株式会社さとに医食同源

達人名:太田義教 Yoshinori Ohta 
    株式会社さとに医食同源 代表取締役
ジャンル:農業 Agriculture
鳥取県鳥取市  Tottori-City Tottori

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低グルテリン米がとりもつ、農業と医療と福祉の連携

「さとに医食同源」は、「さとに田園クリニック」より、人工透析患者への給食提供の要請を受けたことをきっかけに平成21年に創業。代表取締役の太田義教さん(80)は、兼業農家だった米澤英宣さんと共に、「低グルテリン米」を生産し給食に活用。平成23年に、農業関連事業を事業目的に加え法人化を行い、従来の事業を給食部とし、米澤さんを中心とした営農部を新たに創設。生産規模を拡張しながら給食事業を推進していった。平成24年2月に、六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の認定を受け、平成25年には、腎臓病患者が家族と共に楽しめる食事指導(料理教室)を目的に、古民家レストラン「さとに千両」をオープン。腎臓病をはじめ、様々な生活習慣病や成人病が増加傾向にあり、食と健康の在り方が見直されつつある昨今、「さとに田園クリニック」と共に、“医食同源”の思想をコンセプトとした地域活性化を進めている。(写真左:さとに医食同源 代表取締役 太田義教さん 写真右:さとに田園クリニック 院長 太田匡彦さん)
(2014年10月2日 取材・撮影/RPI)

株式会社さとに医食同源
http://satoni.jp/

インタビュー

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地域の農業を守りたい、医療に求められる食事を提供したい、
人々の思いが創業につながった

01_620C7182.JPG株式会社さとに医食同源 取締役 営農部長 米澤英宣さん(72)。市役所に勤務しながら兼業農家を営んでいたが、低グルテリン米の生産には早くから取り組んでいた。 鳥取市郊外に位置する里仁地区の人口は約500人。少子高齢化が進み、60歳以上が人口の約35%を占めている。兼業農家の米澤さんは、後継者を欠き先細りしていく農業を、集落営農計画で食い止めようとしていた。当時を振り返り米澤さんが話す。「農機具など1軒に1台持っていても効率がよくない。集落営農でスリム化を図ろうと思っていました。しかし、あまりにも高齢化が進んでいたため労働力が確保できず、集落営農では農地を守れない。末永く続けられる農業を目指すには、株式会社化しかない。リーダーが代わったとしても続いていく、そういう会社が現れないと立ちいかないと考えていました」。

 一方、太田さんは、地元の銀行を退職後、企業や団体で要職に就き多忙な生活を送っていたところ、さとに田園クリニックより、人工透析患者への給食提供の要請を受け、低グルテリン米を給食に使用したいと考えていた。低グルテリン米は、一般の米を酵素液に浸しタンパク質を除去した低たんぱく米と異なり、体に吸収されやすい易消化性タンパク質(グルテリン)の含量が低いという特性を持った品種の米。低グルテリン米のことを知った太田さんは、先進事例として、金沢医大病院に低グルテリン米を納入していた富山県氷見市の「くるみ営農組合」を視察。また、鳥取県の専門員の指導も受け、生産できるという確信を得て、米澤さんに声をかけた。平成21年9月、太田さんと米澤さんがタッグを組んだ「さとに医食同源」の農業と医療が連携した事業がスタートした。

生活の中で治療していく生活習慣病。だからこそ食事にこだわりたい

03_620C7333.JPG太田義教さんの長男・匡彦さん(49)は、奈良県の医大を卒業後、奈良県と鳥取県の病院で勤務、平成19年に出身地である里仁地区に、腎臓病患者の食事を重視する「さとに田園クリニック」を開業した。 人工透析ベッドを備えた「さとに田園クリニック」は、開業当初、患者向けの食事を市内の給食業者に委託していたが、院長の太田匡彦さんの理想とは異なるものだった。「地元産の食材を使った、家庭料理のような手作りで美味しいバランスの取れた医療食を提供したいと思っていました」と話す太田院長。そんな理想を、父・太田義教さんに打ち明けたところ、地元・里仁の農地で作った低グルテリン米や新鮮な食材で医療食を提供していこうという構想が立ち上がった。

 日本人の成人の約8人に1人は腎臓になんらかの障害をもつ慢性腎臓病を患っていると言われ、新しい国民病と言われるほど広がりを見せている。「腎臓病や糖尿病、高血圧などの生活習慣病は、薬で治していくものではなく、生活の中で治していくものです。運動療法や食事療法などに取り組んでいかないといけないのですが、患者が自宅でできることには限界があります。現在、さとに医食同源さんに、患者を支えるための医療食を用意してもらっていますが、これが結果的に治療に結びつけられればと期待しています。既に、低グルテリン米を使った給食を提供することによって、患者の食に対する意識が変わり、食事療法に取り組もうというモチベーションは上がってきています」と太田院長は話す。

