牡蠣の家 しおかぜ

達人名:野﨑 厚子 Atsuko Nozaki
   牡蠣の家 しおかぜ 商品開発責任者
ジャンル:漁業 Fishery
岡山県瀬戸内市邑久町  Oku-machi Setouchi-City Okayama

画像 187_original.jpgスクリーンショット(2012-09-26 17.02.46).png

プロや専門家からアドバイスを聞き出し、スキルアップに奔走!
法人化を前に大手百貨店などにも注目され、販路も拡大

1950年生まれ。21歳で瀬戸内市内の農家から、虫明地区で明治時代から漁業を営んでいる野﨑家に嫁ぐ。夫の野﨑末廣さんは6代目で、家族構成は次男で7代目の寿(ひさし)さんと、寿さんの妻・香代子さん、そして、2013年10月に生まれたばかりの寿さんの第1子と6代目の母・絹子さんを含む6人家族。代々、漁に使っている船の名前「しおかぜ」から屋号をつけた「牡蠣の家しおかぜ」では、牡蠣養殖業と小型定置網漁業の複合経営を行い、2010年からは、水揚げした魚介類を自社で加工し、燻製や佃煮にして販売を行っている。漁業の現場を6代目と7代目が仕切るなら、商品開発や加工を担当するのは厚子さん(写真左から2番目)。郷土料理の牡蠣の佃煮からはじまった加工品は、厚子さんの好奇心と努力により、レパートリーの幅も広がり、そのクオリティも格段にアップした。販路は地元の大手百貨店から東京のアンテナショップにまで広がり、2012年に六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画に申請し認定された。2013年には「がんばる中小企業・小規模事業者300社」にも選定。今後は法人化を目指し、さらなる売り上げアップも目指していく。
(2014年1月8日 取材・撮影/RPI)

牡蠣の家しおかぜ

インタビュー

7.psd

明治時代から7代続く漁師の家にも魚介離れの影響

01_ブロック.JPG瀬戸内市邑久町は、備前市日生町と並ぶ牡蠣の産地で、岡山県の牡蠣生産量の43.3%を占めている(2009年度海面漁業生産統計)。 日本人の魚介消費量は1996年から減少傾向に転じ(農水省調べ)、深刻な魚介離れが進んでいる。全国第3位の牡蠣の生産量を誇る岡山県でも、そういった魚介離れによる価格の低下、また流通構造の変化といった影響を受け、牡蠣養殖に取り組む事業者数が減少。明治初期から7代に渡り漁業を営む「牡蠣の家しおかぜ」が所属する漁協でも、牡蠣の売れ行きが芳しくないため、2011年から「むき身作業の禁止日」という生産調整日が設けられてしまった。12月に5日間、1月に9日間、年末・正月の商戦時期に何日も休まなければならない。「牡蠣があるのに、むき身にして商品化する機会を失ってしまうのはもったいないですから、直接販売を始めました。」と話すのは、「牡蠣の家しおかぜ」の6代目の妻・野﨑厚子さん(63)。

 6代目の末廣さんも、息子の代が希望を持って漁業を行うことができる経営のあり方を模索し続け、量よりも高品質の牡蠣を生産できる体制を整えようと、海水用の紫外線殺菌装置や牡蠣殻の清掃機械の導入、そして、牡蠣作業場の環境整備などを行った。紫外線殺菌装置を導入している経営体は虫明地区でも3~4件程度。「牡蠣の家しおかぜ」の商品の品質は評判が評判を呼び、直接販売でつながった顧客の中には、はるばる京都から買い物に訪れる客もいるそうだ。

疑問や問題点を残さない。解決するための答えが
どこにあるのか?追究していく姿勢とスピード感

119_large.jpg牡蠣をむき身にする作業「牡蠣うち」。作業場の山盛りとなった牡蠣を崩しながら、中国人研修生4人と6代目が黙々と作業を続ける。 「牡蠣の家しおかぜ」が牡蠣の養殖を始めたのは1951年の4代目の時代から。明治の創業から行っている小型定置網漁業は、4月~11月にかけて、タコ、イカ、エビ、クロダイなどを漁協へ年間8,685kg出荷しているが、魚は牡蠣よりも単価が低く、さらに厳しい状況。牡蠣の直接販売に加え、厚子さんが取り組み始めたのが、魚と牡蠣の加工事業。2010年に「しおかぜ加工場」を新設し、自身で飲食店営業と惣菜製造業の営業許可を取得。獲れた魚介類を佃煮や牡蠣フライに加工して、地元の産地直売店で販売。販売ロスはほとんどなく、1カ月で約11万円の売り上げをあげた。需要があることを感じつつも厚子さんは「産直に惣菜として出しても、作れる数は限られていますし、高くは売れません。定番商品で日持ちがするものが作れないかと考え始めました。」と話す。

