瀬戸農産物加工企業組合

達人名:宇垣 泰博 Yasuhiro Ugaki
    瀬戸農産物加工企業組合 代表理事
ジャンル:農業 Agriculture
地域:岡山県岡山市 Okayama-city Okayama

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企業組合という「集」のパワーで6次産業化を推進!
先駆者として取り組む、新たな地域連携も目が離せない

2004年に、瀬戸町の農産物生産者によって設立された瀬戸農産物加工企業組合では、規格外となった農産物(白桃、ピオーネ、太秋柿など)を有効利用。代表理事の宇垣泰博さん(72)が中心となり、ゼリー、フルーツカレー、ドルチェなど加工商品の開発・製造を進め、その販路は関東を中心に、高級小売店や大手百貨店、スーパーなど全国に広がり、300%以上という予想以上の売り上げを収めている。2011年に、六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の認定を受け、業務用コンサーブ(シロップ漬け)の製造・販売を目的に、補助金で加工場を新設。組合設立から10年、“高まる需要に対し、生産性をどのようにしてあげていくか”といった問題点を抱える中、「見えてきた課題を解決しなければ、儲かっているとは言えません」と、宇垣さんは話す。一方で、6次産業化の先駆者として地域連携にも取り組み、6次産業化の発展形を築こうとしている。
(2013年11月7日 取材・撮影/RPI)

■瀬戸農産物加工企業組合

インタビュー

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フルーツ王国・岡山ゆえに厳しい出荷規格。
規格外の生産物を有効利用して加工商品を

01_ブロック.jpg吉井川により肥沃な大地にも恵まれ、丘陵地帯には、桃、ぶどう、柿などの果樹が多く栽培されている瀬戸町。 岡山県の南東部に位置する、旧・赤磐(あかいわ)郡より、2007年に岡山市に編入合併した瀬戸町は、晴天の日が多く、穏やかな気候と風土が特徴の町で、桃、ぶどう、柿などの果樹が多く栽培されている。瀬戸農産物加工企業組合は、2005年の岡山国体に向け、岡山発の特産品を作ろうという目的で、瀬戸町の農産物生産者などによって2004年に設立された組合だ。岡山では、特産のピオーネ、白桃などは贈答用に用いられることが多いため、出荷規格が厳しい。ハウス栽培ならともかく、露地栽培の桃やぶどうに関しては、約4割が規格外になってしまうこともある。規格外農産物の有効利用、そして生産者の収入安定化にもつながる事業として、瀬戸農産物加工企業組合の設立には、大きな期待が寄せられた。

 代表理事に就任した宇垣泰博さん自身も、瀬戸町で代々営まれていた果樹農家の長男で、自動車業界で流通の仕事を経験した後に就農。25年程前、ピオーネが開発された頃には、岡山ブランドとして質のいい果物を栽培する難しさも経験。長年に渡り1次産業に従事し、生産者としての技術は培ってきたものの、6次産業化については未知の分野だった。


加工商品は35種類! バイヤーなどプロからのアドバイスには
柔軟に耳を傾け、商品開発を進めていく

02_ブロック.jpg補助金により加工場を新たに建設。もともとあった製造ラインも加え、これで2本になった。約25名のスタッフで、35種類の加工商品が製造されている。 「加工技術に関しては、組合員の中でお菓子の製造をやっている業者がいたので、そこから技術をいただいたり、他の専門の方からもアドバイスをもらいました。」と宇垣さん。ところが、最初に取り組んだ、フルーツゼリーは、すでにライバル商品が多く、売り上げは伸びず。商品のアイテム数を増やすことが先決と考えた宇垣さんが、次に取り組んだ加工品がフルーツカレーだった。ピオーネや白桃の果肉がそのまま入っているカレーは話題性こそあったが、全国に広がったご当地カレーブームにより先細りとなってしまう。

 それでも、ドレッシング、ジャム、コンポートなど、特産物を使用した商品開発を続けているうちに、農水省関係者の目にとまり、六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の認定申請を薦められる。設立から4年を経たこの頃には、生キャラメルやドルチェなどのヒット商品を世に送り出し、アニメキャラクターとのコラボレーション商品などでも話題にもなり追い風が吹いていた。瀬戸農産物加工企業組合は、新たな販路開拓を目的に製造ラインを拡張することを決め、六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画に申請し、2011年に認定を受けた。


