社会福祉法人くりのみ園

達人名:島津隆雄 Takao Shimazu 
    社会福祉法人くりのみ園 理事長
ジャンル:農業 Agriculture
長野県上高井郡小布施町  Obuse-cho Kamitakai-gun Nagano

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障害者が生活力をつけるための
福祉と農業を融合させた6次産業化

社会福祉法人くりのみ園は、農業や農産物の加工品製造・販売を通じて知的・精神・身体に障害を持つ人を支援する就労支援施設として平成9年に設立。「障害を持った人たちが地域で働いて、地域の人たちと生活を共にしていけるようなシステム作りを、農業というカタチで整備していきたかった」と話すのは園長の島津隆雄さん(65)。約8ヘクタールの農地、3800羽を飼育する養鶏場、そして小布施町と長野市の2箇所に構える加工場には、現在約50名の障害者(利用者)が通う。職員と利用者が安心・安全にこだわってつくる農作物や加工品は徐々に知名度をあげ、特に、放し飼いの鶏が産む自然有精卵は、地元ホテルや老舗和菓子店、学校給食まで販路を広げ、小布施ブランドのひとつに数えられるようになった。平成23年には、六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の認定を受け、今後さらに「地域福祉と自然農業の連携」をコンセプトに6次産業化に取り組み、くりのみブランドの確立を図っていこうとしている。
(2014年9月9日 取材・撮影/RPI)

社会福祉法人くりのみ園
http://kurinomien.com/

インタビュー

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障害を持った人たちが活躍できるシステムを
農業で作っていく

1ブロック_DSC00554.JPG小布施町の田園の中にあるくりのみ園。18~60歳までの施設利用者は通勤して、9~16時まで働く。 東に雁田山、西に北信五岳を望み、穏やかな田園風景が広がる長野県小布施町。晩年、かの浮き世絵師・葛飾北斎はこの風景に魅了され、この地で4年過ごしたといわれる。高度成長化の波とともに、町を支えてきた農家が減り始め過疎化が進んだが、1970年代に北斎が残した遺産を中心に町おこしが行われ、小さな町に年間120万人の観光客が訪れるようになった。そんな町の中心部から少し車を走らせた場所にある「くりのみ園」は、一見、大きな農家の納屋にも見える。「『こんな畑の真ん中に、こんな建物の福祉施設は見たことがない』そんな第一印象を持たれることも珍しくありませんでした」と園長の島津さんが話す。

 島津さんは小布施町の出身。実家は兼業農家を営んでいたが、福祉の世界で40年近く過ごしてきた。地元に戻り、自身で設立した社会福祉法人のことを、島津さんは「福祉農園」と呼んでいる。「障害者(利用者)とお付き合いをしてきて、この人たちには可能性があると感じていました。ですが、その可能性を引き出すシステムや体制ができていない。そこで、農業というカタチでそういう場所を整備したかったというのが、くりのみ園設立の一番の目的です」と島津さん。畑の真ん中に立地されたのも、納屋のように見える施設も、「農業をやろう!」という目的があったからだった。

地元のベテラン農家の支援を受けながら、
無農薬、無化学肥料栽培にこだわる

2ブロック_1_063.jpg「利用者に自信がついてくると生産性もあがり展望も出てきます。結局、利用者のための農園だから、利用者が成長して、充実していってほしい。それでしかないと思います」と島津さん。 「障害を持たれた人たちを支援していくということは、生活を支援していくということになります。生活とは生きていくということ。それは農業と非常に密接な関係にあります。また、社会福祉法人にとって、『健康』というのは最大のテーマです。施設を利用している障害者の多くが、通院や治療、服薬など、現在も医療機関と関わりを持っています。そういう中で展開していく農業は、安心・安全でなければなりません。くりのみ園では、米、大豆、菜種など自家種にこだわった信州伝統野菜の栽培を、すべて無農薬、有機栽培で行っています」と島津さん。

 農業の技術については、地元農家の人たちの支援を受けた。「真剣に農作業をしていると、70代、80代のベテラン農家の人たちが『農業というものはこういうものだ』と私たちに教えてくれるようになりました」と島津さん。信頼関係は農地の拡大にもつながっていった。「基本的に農地の確保に関しては、農業委員会を通じて条件設定をして農地をリースしていくというやり方をとっていましたが、ある段階から、高齢の農家の方たちから農地を借りてもらえないだろうかと頼られるようになってきました」と話す。現在、くりのみ園では小布施町と長野市の2つのエリアで8ヘクタールの畑を抱え、二毛作など昔の農家がやってきた農法を取り入れ、農作物の生産を行っている。

