有限会社 栄物産

達人名:藤嶋 佐久榮 Fujishima Sakue
有限会社栄物産 代表取締役
ジャンル:農業 Agriculture
地域:秋田県北秋田市 Kitaakita-City Akita

48A.pngスクリーンショット(2012-09-26 17.02.46).png

カリフォルニアで会得した経営センスが光る!
山菜と妻物に加工品がプラス、ますます新しい農の形へ。

1944年、秋田生まれ。冬は雪に閉ざされる開拓地で育ち、17歳から他県へ出稼ぎに行く生活を送った。人生を変えたのは、出稼ぎ先の紡績工場にて海外留学を目指し資金を貯める同僚との出会いだ。日本の農業を変えるため自分もアメリカへ行って見聞を広めようと決心し、26歳のときに農業研修生としてカリフォルニアへの渡航を実現させた。帰国後は、ポニーをはじめとする動物と触れ合え、郷土料理なども楽しめる観光農園を全国に先駆けて整備。しかし雪深い冬場は集客が見込めず、あらためて農業に専念することに。冬場も働くことのできるスタイルを思案した結果、大型ハウスを導入。今では50棟ほどとなったハウス内で単価の高い山菜や妻物を中心に栽培を続けると同時に、山菜や野菜を使った加工品作りと販売ルート開拓で、新規事業を展開中だ。
(2013年3月1日 取材・撮影/RPI)

有限会社 栄物産

インタビュー

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昔から出稼ぎが当たり前だった地域で、
冬の雇用を増やすためビニールハウス敷設へ。

48B1.png内部が一定の温度に保たれたビニールハウス群。「冬は雪かき作業が欠かせず、暖房用の灯油代もかさむが、栽培品目によっては通年供給が可能になった」と藤嶋さんは語る。 大型ビニールハウスの中には、さらにビニールをかけられた畝が連なり、その環境がこごみの成長を促進している。はたまた別のビニールハウス内では、大雪の積もる外の風景とはうらはらに、食用の金魚草が咲き誇る。独自に編み出した栽培方法や、付加価値の高い農産物の選び方など、藤嶋佐久榮さんのビニールハウスからは彼の見識を伺い知ることができる。秋田県北秋田市は、冬になれば雪で農業ができず、出稼ぎに行くのが当たり前だった土地柄だ。藤嶋さん自身、17歳から出稼ぎで故郷を離れた経験を持つ。「どうすれば出稼ぎに行かずに済むか、冬の雪国で仕事ができるか、と考えまして、最初は山菜に着目しました。」と藤嶋さんは当時を振り返る。 

 こごみを扱い始めたのは今から20年以上も前。バブル景気で盛り上がった時代、真冬に出荷すれば1パックあたり800~900円の高値で取引されたという。バブルがはじけ、こごみの単価も下がったが、そのとき藤嶋さんは和食に使われる食材に強い関心を抱いた。「日本人がいなくならないうちは和食が存在し続けるでしょうし、和食用の素材はほとんどが国産。つまり、その素材の多くが輸入品との競争がないことが強みであり、安定した供給ができるということから、妻物に目をつけたのです。」と和食材に惹かれた理由を藤嶋さんは明かした。

「日本の農を変えるため」と意気込み、
アメリカへの農業研修生に志願

48B2.png妻物のひとつである金魚草が育つビニールハウス内。食用のため、切花用より丈は低い。小さな花の部分だけつまみ収穫していく。 50棟近い大型ビニールハウスを管理し、山菜や妻物の栽培を扱う藤嶋さん。この大規模展開の源となっているのが、アメリカでの研修体験だ。藤嶋さんが出稼ぎ先の紡績工場で働いていた時、ある女工さんに「どうしてここで働いているのか」と何気なく訊ねたところ、彼女は「外国へ留学するために、ここで働いてお金を貯めているのです。」とこう答えたという。外国という言葉を口にすることすらなかった藤嶋さんは、彼女の発言に触発された。「その日暮らしの生活を送るのではなく、アメリカへ留学して人生を変えたい。
そんな新しい目標を、いつしか藤嶋さんも掲げるようになったのだ。