補助金を受け加工場を新設。
業務用コンサーブで新たな販路開拓を目指す

03_ブロック.jpg千疋屋の担当者に試食してもらったコンサーブは、高評価を得て契約成立!2012年10月より、ピオーネと桃の2種類のコンサーブを毎月1万2千本納品している。 認定を受けた事業内容は、これまで製造していたピオーネ、白桃、柿、トマトをシロップ漬けにした大容量の缶詰(総重量10kgうち果実が5kg)を、中小のケーキ屋、洋菓子製造業者向けに、少量にしてアルミパウチ袋で販売しようというもの。瀬戸農産物加工企業組合にとっても、新たな販路開拓となる。商品開発面では、岡山県農業開発研究所よりコンサーブ製法技術(特許申請中)の技術指導を受け、完熟果実を皮付きのまま加工するという、これまでになかった製造技術にチャレンジをしている。

 このコンサーブ(シロップ漬け)の販売目標は、ピオーネで6000パック、白桃で1万4000パック。必要な原材料は、ピオーネで1500kg、白桃は3500kgにもなるが、組合員である農業生産者から提供される果樹でカバーされる。「たとえ、組合員の原材料が間に合わなくなったとしても、農協などに協力体制を取り付けています」と、宇垣さんは話す。安定供給のためには、原材料だけでなく設備も必要だ。ボイラー、冷蔵庫、殺菌器、調理台などが整った加工場を新設するために、六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画に認定され補助金を受け、約1900万円の加工場建設費の半分を補った。


1億、2億の数字が見えてきても儲かっているとは言えない。
分岐点を迎えた事業の運営と、地域に連携した新しい6次産業化

04_ブロック.jpg写真左の副理事長の横山順一さん(64)は大手企業・重役の経歴を持つ転職組。横山さんは宇垣さんの右腕として、申請のための書類作りや売り上げ管理などを担当。 「技術より販売が難しい」と話す宇垣さんは、月に3~4回は東京に出向き営業。過去2年間でスーパーマーケットトレードショーに3回出展しているが、出展するたびに取引商社が20社程度増え、関東圏で販路の約6割を占めるようになった。売り上げも、当初の目標の1千万円を軽く越えているそうだが、借金返済はじめ、材料代、人件費などの事業運営費を差し引けば、「儲かっているとは、まだ言えません。」と宇垣さんは苦笑いする。課題には人手不足も挙げられる。「これまで商品開発も販路開拓も積極的に進めてきましたが、今、分岐点を迎えていると思います。現在のキャパで、どれだけ生産性をあげられるか考えないといけません。地域経済への還元も考えると人件費は削れませんし、作業の早いベテランスタッフを育てていくということも、解決策のひとつかもしれません。」と話す。

 また宇垣さんは、「6次産業化をここまで進めてこられたのも、人とのつながりのおかげです。」とも話す。展示会で出会った同郷の事業者から持ちかけられたコラボレーションの話にも反応が早く、瀬戸農産物加工企業組合がこれまでに開拓した販路に、コラボレーションした商品を売り出していく予定だ。地域経済の発展を後押ししていく6次産業化の新しい形と言ってもいいだろう。これからも目が離せない、瀬戸農産物加工企業組合の6次産業化への取組のひとつである。

サポーター

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〜ここで働く仲間、外部でサポートしてくれる仲間がいて成り立っている〜

瀬戸農産物加工企業組合をサポート

一般社団法人 岡山県農業開発研究所
開発研究部 次長 浜本修さん

従来の製造方法にはなかった、
新しいコンサーブ製法技術で特許を申請中

図1.jpg岡山県で果樹栽培の祖として有名なのが小山益太。この小山氏の門下生で白桃を創成したのが瀬戸町出身の大久保重五郎だ。この他多くの農業開発者たちによって、フルーツ王国・岡山の歴史は築かれていった。 瀬戸農産物加工企業組合のコンサーブ(シロップ漬け)の商品開発で、コンサーブ製法技術の技術指導を行ったのが一般社団法人岡山県農業開発研究所の浜本さん。代表理事の宇垣さんとは、宇垣さん個人が果樹農家を営んでいることから面識があり、宇垣さんが組合の理事となり、商品開発を模索しているところ相談を持ちかけられ、コンサーブ製法技術の指導にあたることになった。コンサーブ製法技術のポイントは、食べ頃を迎えた完熟果実を使用していること、そして、果実の旨みを閉じ込めるため、皮が付いたまま熱を加え、味を調えていること。これは従来にはなかった製造技術で、現在、特許申請が行われている。





