる。観光施設に地元名産のカキ焼きを売りたいとのプランも松田さんは持っている。 中島菜の加工を極めたプロが抱える悩みは、ライバルの不在だ。中島菜の生産、加工、販売をいち早く展開していった強みが、独占企業ならではの苦悩に変わる。「中島菜の乾燥粉末の全体量が底上げされないことには、大手商社にも相手にされず、デパートに商品が並ぶチャンスも失ってしまいます。一人でやっていると、相談先も、競争相手も、いざというときに助け合う仲間もいない。競争相手がいなければ産業は伸びません。」と、ライバルの登場に期待を寄せる。

 2004年から中島菜の乾燥粉末を用いて作られた数々の加工品、飴やクッキーといったお菓子から、うどんや味噌、塩など、中島菜の粉末を用いた新商品は、近隣の道の駅や東京の飲食店など販路を広げている。だが、松田さんは「中島菜は多機能性野菜ではありますが、その特徴をまだ上手く使い切ってないし、発信もできていません。」と課題を打ち明けた。2012年に六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の認定を受けたのは、加工場、直売所、観光施設の確保に動きたかったから。「直売所を造るには数千万円の資金が必要です。ただ、大手企業とのコラボレーションといった見通しがあれば可能です。」と、これからの6次産業化への展望を語ってくれた。

サポーター

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ここで働く仲間、外部でサポートしてくれる仲間がいて成り立っている

46SP.pngなかじま菜のお店 咲ふらん(さふらん)の國田より子さん。
お店では、中島菜入り手作りシフォンケーキを1カット260円で提供している。ケーキの材料は、卵、牛乳、小麦粉、砂糖少々、そして中島菜の乾燥粉末のみ。松田さんとは10年来の知り合いで、中島菜入りの商品も入り口脇で多々販売している。

達人からのメッセージ

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6次産業化は絶対に必要です。農家にとって加工は避けて通れない道。米や野菜を生のまま出荷するだけでは経営が長続きしませんし、続いたとしても疲弊します。自分なりの6次産業化を考え、新しいものに手を出してほしい。個人でなく、組合や法人で6次産業化を進めるのも方法のひとつです。今すぐに動けないとしても、情報は常に集め、何かあった時、チャンスを感じたら、すぐに動けるようにしたほうがいいと思います。

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中島アグリサービスの製品

001 翡翠飴 中島菜入り
中島菜の乾燥粉末を用い、最初に作られた商品。中島菜入りを謳ってはいるが、“まず、あくまで飴としておいしいものでなくてはいけない”とのポリシーで開発された。このポリシーは、他の商品開発の際にも念頭に置かれている。

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002 能登野菜 中島菜 手延べうどん
能登の地元では冠婚葬祭の進物用に重宝されている、中島菜入りのうどん。近所の和菓子屋では、お菓子とうどんのセット販売も行われていた。最初はギフトで受け取った人が、味に感激して次は自分でオーダーする例も少なくないとか。

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003 能登野菜 中島菜 手延べそうめん
細いそうめんの舌触りを活かせるよう、微細な中島菜の粉末を加工業者に渡し、製麺作りを委託、完成させた商品。中島菜の乾燥粉末は他の青菜に比べて割高であり、加工品の価格もそれなりに上がってしまうが、血圧が気になる人、健康への意識が高い人を中心に人気が高い。

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004 中島菜 塩
抹茶塩との差別化を図るため、配合を調整し、あえて淡い色合いに抑えた。中島菜の粉末をたくさん入れれば、一商品あたりの消費量は増えるが、総合的に考えた場合、少量の粉末を入れてたくさん商品が売れても同じこと。であれば、商品としての魅力に優れている後者を選ぶのが松田さん流だ。

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005 中島菜 粉
中島菜の乾燥粉末は、中島アグリサービスが展開する加工食品の源。粉末の状態のままでも、主に業務用として飲食店や旅館に向けて販売されている。材料に混ぜ込んでシフォンケーキやクッキーを作る、ミルクに混ぜて飲む、卵焼きに入れる、抹茶の代わりに溶かして飲む、などアレンジ自在だ。

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