富士きのこセンター

達人名:渡辺 剛 Takeshi Watanabe
    富士きのこセンター
ジャンル:農業 Agriculture
地域:静岡県富士市   Fuji-City Shizuoka

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六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画に認定され、
エリンギを加工した商品のブランド価値をあげていく

昭和55年生まれ、静岡県富士市出身。富士きのこセンターの2代目となる渡辺剛さんは、家業のきのこ栽培を継ぐことを意識しつつ、専門学校を卒業後、社会経験を積むために他業種を経験。また、長野県野菜花卉試験場の菌茸を研究している機関にも学び、23歳頃から家業を手伝い始めた。渡辺家は、剛さんの祖父の時代には、みかん栽培を行っていたが、振るわなくなったため、父・昭博さんの代より、きのこ栽培に転換。ヒラタケやエリンギを中心とした栽培を行い、やればやるだけ売れた!という時期も経験したが、昨今では需要が低下。また東日本大震災以降、原発問題を受け、さらにきのこ離れが加速。主力商品のエリンギの価格が下がり続ける中、解決策を加工品の製造と販売に求めた。富士市の企業支援機関のサポートを受け、2011年10月に六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画に認定され、現在、地元加工食品事業者と連携しながら、エリンギを利用した新ジャンルの加工食品の製造・販売を進めている。
(2013年10月23日 取材・撮影/RPI)


富士きのこセンター

インタビュー

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価格暴落がとまらないきのこ。
富士きのこセンターに必然的に迫られた新たな取組

9_large.jpg創業30年の“きのこ栽培”の老舗。社長は渡辺剛さんの父・昭博さん。現在は、家族3人とパート13名の計16名で、きのこの栽培、加工、出荷、販売に関わる。 渡辺剛さんの父・昭博さんが、きのこ栽培を始めたのが今から30年前。ヒラタケの栽培から始め、多い時には1日に1トン近くを出荷していたが、時代の流れとともに、日持ちがしないヒラタケは敬遠されるようになり、創業から5年後、エリンギ栽培を主力とする事業へと移行を始めた。「僕はまだ小学生で、お小遣いをもらって手伝うような感じでしたけど、移行するのは大変だったみたいです。種類が違えば、栽培方法も違ってきますし、やっぱり生き物相手なので、思うようにいかない難しさがあります。」と、2代目の剛さんが話す。

渡辺さんは現在33歳。10年前から家業を手伝い始めたが、厳しい時代を見てきた。大手生産業者が参入してきたことから競争が厳しくなり、きのこ需要が減少。さらに、2011年3月に発生した東日本大震災で、大きな打撃を受けてしまう。被災地の福島県は全国に流通する50%以上の「きのこ原木」を出荷していたが、原発問題によりこの供給がストップ。全国的にきのこ生産に支障をきたしてしまった。そればかりでなく、「きのこ」は、安全・安心な食べ物なのか?といった風評も広がり、価格が大きく下落。「正直、腑に落ちない部分がありましたが、新しいことを始めなければならないと思いました。社長(父)も、新しい事業については、『おまえに任せた!』と言ってくれました。」と、渡辺さんは当時を振り返る。


エリンギを、どのように加工していくか?
1次産業事業者の力だけでは及ばない部分を支援センターに相談

7_large.jpg主力商品のエリンギはビン栽培が主流で、富士きのこセンターでは45日間栽培して出荷する。この他に、ヒラタケ、キクラゲ、そして珍種と言われるタマチョレイタケなどを栽培。 富士きのこセンターのきのこ栽培には、大きなこだわりがある。それは、殺菌剤や農薬を一切使わないこと。「安全・安心な食べ物という言葉をよく聞きますが、安心はお客さんが感じることで、僕たち生産者がやるべきことは、安全な食べ物を作ること。安全を守るためにやるべきことを考えたら、農薬なんて使わないにこしたことありません。うちでは、オゾンで殺菌するようにしています。」と、渡辺さんは話す。出荷時も見た目よりも味を重視。結果として、日持ちがしないというデメリットを伴うが、流通範囲を地元・静岡に絞り、そのほとんどを生協に出荷。また、新鮮で安全な食材として、学校給食の食材としても使われている。

 そんな、こだわりを持って作った自慢のエリンギの価格がどんどん下がっていく。解決策を迫られた渡辺さんに、知り合いが富士市産業支援センターf-Bizを紹介してくれた。f-Bizとは、静岡県富士市が施設を設置、運営は民間企業が行っている公の支援センター。起業家として実績のある静岡県内の経営者をアドバイザーに据え、月間250件もの起業や経営相談が持ち込まれている。成功事例も多く、「地域活性化」も担う公的な産業支援施設として、全国的に注目を集めているコンサルティングファームだ。