必要とされている声をキャッチ
需要の高い加工商品を世の中に送り出す

サポーター_02_ブロック.jpg加熱殺菌ではなく、保温殺菌を行い、生果に近い食感や香りを残す。ここに行き着くまで何度も試験を繰り返す。商品開発には時間と労力を費やす。 果実特有の風味や食感が残り、変色の少ないコンサーブを待望していたのは、一般消費者よりも業者だったかもしれない。小規模のケーキ屋、洋菓子店からは、少量でも保存可能な果物のニーズが多くあり、また、海外の和食ブームでもメイドインジャパンの果物は必要不可欠。特に、白桃では、岡山県産の人気が高く、高品質かつ、年間を通じて供給できる加工済み白桃のニーズが高まってきている。開発にあたった浜本さんも、その需要性はヒシヒシと感じていたそうだ。新商品のスイーツを考える上でもアイディアの幅が広がりそうな加工商品を世に送り出したと言ってもいいだろう。




小規模の1次産業者でも取り組める6次産業化を

図2.jpg完熟果実のコンサーブは、桃やぶどうに限らず、今後、他の果実でも応用されていきそうだ。
 岡山県農業開発研究所は、JA等の岡山県下の農業団体、岡山県等を構成会員とする第三セクター方式の指導的研究機関。地域農業とその関連産業の育成と発展に寄与することを目的に、平成25年4月1日に一般社団法人に移行した。現在、「地域食品開発」、「地域農業開発」、「有機認定事務局」の3部門の業務を行っており、浜本さんが担当するのは、「地域食品開発」の部門。瀬戸農産物加工企業組合の宇垣さんに限らず、1次産業者からは多くの商品開発の相談が寄せられてきたが、小ロットの生産では、商品開発のフォローが難しいことも感じている。「小規模の1次産業者の方でも6次産業化に取り組める環境が作られていったらいいのですが…」と、6次産業化に対する思いを語る。浜本さんは、農業を志す高校生などにもジャム作りなど指導。浜本さんに教えてもらったジャム作りが礎となり、6次産業化に取り組む若人も近いうちに現れそうだ。


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■Profile■

一般社団法人 岡山県農業開発研究所
開発研究部 次長 浜本修

山口県出身。
地域農産物の加工・開発研究に携わり、25年のベテラン。






達人からのメッセージ

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6次産業化を進めるにあたって大事なことは、それなりの考えを持って、最終的な販路までを開拓をすることです。近場だけでいいと思っていたら、あまり伸びません。やはり首都圏とか、地域のデパートに入れるというアタマで、いいものを作ることが大事。それには、中身やパッケージも含め完璧な商品でなくてはいけません。

瀬戸農産物加工企業組合の商品

001 まるごととまとゼリー
国産の桃太郎トマトを、まるごと1個(果肉そのままを)使用したボリュームたっぷりのゼリーで、売り上げ好調な定番商品。240g/600円(税別)、130g/450円(税別)。

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002 フルーツドルチェ
流行に敏感な、瀬戸農産物加工企業組合の東京の営業マンからのリクエストに応え、商品開発を行ったドルチェ。ピオーネ、白桃、トマトのそれぞれを、ヨーグルトと組み合わせた二層ゼリーはヒット商品となり、販路開拓の突破口となった。2013年の冬には、このドルチェ3点とコンポートを合わせたギフトセットを販売。

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003 フルーツカレー
瀬戸町の特産物を活かし、他にないオリジナルの加工品を作っていこうという考えを徹底し完成。ゼリーの次に、2作目として開発された加工商品。白桃やピオーネ、太秋柿など、果肉がそのまま入ったカレーは話題性も十分。なかでも、桃太郎トマトカレーはパッケージにもインパクトがあり、現在では、県内外を問わず、地域特産品を扱う店舗で好位置に陳列されている。

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004 白桃とピオーネのコンサーブ(シロップ漬け)
これまでターゲットだった一般消費者から目線を変え、ケーキ等菓子製造業者をターゲットにした業務用のコンサーブ(シロップ漬け)。商品開発を行った岡山県農業開発研究所から技術指導を受け、2011年より製造・販売。原材料のピオーネも桃も皮付きのまま使用しており、殺菌処理を低温で行うことで、果物本来の旨みが残っているのが特徴。年間でピオーネは6000パック、白桃は1万4000パックを製造。1袋に入っている白桃は1個、ピオーネについては13粒入りで、各650円(税別)。ケーキの飾りやジュースにも利用できる。

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005 2013年冬 ギフトセット
ピオーネ、白桃、桃太郎トマト、岡山県の3つの特産品を、ドルチェ(上段の3品)、コンサーブ(下段の3品)に仕立てたギフトセット。4000円の統一価格で、全国の大手百貨店、スーパーの2013年冬のギフトカタログに掲載。5万セットの売り上げを見込んでいる。

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006 白桃ジャム
現在、商品開発中の白桃ジャム。バイヤーなどからのアドバイスを受け、瓶タイプよりコストがかかる、スタンドタイプのパッケージで売り出していく予定。

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