医療食での採算性、人材不足など浮き上がってきた課題を
これからひとつひとつ解決していく

02_620C7132.JPG現在、給食事業部のスタッフは14名。営農部4名、さとに千両のスタッフ6名。役員2名を合わせた26名によって、さとに医食同源は運営されている。 現在、さとに医食同源の給食部では、さとに田園クリニックの人工透析の患者に向け、年間2万食の食事を納め、この他にも、2014年5月からはクリニックに併設されている老人ホームの食事も委託されている。給食メニューは、さとに田園クリニックの管理栄養士と、さとに医食同源の栄養士と調理師によって共同で開発されており、患者からの評判は上々だ。「透析が終わった後、クリニックのダイニングで食事をすることができ、持ち帰ることも可能です。意外に、この持ち帰り弁当がヒットしました」と話す太田代表。しかし、厚生労働省が認めている透析患者への給食費には上限がある。低グルテリン米や地元産の新鮮な食材を使用することによって原価が膨らみ、採算が合わない。経営面での課題が出てきた。

 一方、米澤さんを中心とした営農部は、2012年から国が始めた「人・農地プラン」に後押しされるような形で、作り手や跡継ぎを欠く近隣農家の農地を集積。6haまで拡張した農地の一部で低グルテリン米の栽培を行い、その他、白ネギや漬物用の小玉スイカなども栽培している。平成24年~25年には、鳥取県と鳥取市の6次産業化支援事業により、ライスセンター(精米倉庫)やコンバイン、トラクターなどの設備・農機具を整えた。「高齢の農家の方から、『うちの農地も頼むよ』と声をかけられ拡張してきましたが、今度はこちらの手が足りなくなってきました。新たな農地の集積は抑え、人材の育成と低グルテリン米をはじめとする農産物の販路開拓が必要と考えています」と、米澤さんは話す。

食事指導の場であり、健康食を一般の人に普及させていく場
プロモーション拠点としての役割を果たす古民家レストラン

04_620C7457.JPG古民家レストラン「さとに千両」は、築80年・木造二階建ての母屋を改装。改装にあたっては、鳥取環境大学のゼミの教材として提供し改築計画の提案を受けた。 さとに医食同源は、給食の提供と共に、腎臓病患者が家族と共に楽しめる食事指導(料理教室)の場も設けて欲しいと、さとに田園クリニックから要請されていた。給食事業は、兼業農家を営んでいた太田代表の自宅の農機具庫を改装してスタートさせたが、食事指導の場となる古民家レストラン「さとに千両」は、太田代表が住んでいた旧住宅の母屋を改装してオープン。「古民家レストランが果たす役割は、健康食の普及です。腎臓病患者や家族のための料理教室以外に、健康を気遣う一般家庭の人たちにも、低グルテリン米を食べてもらい、地元の食材をふんだんに使ったバランスのとれた食事を通じて、健康になってもらえるようなメニューを心がけています。利益をあげていくというよりプロモーションを担う役割を果たす場所。観光にもつなげていけたらと考えています」と、太田代表は話す。

 古民家レストランの運営については、「低グルテリン米を医療食に活用し、古民家レストランで健康食を普及・提供する事業」として、平成24年2月に、六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の認定を受けている。ちなみに、さとに千両の人気メニューは、月毎にかわる旬の食材を使った「季節の彩り弁当」や、鳥取県内の漁港から仕入れる貴重な干物を使った「ひものランチ」など。鳥取市街地から車で10分というアクセスも手伝い、観光客も増えてきているという。

親子だけではできなかった。
地域の人と話し合い進めてきた農業と医療の6次産業化

05_620C7263.JPG写真右から、鳥取6次産業化サポートセンターの松澤以尚さん、兼業農家の市村淑樹さん、さとに医食同源の太田代表と米澤さん、中嶋米穀の中嶋秀雄さん、中国四国農政局 鳥取地域センターの平野知子さん。 太田代表が米澤さんとタッグを組みスタートさせた、さとに医食同源の6次産業化で、欠かせない人物がもう一人いる。それは、鳥取市内でこだわりの米を販売している中嶋米穀の中嶋秀雄さん(60)。営農部で生産していた低グルテリン米「春陽」は食味が淡白だったため、中嶋さんにサポートしてもらい、品種が異なる低グルテリン米の「LGCソフト」とブレンド。品質、味ともに自信をもって提供できる米ができ、「さとに医食同源米」として商標登録した。「さとに医食同源米」はクリニックの医療食や古民家レストランの食材として使われる以外に、これを原料に甘酒としても商品化。またピザやきりたんぽなどにも活用しようと商品開発が進められている。

 一方、さとに田園クリニックの太田院長からは、「これから地域包括ケアが進み、在宅で介護と医療が一体化していきます。地域の人が自宅での食事に困らないよう、できれば宅配まで事業を広げてもらえたらと思っています」と、宅配サービスに期待を寄せている。太田代表自身も宅配サービスを整備していきたいと考えているが、そのためには、人材育成、設備の増強が必要とされる。「私たちの取組が、農村の原風景である地域の農地を守り、若者の雇用を生み出す医福食農連携のモデルケースになったらと考えています」と太田代表は話す。