連携事業者のマッチング、商品のネーミング、パッケージデザイン、
PR、販路開拓まで、起業支援のプロたちが知恵を絞りだす

2_large.jpgf-Bizでは、クリエィティブ、IT、販売など、各分野のアドバイザーが集まりチームで事業者を支援。小出さんは、そのプロデューサー的な役割を担う。 富士市産業支援センターf-Bizセンター長の小出宗昭さんが話す。「富士きのこセンターさんだけに限らず、農業者からの経営相談や、6次産業化に関わる中で、もっとも要望が強いのが商品開発についてです。ですが、これは食の専門家でないとわからないものがあります。f-Bizとしては、商品開発に積極的に関わってくれて、農業者に負担をかけないよう小ロット生産が可能な食品加工業を複数見つけることが、絶対的に必要だと感じました。ちょうどその頃、事業を活性化させたいと相談に訪れていた、食品加工業社が3社ほどあり、そこに6次産業化の話をぶつけてみました。」

 そうして、富士きのこセンターとコラボレーションしてくれることになったのが、食べるラー油で大ヒットを飛ばし、数々の商品開発実績を持つ、地元企業の斎藤食品工業。富士きのこセンターのエリンギを使った加工品として、まず試作されたのがドレッシングだった。「売れる商品が出来上がってきたら、次に売るためにはどうしたらいいか?を考えます。エリンギドレッシングのターゲットは女性です。ビンの選定も含め、女性の関心を惹くパッケージデザイン、ネーミングを考え、商品化していくためのサポートを徹底的に行います。営業・広報は、渡辺さんご自身でやっていただくことになりますが、販路も紹介して、ソーシャルネットワークなどを使ったPR方法もアドバイスさせていただきました。」と、小出さんは話してくれた。


六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画に認定され、
さらに、ブランド価値をあげていく

5_large.jpg「新しい商品を生み出すのは苦痛もあるけど、楽しくて仕方ない」と話す渡辺さん。最近では、趣味で栽培しているキクラゲが非常にお気に入りの様子。 富士きのこセンターは、六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画に認定されているが、補助金は受けていない。その理由について渡辺さんは、「補助金よりも、加工品のブランド価値を上げるために申請しました。6次産業化で生まれた産品は絶対に美味しい。それをどうやって買ってもらうか? そう考えたとき、6次産業化という言葉を使える事業者であり、加工品のブランド価値をあげていくことが大切だと思いました。」と話す。さらに、認定を受けたことによるメリットとして、「商談会やセミナーなど、様々な情報が入ってくることが大きいですね。とても勉強になっています。」と話す。

 エリンギドレッシングに引き続き、2011年秋には、エリンギジャーキーが完成。2作目の加工品では、得意のPC操作を活かし、また、f-Bizのクリエイティブディレクターからアドバイスを受けながら、渡辺さん自身がパッケージをデザイン。完成した加工品を持って、f-Bizから紹介された販売先は富士川楽座。新東名高速、そして一般道からもアクセスできる好立地で、年間360万人もの人々が訪れる道の駅だ。この他にも、地元のスーパー銭湯や、あさぎりフードパークなど、観光客が多く訪れるスポットに商品を並べてもらえるようになった。また、渡辺さん自身の販路開拓で、郵便局のお歳暮カタログにも掲載。ここ1~2年で、徐々に手応えを感じられるようになってきたが、パッケージデザインの改善など含め、これからさらなるバージョンアップを目指していくそうだ。


サポーター

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〜ここで働く仲間、外部でサポートしてくれる仲間がいて成り立っている〜

富士きのこセンターをサポート

富士市産業支援センターf-Biz センター長 小出宗昭さん

熱意ある農業者たちが訪れるコンサルティングファーム

サポーター_02.jpg 富士市産業支援センター(f-Biz)は、静岡県富士市が施設を設置、運営は民間企業が行い、中小企業の経営相談に応じている公の支援センターです。ひと月に250件程の相談をいただいていますが、そのうち10%、多いときは15%が農業者です。もっと売り上げを伸ばしたい!良くしたい!という熱意を持った農業者が多くいらしてるんです。そんな、やる気のある農業者をネットワーク化して、f-Bizでは「スター農家☆輩出プロジェクト」と題し、3カ月に一度のペースで集まっていただき、勉強会を行っています。富士きのこセンターの渡辺さんも参加されていますが、みんなで盛り上がろうという農業者の皆さんの姿勢に素晴らしさを感じています。

6次産業化に関わる中で、農業者の方からの要望が強いのが商品開発について

3_large.jpg 富士きのこセンターさんもそうですが、6次産業化に関わる中で、もっとも強い要望をいただくのが商品開発についてです。ですが、これは食の専門家でないとわからない部分があります。f-Bizでは、商品開発に積極的に関わってくれて、農業者に負担をかけないよう小ロット生産が可能な食品加工業社を複数見つけることが、絶対的に必要だと感じました。
ちょうどその頃、事業を活性化させたいと相談に訪れていた、食品加工業社が3社ほどあり、6次産業化の話をぶつけてみました。そうして、食べるラー油をヒットさせた斎藤食品工業と富士きのこセンターのコラボレーションが整い、エリンギドレッシングが完成。次にf-Bizでは、ネーミング、パッケージデザイン、PR方法、販路開拓まで、商品化していくためのサポートを徹底的にさせてもらいました。