 留学のチャンスを得た時のことを藤嶋さんは語ってくれた。「当時はアメリカへの片道だけで80万円かかり、旅費を工面する手立ても何もありませんでした。それでもアメリカに行きたいと周囲に訴え続けていたところ、公務員の友人が、国費で農業研修生としてアメリカへ行ける制度を教えてくれたのです。受験者は農業大学生といったエリートばかりなうえ、試験は、英語や作文。あまりの語学力の無さに、面接時『行けば後悔する』とまで言われましたが、『日本の農業は今のままではダメになります。アメリカで農業を学んで変えなければ。』と強く訴えたのです。」
その結果、熱意が伝わり見事合格、藤嶋さんはカリフォルニアで1年間を過ごすことができたのだ。


市場でのニーズと作付け状況を見極め、
栽培品目を決定 主力は山菜のこごみ

48B3.png収穫したこごみは徹底的に洗う。入り組んだ形状に泥が入り込むと、洗い流すのにひと苦労。冬場は作業場も水温も低く、体力勝負だ。 習うより慣れろとばかり英語は現地でマスター、さらに合理的な農場経営センスを会得し、カリフォルニアより帰国した藤嶋さん。動物好きだったこともあり、最初はポニーやサル、ワニなどを飼育して集客を図りつつ、地元の比内地鶏を使った料理も提供するという観光農園事業を立ち上げた。だが、冬になれば大雪が降り、当然のことながら客は来ない。そこで、10年営業を続けた観光農園は整理し、ビニールハウスを活用した農業へと転換した。年間を通して一定の収入が確保でき、経営が安定したことから、2004年には有限会社栄物産を設立。正社員は10名、他にパートや内職などで多くの人々が携わり、地域の雇用促進にも貢献している。

 藤嶋さんの手がけるこごみの生産量は日本有数である。そのほか、大葉や小菊、木の芽といった妻物も藤嶋さんの得意分野だ。和食店向けの食材に力を入れてきたのが、ここのところフランスやイタリア料理店のシェフからの引き合いが増えてきたという。逆に、藤嶋さんは彼らから要望を聞きだして西洋野菜の栽培にもチャレンジ。そういった栽培品目の選定について、「消費者や中央の市場では何が求められているのか、そして地方では何が採れるのか。マーケティングをしたうえで、作付け状況を考えています。」と藤嶋さんは解説してくれた。


化粧品からレトルト食品まで、
多品目の加工品をインターネット上で販売開始

48B4.pngビニールハウスの中で、さらにシートをかぶせて育てられるこごみ。株は北海道の森林から運ばれてきた天然物だ。1株から10本程度のこごみが収穫できる。 藤嶋さんには、冷涼な秋田の気候に即した農産物や栽培方法を選び取る力がある。そうして地方ならではの強みを見出しながら、またカリフォルニアで身につけたスケールの大きさも見せ付ける。「妻物でモミジを扱おうと決めたときは、一気に1000本を植えました。」
大規模農業に慣れない人たちは、その行為に驚くばかりだったとか。彼の決断力は、新製品開発にも発揮される。「大葉などを収穫するとアレルギーになり、肌がやられやすい。従業員がかわいそうだったので、何とかできないかというのと、ちょうどこごみの抗酸化成分が明らかになったことから、ならばと、こごみのクリームと石鹸を作りました。これが加工のはじまりです。」と、藤嶋さんは6次産業化へのきっかけを語った。

 六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の認定を受けたのは、平成24年。こごみの乾燥粉末を使った化粧品や食品、日本では希少なイタリアのトマト「サンマルツァーノ」を贅沢に使用したレトルト食品など、加工品はすでに揃い、今後は販売に力を入れていく段階だ。「今日まで、山菜や妻物の販売ルートはほぼ私自身で開拓し、全国40社と直接取引を行ってきました。一般消費者に向けてはインターネット販売が主流なので、これまでとは勝手が違うのですが、2013年2月に自社のウェブサイトを開設しました。すでにオーダーが入り始め、順調なスタートを切っています。」と藤嶋さん。今後も新しい挑戦は続いていく。

