株式会社 萬秀フルーツ

達人名:大﨑 秀樹  Hideki Osaki
    株式会社 萬秀フルーツ 代表取締役
ジャンル:農業 Agriculture
地域:愛知県知多郡  Chita-gun Aichi

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逆境に追い込まれたミカン栽培から国産のグレープフルーツ栽培に挑戦!
試行錯誤から得た付加価値を、新たな地域ブランドとしても育てていく

愛知県知多郡出身。大学を卒業してから、家業のミカン栽培に関わるようになる。2008年に法人を設立。社名は、初代(父)・万助さんと、二代目(息子)・秀樹さんの名前から一字ずつ取ってつけられた。温暖な知多半島は日照時間も長く、温室ミカンの栽培が盛んで、「みはまっこ」というブランドミカンでも有名な地域。しかし、最近では消費が低迷。さらに追い打ちをかけるかのように、萬秀フルーツのミカンは、購入した苗木から伝染病をもらい、窮地に追い込まれてしまう。そこで、二代目の秀樹さんが目をつけたのが、国産では珍しいグレープフルーツの栽培。その希少さゆえ課題も多く、試行錯誤を続けること約8年。2012年にようやく出荷までこぎつけた。そして、六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画にも認定され、ジャムなどの加工品作りにも取り組む。若き二代目は、「グレープフルーツを知多半島の新たな地域ブランドとしても育てていきたい」と、これからのビジョンについても話してくれた。
(2013年9月17日 取材・撮影/RPI)

株式会社 萬秀フルーツ

インタビュー

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窮地に追い込まれたミカン栽培から、国産グレープフルーツ栽培への転換

48_detail.jpgスタッフは、秀樹さんの両親と奥様の家族4人と従業員2人。6人で、115a(約3500坪)の温室で栽培されている、国産グレープフルーツ等の手入れ、加工品の製造・販売などを行っている。 萬秀フルーツの農業の歴史は、戦前の養蚕から始まる。以降、養豚、路地野菜の栽培などを行い、1984年あたりから温室ミカンの栽培に取り組み、これが主力品となっていく。初代の大﨑万助さんは、知多半島のブランドミカン「みはまっこ」を育て上げたメンバーの一人でもあったそうだ。その頃の秀樹さんは、大学で環境ISOを学び、様々な農業法人との出会いから、農業への興味を深めていた。卒業後、しばらくしてから家業を手伝うようになり、ミカン消費の低迷、伝染病といった苦境に立たされ、以前から研究を行っていたグレープフルーツ栽培への転換を図る。

「既存のハウスを活用できて、収穫期が春であることから、ミカン栽培よりもハウスの暖房費を抑えることができます。なにより、国産のグレープフルーツは希少でしたから。」と秀樹さんが話す。また、別の思いもあった。「外国産のグレープフルーツには、ポストハーベストとして、防カビ剤や防腐剤等の処理がされ、手が真っ白になるくらいのワックス処理が行われています。生グレープフルーツサワーを作るときに、手に付いた白いベタッとしたものを見たときに『何じゃこりゃ!?』と思いましたね。安心できるグレープフルーツを日本で作ってみたいという思いが沸き、試作・研究を始めていました。」と話す。

8年を擁し試行錯誤の先に得られた、「国産・安全」という付加価値

49_detail.jpgたわわに実った、萬秀フルーツのグレープフルーツ! 枝に付いた状態で完熟させるので、果汁が多く、爽やかな香りと酸味を楽しめるのが特徴。 日本で販売されているグレープフルーツのほとんどは海外のもの。100%に近いといってもいい。グレープフルーツの生産大国、アメリカ・フロリダの温暖な亜熱帯気候を条件とするならば、年間の積算温度の差1000度以上をどう埋めていくか、そこに安全を重視した栽培方法や、希少価値に期待できる価格設定など、コストも加味した最適な栽培方法を模索しなければならない。試作・研究は2004年ぐらいから始められ、最初は30本の苗からスタート。「現金化するまで3~4年かかるのですが、最初にできた実はレモンの3倍ぐらい酸っぱく、食べられたものではなかったですね。何度も廃棄を経験しました。」と話す、秀樹さん。