主力商品の自然有精卵から広がっていった
くりのみ園の6次産業化

第2ブロック_DSC_1018.jpg3800羽の放し飼いの鶏から一日に1800個程の自然有精卵を回収。くりのみ園の主力商品として販売されている。糞は堆肥として使用する、自然循環型農業に取り組んでいる。 くりのみ園の農産物の地名度を上げたのは、平飼い養鶏から生まれた自然有精卵だった。無農薬栽培の自家配合飼料を鶏に与えることで、ビタミンやミネラルが豊富で、質の高い卵が生まれた。島津さん自ら営業を行い、地元の長野ホテル犀北館や星野リゾート、有名和菓子店の竹風堂や小布施堂との取引が始まり、ついには学校給食まで販売先を広げ、小布施ブランドのひとつに数えられるようになった。この自然有精卵を使用した加工品は、卵油をカプセルに閉じ込めた健康食品「卵々油」をはじめ、シフォンケーキやカステラ、クッキー、プリンなど30種以上に及ぶ。スイーツやジャムの加工は長野市内にある直売店「なちゃらるショップくりのみ」に併設された加工場で行われ、商品開発はすべて職員が担当、その手作り感もファンの心をつかんでいる。

 一方、小布施町の加工場で行われているのは、卵の選別やパック詰め、そして漬物などの加工。「くりのみ園を利用する障害者にはそれぞれ担当があり役割がありますが、卵のパック詰めに関しては、職員の責任者以外はすべて障害者に任せられるレベルにあります。くりのみ園には、農業もあれば、加工や販売もあり、いろんな部門があります。そういうところが全部連携していて、それぞれが能力を発揮していけたらいいと思います。そういうシステムをこの農園の中で作ろうとしていますが、すでにこれは6次産業化ですね」と島津さんは話す。

障害者の可能性とともに6次産業化の展望が見えてくる

4ブロック_1_237.jpg長野市にある直売所「なちゅらるショップくりのみ」。島津さんは、「生産・加工・販売の6次産業化の終着駅が、この直売所です」と話す。 農業が軌道に乗り始めた頃、くりのみ園は認定農業者制度の認定を受けた。平成23年には、六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の認定を受け、くりのみブランド化に向けて、自然有精卵を使用した新商品(マヨネーズ)とナチュラルスイーツ(たまごサブレ、マフィンなど)などの商品開発を進めている。施設の職員がほとんどの商品開発を担当するが、無農薬の大豆と米を使用したこだわりの麹味噌は、地元の老舗製造業者「穀平味噌醸造場」と連携。製造を委託して、直売所やインターネットで販売をスタートさせた。「昨年と今年は、直売所で見込める売上100万円が目標金額でしたが、来年からは大豆の生産量も5倍に増やし、飛躍的な売上アップを考えています。ただ、販路の確保が課題ですね」と島津さん。スイーツに関しては、信州発の贈答用商品としてパッケージデザインをプロに依頼、首都圏の高級デパートへの販路開拓を予定している。

 「商品アイテムの整理、販路開拓、職員の人材不足、今後の経営基盤作りなど、様々な課題も抱えていますが、6次産業化の制度にのっていくことによって、背中を押されてるような、頑張ろうといく気分になりますね。そういう意味では、認定を受けて良かったと思っています。また、障害者の方がひとつひとつできることが増えて、ひとりずつ安定した自信を持てるようになってきていることは、とても嬉しいですし、感謝をしています」と島津さんは話す。

サポーター

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〜ここで働く仲間、外部でサポートしてくれる仲間がいて成り立っている〜

社会福祉法人くりのみ園をサポート

有限会社 穀平味噌醸造場
小山 洋史さん

全国シェア45%を占める信州味噌で6次産業化の連携

サポーター_1_156.jpg創業は天明4年。老舗の味噌メーカーを継ぐ9代目。小布施まちづくり委員会の環境部会に属し、生ゴミを堆肥として活かす自然循環に対する取組をメンバーと共に行っている。  全国1200社の味噌メーカーのうち長野県には110社があり、信州味噌は全国シェアの45%を占めている。その90%は大手味噌メーカーによって製造されているが、小さな味噌メーカーは互いに連携し技術の更新を図り、それぞれに工夫をした商品を販売し、消費者からの支持を得ている。創業から230年を数える穀平味噌醸造場では、「世界にひとつ!オーダー味噌」を展開。顧客が望む材料で顧客が望む味に味噌を仕上げていく。メディアにも取り上げられ評判となっている、このオーダー味噌は、9代目・小山さんのアイディアによるもの。そんな実績もあったので、くりのみ園の園長・島津さんから「くりのみ園の無農薬大豆を使った味噌を作って欲しい」という依頼に対しては、柔軟な対応で、「ぜひ!」と即答だったらしい。