サポーター

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〜ここで働く仲間、外部でサポートしてくれる仲間がいて成り立っている〜

株式会社さとに医食同源をサポート

中嶋米穀株式会社
中嶋 秀雄さん

さとに医食同源の「米」の食味を支える最強のサポーター

サポーター_02_620C7446.JPG五つ星お米マイスター、米・食味鑑定士の認定を受け、鳥取県農産物検査員も務める中嶋秀雄さん。 「さとに医食同源の米の味を決めているのは中嶋さんといっていい」。さとに医食同源の代表・太田さんと取締役の米澤さんが絶大な信頼を寄せているのが、中嶋米穀の中嶋秀雄さん(60)。さとに医食同源で収穫された米の食味を計り、ブレンド米を提案。品質、味ともに自信をもって提供できる「さとに医食同源米」を完成させ、商標登録までサポートした。「過去に、病院の栄養士さんから低グルテリン米の相談を持ちかけれたことがありましたが、コスト面を理由に病院側からの賛同を得られず事が運ばなかったことがありました。今回、太田社長からこの地域でやってみたいという話を持ちかけられた時、お医者さんがいて、さとに医食同源の給食部門があって、それぞれの気持ちが通じ合っていることを感じ、一緒にやってみよう!と参加しました」と中嶋さん。

 「ただし、経営が成り立たなければならない。商品が売れなきゃいけません。低グルテリン米も大事ですが、ちゃんと流通に乗せられる米や野菜を作ることが最も大事です。その基礎を築くために、どの作物をどれだけ作るかという計画策定を米澤さんがやっていらっしゃいます。どんな農業でも経営を頭に入れて進めていく必要があります」と、さとに医食同源の今後を見守っている。

農地提供農家
市村 淑樹さん

地域農家と連携した6次産業化で、高齢者の負担を軽減

サポーター_01_620C7202.JPG里仁に生まれ、里仁で育った市村さんは今年で82歳。「お米を食べる人がもっと増えたら」と切に願っている。 市村さんは兼業農家を続けてきたが、定年退職後は農業に専念。しかし、田畑の維持・管理に体力的な限界を感じていた。「この地区には高齢の農家の方がかなりおられて、みなさん同じ思いをされていると思います。隣近所で協力して、どうすれば農地を守れるか悩んでいましたが、集落営農では無理があると感じました。そんなときに、さとに医食同源さんから農地集積の話をいただき、重荷が取れたような気がしました。サポーターというより、私たちがサポートされたような感じでしょうか。本当に助かりました」と話す。

 市村さんは平成24年に農地を提供し、さとに医食同源の6次産業化を見守ってきた。「6次産業化はええことだと思います。でも、結局は米を食べてもらわんとですね。特に、都会の人たちにはお米を食べてもらわないと。なんとかいいプロモーションができたらええなと思います」と、話す。

達人からのメッセージ

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「透析患者は治療のために定期的な通院を強いられ、厳しい食事制限がつきまといます。ですが、これは患者さんだけの問題でなく家族にとっても重要な問題です。透析患者のいる食卓では、メニューに違いがあるだけでなく、食事の時間もずらしているケースも少なくありません。家族で一緒に食事ができるようにしていきたいですし、子供や孫が羽ばたいても安心して住めるまちにしていけたらと思っています」。

株式会社さとに医食同源の商品

001 さとに医食同源米(低グルテリン米)
低グルテリン米として育成された「春陽」と「LGCソフト」をブレンドした米。低グルテリン米とは、お米に含まれるタンパク質のうち、身体に吸収されやすい易消化性タンパク質(グルテリン)の含量が低いという特性をもった品種の米。タンパク質の摂取制限が必要な人へ腎臓への負担を軽減させるために品種改良された。※消費者庁許可の特別用途食品(病者用食品)ではありません。

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002 さとに桃源郷米(特別栽培米のコシヒカリ)
さとに医食同源が鳥取市里仁地区で低農薬・低化学肥料で栽培した特別栽培米のコシヒカリ。

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003 さとに医食同源の給食
さとに医食同源がさとに田園クリニックに納品している、栄養制限が必要な患者向けの食事(一例)。給食メニューは、さとに田園クリニックの管理栄養士と、さとに医食同源の栄養士と調理師によって共同で開発されている。

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004 さとに千両のひものランチ
古民家レストラン「さとに千両」で提供されている「ひものランチ」。干物は、水揚げされた旬の魚を田後漁港婦人部が一枚一枚手間をかけ天日干しで作られたもの。この他にもランチでは、地元で作った季節の野菜や旬の素材をたっぷり使用した「季節の彩り弁当」や、出雲そばに地元素材のこだわりのだし汁を組み合わせた「おそばセット」も人気。18時以降はディナータイムとなりコース料理や鍋料理を提供。また、春~秋頃までは裏庭でバーベキューもでき、低グルテリン米の焼きおにぎりも楽しめる(要予約)。

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