 そして2012年、長年の苦労が実り、ようやく初出荷へとこぎつけた。価格はハウスミカンを上回る1kgあたり1000円で、収穫した1トンをすべて売り切った。2013年には収穫量を5トンに拡大。グレープフルーツの種類も、一般的にスーパーで売られている白い実のマーシュや、赤い実のスタールビーはじめ、ほのかなピンク色のルビーレッド、原種系で香りのよいダンカン、そして、オロブロンコと5種類にまで広がった。オロブロンコは、イスラエル商標のスイーティーと同じ種類になる。

買ってもらうよりも、まずは地元の人たちに知ってもらうこと

32_large.jpg安心・安全なグレープフルーツ作りでは、土壌作りにもこだわる大﨑秀樹さん。有機物を中心にした配合肥料と自家製堆肥を中心に、化学肥料はできる限り入れない。 販売方法は、農園での直売やインターネットを利用した直接販売が中心。「買ってくださいというより、知ってもらう努力をしています。まずは地元・知多半島の人たちや愛知の皆さんに知ってもらいたいですね。」と話す秀樹さん。地元で開催されているマルシェやイベントなどにも積極的に参加している様子が、フェイスブックからもうかがえる。減農薬栽培のグレープフルーツには、秀樹さんのこだわりでもあった、防カビ剤・防腐剤が使われておらず、ワックス処理も一切されていない。試行錯誤の繰り返しは、ジャムやピールに加工しても安心という、大きな付加価値を得て、大手百貨店などからも引き合いがくるようになった。

 ジャム作りを始める中、2013年に六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画にも認定され、秀樹さんは、加工品の幅を広げていきたいと考えていた。そんな中、地元の若手経営者の集まりで知り合ったのが、知多半島では有名な活魚料理の老舗「まるは食堂」の社長・坂野豊和さんだった。秀樹さんが、アイス・シャーベットの製造メーカー「知多セントラルシステムズ」と進めていた、グレープフルーツのシャーベットを、まるは食堂の定食に添えるデザートとして、また売店の商品として、まとまった量を仕入れてくれることになった。地元の人に知ってもらいたい、という秀樹さんの願いと一致する、ありがたい話だった。

知多半島の新たな地域ブランドとして育てていきたい

5_large.jpgグレープフルーツ生産者を増やし、地域ブランドにしていきたいと話す二代目。ファンからの要望にも応えるべく、期間限定の出荷から通年出荷への模索も続けている。 本格的な出荷を始めて今年で2年目。来年~再来年にかけて、ミカン栽培からの切り替えも進めていき、萬秀フルーツでは、グレープフルーツの栽培量も増やしていく予定だ。その傍らには、ブンタンやライチなどの栽培も。この他にも様々な柑橘の研究を進めているのだという。まだ始まったばかりの国産グレープフルーツの栽培だが、これからのことについて「国産のグレープフルーツを通して、教育、イベント、エンターテイメントという展開をしていきたいですね。」と秀樹さんは話す。

 現在、萬秀フルーツでは、30組限定でオーナー制度を導入している。「生鮮は、東京などに出荷して、地元では観光としての役割を果たしていけたらと考えています。」と話す、秀樹さん。遠くは東京からの申し込みもあった、オーナー制度の導入は、その足掛かりのようだ。続けて、「若い人たちや子供たちの間で、味覚の劣化が起こっていると思うんです。酸っぱい柑橘類に対しては、特に敬遠される傾向があります。国産のグレープフルーツを食べてもらい、“実は果物は美味しいものなんだよ”と教えてあげたい。観光農園のことも含め、5年ぐらいで絵を描いていきたいですね」とも話してくれた。

24歳で就農、8年の試行錯誤を続け、国産のグレープフルーツを32歳で初出荷。これからの5年計画を叶えたとしても、40歳に届かない秀樹さん。地域のミカンブランドの旗手だった先代に続き、今度は二代目が、国産グレープフルーツの旗手となっていきそうだ。



サポーター

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〜ここで働く仲間、外部でサポートしてくれる仲間がいて成り立っている〜