支援の本質はビジネスコンサルティング。求められるのは結果

 f-Bizでは、専門家がバラバラに1件ごとの案件を持つのではなく、クリエィティブ、IT、販売など、各分野のアドバイザーが集まり、チームで事業者を支援していきます。富士きのこセンターさんのサポートには、4人のアドバイザーが関わり、特に力を入れたのが、商品を知ってもらうPRです。PRのひとつの方法として、渡辺さんには、ITアドバイザーをつけてブログを開設いただいたり、フェイスブックやツイッターなどソーシャルメディアも活用してもらっています。商品が市場に出た後も、事業者には2週間に一度ぐらいの割合でf-Bizへ来ていただき、より効果的に戦略的に動くようアドバイスをしています。

 私たち支援セクターがすべきことは、事業者の課題を解決し、良くする方向に持っていくことです。それはつまり、ビジネスコンサルティングなんです。ですから、求められるのは“結果”です。売れる商品を作ったら、売れるようにするまでがプロフェッショナル。6次産業化におけるプランナーは、農業者をもっと儲けさせなければなりませんし、そこには相当高いスキルが求められます。実は、6次産業化の推進にとっても、中小企業支援の活性化でも、アドバイスする側の人材の育成、人材の発掘が急務であり、大変重要だと私は感じています。

農業をビジネスとして追求できる環境が整ってきています

 日本の農業は今、大きな転機を迎えていると思います。ネガティブな情報もありますが、ポジティブな側面もあります。農業者が農業をビジネスとして追求できる環境が、実は相当整ってきていると思います。どう考えても、農産品の販売だけでは限界があります。そういった意味でも、6次産業化はいい切り口となります。それを活かす、活かさないもご本人次第です。国・県・市町村の制度をうまく活用しながら、自分と同じような農産物を作っている農業者の事例からもヒントを得て、チャレンジしてみてください。絶対にビジネスチャンスはあります。

4_large.jpg■Profile■ 
富士市産業支援センターf-Biz センター長
小出宗昭
法政大学経営学部卒業後、(株)静岡銀行に入行。M&A担当などを経て、01年2月静岡県静岡市に開設した創業支援施設「SOHOしずおか」へ出向、インキュベーションマネージャーに就任。起業家の創出と地域産業活性化に向けた支援活動が高い評価を受け、05年2月「Japan Venture Award 2005」(中小企業庁主催)において経済産業大臣表彰を受賞。08年7月(株)静岡銀行を退職し独立、(株)イドムを創業。08年8月より「富士市産業支援センターf-Biz」の運営を受託しセンター長に就任。

富士市産業支援センターf-Biz






達人からのメッセージ

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「これは、支援いただいた方から教えられたことですが、6次産業化を気にかけている人は、まずやってみることが大事だと思います。やらないで諦めるのはもったいないです。そして、これは僕の考えですが、新しいことに取り組むんだったら、遊び心を持ちながら物事を考えていくといいと思います。真面目に考え過ぎても、購買者に届くようなアイディアは生まれません。当たればラッキー、外れれば修正すればいいんです。」

富士きのこセンターの商品

001 エリンギ
富士きのこセンターの主力商品はエリンギ。全体生産量のうち約7割を占め、保有数は12万本、一日に約150kgを収穫している。天然のエリンギは傘の大きさが目立つが、人工栽培のエリンギは茎の長さが特徴。美味しいエリンギの見分け方は、傘のふちは丸みを帯びている方が良く、茎の色は白いものが良い。水分を多く含む食物なので、やさしく触ってみて弾力があるのも美味しいとのこと。鍋にして食べるのが一番美味しいそうで、これからの季節(冬)、富士きのこセンターでは、出荷のハイシーズンを迎える。

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002 エリンギドレッシング
エリンギのシャキシャキ感をとじこめたドレッシング。食べるラー油をはじめ、数々の商品開発実績を持つ、地元の斎藤食品工業が商品開発を担当。ネーミングやビンの選定、パッケージデザインについては、富士市産業支援センターの力を借りた。野菜にかけるドレッシングとしての用途以外に、ハンバーグなどにかけ、ソースとしていただくのもオススメなのだそうだ。

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003 エリンギジャーキー
農薬や殺菌剤を使用せず、食品添加物などを一切含まない、富士きのこセンターの安全・安心なエリンギから生まれた加工品の第2弾。しょうゆベースの味わいで、こちらはお酒のお供として最適。

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004 乾燥きのこミックス
エリンギ、ヒラタケ、タマチョレイタケの3種類の乾燥きのこが入ったもので、水で戻す手間を省くために、きのこがカットされている。1回使い切りの個別包装。簡単に作れる使い方レシピもパッケージに掲載。

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005 きのこはおかず ピリ辛みそ味
2013年から本格的に発売をはじめた加工品。シリーズで3種類、ピリ辛みそ味、オリーブ風味、完熟トマト味とある。ピリ辛みそ味はご飯と一緒に、またはチャーハンに。最後にビンの中に残ったタレは、うどんスープにアレンジすることがオススメだそうだ。オリーブ風味や、完熟トマト味のものは、パスタやピザにオススメ。

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