 そこで地元・瀬戸内市商工会に相談。厚子さんはシェフを紹介してもらい、牡蠣で作れる加工品として“オリーブ漬け”の提案を受ける。郷土料理のプロであっても、厚子さんは加工のプロではない。「人に聞いて勉強するしかありませんでした。」と、厚子さんは瀬戸内市商工会より案内された「岡山・食と農ビジネス塾」を受講し、食品開発の基礎を学ぶ。商品開発の途中、疑問や問題点があがると、地元の技術センターや、専門の研究を行っている他県の大学、また農水省などにも積極的に問い合わせ、スキルアップに奔走した。


商品化になる前に味見をしてもらい、アドバイスをもらう
自己完結してしまったら自分だけの味になってしまう

13_large.jpg加工に必要な設備に関して、厚子さんは中古ではなく新品にこだわる。現在、スチームコンベクションオーブンや冷凍冷蔵庫、真空包装機などを導入し作業を行っている。 商工会主催のセミナーでは、自分で加工した食品を持ち込み、周囲の人に味見をしてもらい意見やアドバイスを聞き出していた厚子さん。そんな厚子さんの姿を見て、岡山6次産業化サポートセンター 統括企画推進員の石井宏幸さんが「六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画」の話を持ちかける。「申請をしたら、どんな状況になるかまったく予想がつきませんでした。」と、当時を振り返る厚子さん。どんなパッケージで、どこに売っていくのか、売り上げもまったく予想がつかない。まず、それよりも厚子さんはパソコンに触れたことがなかった。申請書類作りは石井さんに任せるも、60歳を過ぎてからパソコン教室に通い猛勉強をしたそうだ。

 書類作りを進めていくうちに、商品コンセプトも決まった。「7代続く漁師の家が育み、水揚げした海鮮物と地元食材を使った本物の美味しさをお届けする」。農家出身の厚子さんとしても、地元の食材を使っていきたいという気持ちは強かった。また、「瀬戸内市のお土産になるような商品を作りたかった。」とも話す厚子さん。6次産業化で商品開発を行った、牡蠣の燻製オリーブオイル漬けや、魚介類の燻製商品「海燻(かいくん)」シリーズ、牡蠣の佃煮には、地元の食材(トマト、オリーブ、レモンなど)が使われ、漁師の女将としての厚子さんの思いも込められている。


2013年夏、東京で開催された『地場もん国民大賞』出展から
売り上げが徐々にアップ

59_large.jpg6代目の野﨑末廣さん(67)は、息子たちには先行不透明な漁業を薦めなかった。しかし、サラリーマン生活を送っていた寿さん(33)が戻り7代目に。 デザインパッケージのコーディネートも6次産業化サポートセンターの石井さんが担当。「商品コンセプトをきちんと理解してくれて、ネーミングも得意なデザイナーさんにお願いしました。」と話す。そして、完成した商品を携え商談会などに参加。伝わりやすいコンセプトとクオリティの高い商品は、岡山市の高島屋、天満屋、また東京・有楽町のまちからむらから館などのバイヤーの目にもとまった。さらにインターネットでの販売も展開。販路を着々と広げるも、製造・加工スタッフは厚子さんを入れて4人。今後の課題には、生産量アップのための人材雇用と育成も含まれる。

 六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の認定から、やがて2年。商品のクオリティアップをはかりながら、届けられる範囲の販売先には、自分で車を運転して納品。そこでまた意見やアドバイスをもらってくる。簡単な商品カタログに関しては覚えたてのパソコンを使って作成。「こんなに忙しくなるとは思っていませんでした!」と話す厚子さん。6次産業化では補助金の申請はしておらず、認定を受けたメリットについては、「商談会やセミナーなどで、人とのつながり、広がりを感じました。それから、ブランド力でしょうか。認定を受けていることで、信用されていると感じることがあります。」と話す。今後は7代目の寿さんを中心に法人化も予定している。