サポーター

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ここで働く仲間、外部でサポートしてくれる仲間がいて成り立っている

48C1.png有限会社栄物産の谷内山芳子さん。
事務方を取り仕切る統括マネージャー。「加工品工場を立ち上げた直後に東日本大震災が起こり、資金繰りに苦労しました。」と、谷内山さんは東北ならではの苦労話も打ち明けてくれた。今後は旬の食材で限定品を作り、“今年はこれだけ”と逆提案するような商品を作りたい、とブランディングにも心を配る。


48C2.png有限会社栄物産の山田久美子さん(左)。
藤嶋さんの次女。子供を持つ一主婦の目線から、無添加の加工品「KUMIKO」シリーズを構築中。父の作る野菜については「本当においしい。他で買ったものと味が違うんです。チコリをはじめ父は見たこともないものを作る人なので、興味が沸いて楽しい。そのような野菜を使って、KUMIKOブランドでいろいろ商品を作っていければ。」と語る。

48C3.pngほっと駅かたるべの松井栄子さん。
郷土食を皆に知ってもらおうという使命感を持ち、地元の人や旅人をあたたかく迎える飲食店を営む。藤嶋さんから渡された野菜は、すぐに客の定食の1品に。今年から登場したチコリは、藤嶋さんのお勧めどおり酢味噌を添えて提供。

達人からのメッセージ

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いろんなことにチャレンジするのは小さい頃から慣れていました。農業が進んでいたアメリカに行き、将来のヴィジョンが見えて勉強になりましたが、後は日本で失敗の繰り返し。栽培技術を誰も教えてくれませんでしたから。しかし、新しいチャレンジなら失敗して当たり前だし、失敗は必要。やり続けるか、鞍替えするか、といった判断も必要。そのうち、失敗から学んだことで応用問題まで解けるようになりますよ。

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有限会社 栄物産の製品

001 こごみ
栄物産の主力商品。ビニールハウス内で収穫後、冷水でよく洗浄し、丈を切りそろえてパッキングされる。こごみの乾燥パウダーから派生した各加工品を買い求めた人が、またこちらの商品を求めるという、加工品と生鮮品との売上相乗効果もあるとか。

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002 食彩花
食用の金魚草。摘まれた花々は内職の人たちに渡され、一つひとつパックに並べられ納品となる。「一般企業で内職という職があるならば、農業でも」という藤嶋さんの考えにより、子供のいる人や車を持たない人には内職という形で仕事を発注。これも、内職に支えられた商品だ。

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003 右 具だくさんの野菜リゾット / 左 具だくさんの野菜スープ
新たに創設された「KUMIKO」ブランドの商品。無添加、無着色を基本とし、素材の味を活かしつつ体に優しい食を提案していくラインナップだ。リゾットとスープのどちらにも濃厚な味のイタリアン・トマト「サンマルツァーノ」を使用し、他の野菜も北秋田市産にこだわる。

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004 ビックルス
旬の野菜が彩りよく詰め込まれて、思わずビックリするピクルス。こごみやアカシアの花など時期によって中身は変わるが、どれも造形的に趣があり、キッチンに置いておくだけでも絵になると好評だ。

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005 トマトソース
本場イタリアのトマト、サンマルツァーノに加えて、自社のハーブやベルギー・エシャロットを使用。ほかにも比内地鶏のフォン(出汁)、男鹿の塩、しょっつる、と秋田産の食材にこだわり、ことこと煮詰めて完成させたトマトソースだ。辛味の違いで3種用意し、プレーンなプルミエソースから、アラビアータ、サルサ・ポモドーロ、と順に辛さが増す。

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