安全・安心で、さらに美味しい食品であることを
アピールしながら、さらなる販路開拓を

1_166.jpg穀平味噌では昔ながらの方法で木樽へ仕込み、1年~2年の間、自然にじっくりと発酵させる「天然醸造法」を守り通している。添加物は不使用。写真は店頭で販売されている味噌。 「私自身も、前々から無農薬に近い原料を使って味噌を作りたいと思っていました」と話す小山さんは、9代目を継承する前は医療関係に従事していたこともあり、安心・安全な食に対しての関心も高かった。くりのみ園の畑で、無農薬で栽培された長野県推奨のエンレイ大豆を材料に、穀平味噌醸造場で作られた麹味噌には、保存料や酒精は一切使われていない。無添加のくりのみ園オリジナルの生みそが完成した。

 現在、くりのみ園の直売所やインターネットなどで販売しているが、くりのみ園としては来年から飛躍的に売り上げを伸ばしたいと考えている。「福祉と農業が連携した、くりのみ園さんの取組は素晴らしいですし、自然有精卵の評価も高い。今後は、商品の販売先を広げ、確保していってほしいですね。私たちも、美味しい麹味噌を作れるようバックアップしていきたいと思っています」と小山さんは話す。また、アイディアマンの小山さんには、くりのみ園の安心・安全な農産物を使った次なるアイディアもあるようだ。

達人からのメッセージ

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障害を持たれた人たちが地域で生活をしていくというとき、農業を一番にした支援体制を組んでいくことが、ある意味一番オーソドックスなやり方だと思います。それを、地域の様々な関わりの中でいかにして作り上げていくか、というのが課題になってきますが、それは、やりがいのあることだと思います。ある意味、新しい福祉の形、農業の形、もっというと新しい地域の在り方を追求していくことになります。でもそれは「新しい」ではなくて、「伝統に回帰する」ということかもしれませんね。昔の人たちの思いや営みを受け止め、再生していけば見通せる社会があると私は考えています。「地域福祉と自然農業の連携」に活路があるのでは?と考え始めている福祉関係者は増えてきていると感じますし、そういった方たちには、果敢に農業にチャレンジしてもらいたいと願っています。

社会福祉法人くりのみ園の商品

001 くりのみ園の卵
北信濃の澄み切った空気の中でのびのび育った平飼いの鶏が産む自然有精卵。餌は園内で採れた無農薬野菜や、四季の野草(はこべ・クローバー・大麦など)をブレンドした自然配合飼料を使用。販売される卵は、若鶏の「安全・安心・新鮮」の限定卵で、くりのみ園といえば「卵」と言われるぐらい地元で浸透している商品。小布施町のスイーツショップの数軒でも、くりのみ園の卵を使用したプリンなどスイーツ商品を販売。

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002 くりのみの天日干し米(玄米)(精白米)
二毛作による抑草効果と米ぬか・機械除草、深水管理で栽培。はぜ掛け・天日干ししたもみ米を15℃の冷蔵庫で保管し販売。精白米は、その都度精米し販売されている。

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003 天然醸造くりのみの米こうじ味噌
無農薬で栽培された長野県推奨のエンレイ大豆を材料に作られた味噌。製造は、地元の老舗、穀平味噌醸造場に委託。保存料・酒精は一切使われていない無添加の生みそ。

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004 くりのみのなたね油
昔ながらの農業に戻していきたいという園長・島津さんのこだわりで作られた6次産業化の商品のひとつ。毎年10月、収穫の終わった水田に裏作として菜種を播種。翌年6月に汎用コンバインで収穫して15度に設定された冷蔵庫で保管。昨年、適宜搾油された菜種油は直売所のみで販売され、約17万円を売り上げ完売。手応えを感じ、今後は生産を拡大していく予定だ。

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005 くりのみカステラ
自然有精卵をたっぷり使ったカステラはくりのみ園の人気商品のひとつ。2切れ入りの小さいサイズ(写真)と0.75斤サイズと2種類。カステラを黒糖でラスクに仕立てた商品も人気。カステラとセットにした商品がネットで販売されている。

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006 くりのみ卵プリン
自然有精卵を贅沢に使ったプリンで、「カスタードタイプ」と「とろりタイプ」の2種類がある。カスタードタイプは全卵と牛乳だけのシンプルなプリンで、自然有精卵の味をしっかり味わえる。とろりタイプは卵黄と生クリームを使用したリッチでクリーミーな食感のプリン。どちらのプリンも国産ビートグラニュー糖を使用。保存料・着色料不使用。カラメルソースはカスタードタイプのみ使用。セットでの販売もあり。

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007 くりのみ園の手作りジャム
北信濃の自然で育った素材の自然な味をそのまま閉じ込めたジャム。いちご、あんず、ブルーベリー、キャロット、かぼちゃなど、季節ごとにその味を楽しめるラインナップ。着色料・香料・化学調味料・合成保存料・防腐剤不使用。

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