サポーター

7.psd

〜ここで働く仲間、外部でサポートしてくれる仲間がいて成り立っている〜

牡蠣の家しおかぜをサポート

岡山県商工会連合会 広域サポートセンター センター長
岡山6次産業化サポートセンター 統括企画推進員
石井宏幸さん

現在の事業状態、経営者の考え、後継者の存在など、
6次産業化を展開できる様々な要因

22_large.jpg「野﨑さんの情報収集力やスピード感を目の当たりにして、こちらもお手伝いのしがいがありました」と話す石井さん。牡蠣の家しおかぜの事務所で。 牡蠣の家しおかぜの六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の申請書類作りから、デザインコーディネート、販路開拓など多岐に渡りサポートしてきたのが、岡山6次産業化サポートセンター 統括企画推進員の石井宏幸さん。支援までの経緯について、「最初に野﨑厚子さんが商品開発の相談を持ちかけれた瀬戸内市商工会の指導員と一緒に支援をさせていただきました。牡蠣の家しおかぜさんの場合、基本の漁業がしっかり経営されていること、後継者もいて事業の持続性が見込めるなど、様々なポイントがあり、6次産業化への取組が可能だと感じました。でも実際動き始めると、それらの要因よりも、野﨑さん自身の熱意やスピード感でどんどん進んでいったという印象があります(笑)。」と話す。


非常にイメージしやすかった、牡蠣の家しおかぜの6次産業化

サポーター02_098_original.jpg牡蠣の家しおかぜ7代目の野﨑寿さんは、「最初は母の趣味に付き合っているような感じでした(笑)」と話す。現在はフォローも怠らず、7代目として法人化も目指している。 「野﨑さんは、アドバイスを聞き入れてくれますし、ご自分からも求めてこられます。それは、私たちアドバイザーだけに限らず、レシピ開発の相談を持ちかけたシェフや、セミナーで味見をしてもらった方たち、販売先など、とにかく意見をよく聞かれています。ある意味、マーケティングのプロかもしれません。また実行に移されるスピードも非常に早い。例えば、必要な書類の準備をお願いしても、すぐに準備をされています。これまでの経験上そうした方の方が、成功に近づいて行ける確率が高いと感じています。事業計画書には、先にあげた6次産業化を展開できる要因を含め、行政の方々に理解いただけるよう、わかりやすくおとしこんでいきました。すでに商品のカタチもありましたし、非常にやりやすく、お手伝いのしがいもありました。」




虫明地区の美味しい牡蠣を知ってもらいたいという
願いをこめたパッケージデザイン

サポーター03_大小.jpg「生で美味しい虫明の牡蠣は、加工品にしても美味しいということを地元の人たちに知ってもらいたい」と厚子さんは話す。 「商品のネーミングやパッケージデザインについて、野﨑さんから唯一ご希望いただいたのは、“虫明”という地名を出してもらいたいということでした。『岡山県の中でも、牡蠣の養殖を古くからやっている虫明地区の美味しい牡蠣を知ってもらいたい。なんとか復活してもらいたいという。』お気持ちがあってのことでした。デザイナーは、商品開発の背景を理解してくれて、ネーミングも得意な方に依頼。わかりやすく、素材の良さ、作っている人の雰囲気を伝えられるようなデザインを念頭においてもらいました。」

利用できる行政機関や支援センターをフルに活用する

140_large.jpg6代目の野﨑末廣さん。厚子さんとは1972年に結婚。2013年10月に生まれた7代目の第1子(末は8代目?)の誕生に顔をほころばす。 「6次産業化に取り組むにあたっては、小さな事業者さんが、お一人でできることは限られています。人から吸収しないとできないことについては、野﨑さんのように、行政とか我々のような支援機関を利用していただけたらと思います。セミナーを受講することでネットワークも広がりますし、そこでお互いに情報を出し合い、時には販路を共有して助け合っていくことも可能かと思います。また、チームを作り6次産業化を展開していくケースもあります。」と石井さんは話す。






達人からのメッセージ

7.psd
これから6次産業化に取り組もうと考えている若い方は、ひとつのことにこだわらず、いろんなことを自分でやってみたらといいと思います。他の方の取組の事例を見たり、意見を聞いてみたりするのもいいと思います。そして、これは私自身の反省でもあるのですが、「どういう路線で6次産業化に取り組むか?」最初にしっかりイメージができていることが大事だと思います。