萬秀フルーツをサポート

株式会社まるは 代表取締役社長 坂野豊和さん

グレープフルーツによく目をつけたなと感心しました。
挑戦している大﨑さんの姿に刺激をもらってます。

53_large.jpg 「知多半島の若手経営者の集まりで、共通の知人を通して、大﨑さんとは知り合いました。消費が低迷しているミカンから、よくグレープフルーツに目をつけたな!と感心しましたが、加工品のグレープフルーツシャーベットの売り先がまだない、ということで、まるは食堂で扱わせてもらえるよう話をしました。地元で頑張っている若手経営者や、新しい農産物を応援していきたいという気持ちはもちろん、うちとしても求めていたものだったので、話が決まるのは早かったですね(笑)。」

「まるは食堂では、活魚料理をメインに提供しているのですが、デザートには力を入れてなかったんです。これからの地域ブランドにも成長していきそうな、国産のグレープフルーツシャーベットは、ちょうどいい商品でした。お客様に提供する際は、「知多半島で栽培された国産のグレープフルーツを使ったシャーベットです」と、ひとこと説明を添え、お出ししていますが、お客様からの反応は上々です。」

大﨑さんについては、「挑戦していますよね。苦労もたくさんあったかもしれないけど、まだまだ夢がありそうですよね。僕たちも刺激をもらえるし、これからも応援していきたいです。」と話してくれた。








達人からのメッセージ

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52_large.jpg国産のグレープフルーツは、その存在もまだあまり知られていません。まずは知ってもらうために、展示会や各種催事などに積極的に参加しています。新鮮ジューシーで、安心・安全な国産のグレープフルーツの価値を知っていただき、お客様の豊かな食生活の一助となれば幸いです。

株式会社萬秀フルーツの商品

001 国産グレープフルーツ
販売期間は4~7月。1kgあたり1000円の量り売りや、特大玉お試しセット(2100円)など、2013年度産のホワイト種(ダンカン)は、すべて売り切った。グレープフルーツは時期により味が変化。もぎたての4月のグレープフルーツは酸味が強く、輸入品にはないフレッシュ感がある。5月になると酸味も多少落ち着き、6月になると、ややマイルドになる。それでも、海外のグレープフルーツに比べると酸味は強いが、ジューシーで清涼感のある味わいにリピーターも増えてきている。発送時には、ワックス処理をしないでそのまま出荷するので、手作業でひとつひとつ鮮度保持の役割を果たすフィルムに入れ、グレープフルーツの乾燥を防止している。

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002 グレープフルーツ定番セット
大玉4個とグレープフルーツジャム1本がセットになった商品(2500円)。量り売り、特大玉お試しセットと同じ、発送に使われている段ボールは、大﨑さんがデザイナーに依頼して作ったオリジナルデザインのもの。メインターゲットの女性を意識したかわいらしいデザインで、実はオリジナルで製作する方が、段ボールのコストを安く抑えられるのだそうだ。

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003 グレープフルーツジャム『MANSHU』
萬秀フルーツの国産グレープフルーツ(ダンカン)を使ったジャム。皮を丁寧に剥き、2mm幅に切って、砂糖控え目、また火を通しすぎず、果汁と一緒に煮込む。清涼感広がるジャムは、食感的にはジュレに近い。大﨑秀樹さんの妻・佳子さんを中心に、調理師資格を持つ農園スタッフが加工を担当。自社農園産、自社スタッフによる手作りで、120g入り500円(税込)の価格を実現している。冬はお湯に混ぜ、ホットグレープフルーツとしていただくのもオススメ。

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004 シャーベット
国産のグレープフルーツを使ったシャーベット。大﨑さんが参加した商談会で知り合った、アイス・シャーベットの製造メーカー「知多セントラルシステムズ」に製造を依頼。萬秀フルーツでは冷凍施設を持たないため、出来上がったシャーベットは、「知多セントラルシステムズ」から直接、販売先に搬送される。その半分は、知多半島の老舗活魚店「まるは食堂」へ。定食に添えるデザート、売店で販売される商品として取り扱われている。

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005 国産温室グレープフルーツオーナー制度(ピンク種)
観光農園化を目指す大﨑さんの足掛かりともいうべき、「グレープフルーツオーナー制度」(1本3万円)。30組限定で2014年度分は11月から募集が始まる。4月に自分の樹を決定、年に数回催される見学会に参加しながら、翌年3月に自分で収穫をする。参加できない場合は、収穫したグレープフルーツを送ってくれる。個人や家族での申込みも多いが、オーナープレートには、東京の有名なイタリアンレストランの名も。収穫期には、ハウス内に歓声が響き渡るそうだ。

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