25_large.jpg

牡蠣の家しおかぜの商品

001 殻付き牡蠣
虫明海域殻付牡蠣「曙牡蠣」約12個入りとむき身500gが入ったギフトセット(Bタイプ/3,500円)で、牡蠣剥き用ナイフや軍手も付いている。「殻付牡蠣」は、海から水揚げした牡蠣を厳しく選別、自社水槽の紫外線減菌海水で浄化した上で、一個一個厳選して箱詰めにして出荷。殻付牡蠣は蒸し牡蠣や焼き牡蠣に、また、むき身は牡蠣鍋やかきフライなどにして楽しめる。Aタイプは、虫明海域殻付牡蠣「曙牡蠣」のみが約20涸入ったもので3,500円(税込)。

商品01_DSC00496.jpg

002 牡蠣の燻製オリーブオイル漬け「海燻(かいくん)」
虫明産の牡蠣を、桜のチップで時間をかけ燻製に仕上げ、ドライトマト(瀬戸内市産)、ニンニク、ローリエを加え、エキストラバージンオリーブオイルに漬け込んだ商品。6次産業化の認定申請を受け商品開発を進めた商品で、2013年「第1回地場もん国民大賞」で秋山能久賞を受賞。また「究極のお土産」ノミネート商品にも選定。生の牡蠣を食べられなかった若者から食べることができたという声も寄せられ、今や「牡蠣の家しおかぜ」の看板商品。大(130g):1,365円(税込)、小(100g):945円(税込)。

商品02_オリーブオイル漬_大.jpg

003 牡蠣の佃煮
牡蠣の家しおかぜでは、むき身の牡蠣についても品質を重視し、カタチの良くないものや、むき身の作業中にキズがついた物は規格外品として自宅消費へ回し、佃煮や牡蠣飯に料理していた。漁師の女将がむき身の牡蠣を甘辛く炊いてきた、野﨑家に代々引き継がれているおふくろの味を、6次産業化で商品化したもの。地元のイベントでは人気の商品となっている。525円(税込)。

商品03_佃煮_山椒.jpg

004 牡蠣料理を味わうギフトセット
牡蠣の燻製「海燻」2袋、牡蠣の佃煮(山椒、生姜、マッシュルーム各2袋)6袋、牡蠣のオリーブオイル漬け(瓶)がセットになった牡蠣づくしのギフトセット。6次産業化で商品開発した逸品をすべて味わえる。4,830円(税込)。

商品04_ギフトセット.jpg

005 牡蠣のアヒージョ
アヒージョとはスペイン語で「ニンニク風味」を表わす言葉で、一般的にはニンニクを入れたオリーブ油に魚介や野菜などの具材を加えて煮込んだ小皿料理のことを指す。牡蠣の家しおかぜでは、自慢の虫明産の牡蠣をこのレシピに応用。鍋で温めるとオイルの旨味が増し、フランスパンなどに浸して食べるのがおすすめ。130g 997円(税込)。

商品05_アヒージョ.jpg

006 牡蠣と野菜のピクルス
6種類のハーブが使われている香り豊かなピクルス。季節野菜のサラダにトッピングしたり、サンドイッチの具に加えたり、新しい牡蠣料理を楽しめる。130g 945円(税込)。

商品06_ピクルス.jpg

007 牡蠣味噌(甘口)「海餐の宴」
鮮度の良い虫明産の牡蠣をふんだんに入れ、瀬戸内市長船町にある名刀味噌本舗の玄米味噌とじっくり煮込んだ「なめ味噌」。牡蠣と味噌の組み合わせが妙で、アツアツのご飯やお酒のあて、おにぎりの具や焼き味噌にしたり、チャーハンに入れても楽しめる。840円(税込)。

商品07_甘口味噌.jpg

008 牡蠣味噌(辛口)「海餐の宴」
上の商品と同じく、虫明産の牡蠣をふんだんに入れ、瀬戸内市長船町にある名刀味噌本舗の玄米味噌とじっくり煮込んだ「なめ味噌」。辛口はピリッと辛く唐辛子好きの顧客に人気。ラーメンのトッピングやビビンバ、夏にはソーメンの薬味にも利用できる。840円(税込)。

商品08_辛口味噌.jpg

ページの先頭へ