有限会社伊万里グリーンファーム

達人名:前田清浩 Kiyohiro Maeda 
    有限会社伊万里グリーンファーム 代表取締役
ジャンル:農業 Agriculture
佐賀県伊万里市 Imari-City Saga

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伊万里のねぎ名人が目指す、ロスをゼロにしていく6次産業化!

有田や唐津などと並び、焼き物の町として有名な佐賀県伊万里市は、佐賀牛発祥の和牛の産地で、西日本でも有数の梨の産地としても名高い。米や小ねぎなどの生産も多く、伊万里グリーンファームは、この地で40年以上農業を営み、約236アールのハウスで小ねぎを栽培している。2代目の前田清浩さんは1988年に銀行員から農家に転身。先代から農業の技術を学び、土作りや水にこだわった小ねぎの栽培で、1997年には佐賀県知事より、さが農業逸品づくり農業者「こねぎ部門」で「ねぎ名人」として認定された。ねぎ名人が育てた小ねぎを使用した商品開発・販路開拓は、県内でも先進的な6次産業化の取組と評価されている。昨今では、そのノウハウを活かし前田さんは、地元特産品の「伊万里牛」を使った地産地消の活動や、近隣農家が栽培する梨の加工品の開発にも取り組んでいる。
※写真は前田清浩さん(55)と、経理担当で野菜ソムリエとして商品開発にも取り組む奥様の真由美さん(54)、そして加工を担当する長女の真菜さん(27)。
(2015年6月4日 取材・撮影/RPI)

有限会社伊万里グリーンファーム
http://www.imari-gf.com/

インタビュー

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土作りや水にこだわった栽培で高品質の小ねぎを生産。
就農から9年で「ねぎ名人」に。

01_DSC00304.JPG伊万里グリーンファームの小ねぎは、天候に左右されいくい施設(ハウス)で栽培されている。伊万里市内で7カ所、約236アールの敷地に建設されているハウスの数は64棟。 農家の長男として育ったものの、農業に興味がなかった前田清浩さんは、地元の銀行に就職。しかし10年後、家業を継ぐか終わらせるかの選択を迫られ、28歳で就農。先代からの雇用者のことも考えて法人化し、「経営」する農業を意識した。しかし、農業に関してはまったくの初心者。「とまどうことばかりでした。銀行に勤めていた時は、マニュアルや数値化していく中で仕事をしていましたが、就農して最初に感じた農業は、アバウトで勘でやる仕事という印象でした。“種をまいて何分間水をやるか?”もわかりません。父に答えを求めると、その日の土の水分量や、明日の天気を見ながら水をかけろと言われました。難しかったですね」と当時を振り返る。

そうして、先代から農業の技術を学び、ねぎの産地にも赴き、見様見真似で小ねぎの栽培に取り組んでいるうちに、前田さんは先代の意志を継ぎ、土作りや水にもこだわるようになった。堆肥は有機質のものを、そして水は、磁石による磁気活性水を使用。肥料に頼らない有機栽培に取り組んでいるうちに、「伊万里グリーンファームの小ねぎは、糖度が高く、食感もいい。さらに日持ちもする」とバイヤーや消費者から評価され、前田さんは、1997年に「さが農業逸品づくり名人(こねぎ部門)」を受賞した。

相場に左右される農業経営から脱却。
直接販売に切り替え、カットねぎに着手。

02_DSC00258.JPGハウスで収穫した小ねぎは、下処理をした状態で加工場に搬入。余分な葉を除き、サイズごとに選別、出荷予定表を基に計量して袋詰めにして出荷する。 しかし、国内のねぎの産地拡大や中国やアジアからの低価格品に押され、国産ねぎの価格は低下していく状況。「一番問題だったのは価格が相場で動くこと。同じ規模で同じことをやっていても年間の売り上げがまったく違う年があります。売上よりも人件費が高いというのが何カ月もあり、これでは安定した経営が難しい」と感じた前田さんは、直接販売に方向転換。「佐賀県農業法人協会で、自分で作った農産物に自分で値段をつけて売っている方がいらしたので、学ばせてもらいました。」

 直接販売に切り替え、まずは、従来の袋入り生鮮商品の小ねぎを、市場やスーパー、飲食店に販売。その中で、スーパーマーケットのマネージャーから、「九州も都市部のように、カット野菜が主力になる可能性がありますよ」とアドバイスをもらい、2003年に、カットねぎ事業をスタートさせた。品質はいいのに、曲がっているだけで商品として出荷できなかった小ねぎも、カットねぎの材料としては活かせる。手作業で商品化したカットねぎは、量販店のスーパーと契約を結ぶことになり、設備投資に慎重だった前田さんは、このタイミングで小ねぎをカットする機械を導入した。

新たな商品開発のきっかけは「もったいない」。
さらなるひと工夫でオリジナル商品に。

03_DSC00226.JPG03_DSC00226.JPGスライサーをはじめ、パックに詰める機械、袋詰めする機械など設備投資が必要。経営者には、機械を導入するか人材を採用するかの判断が迫られる。 「カットねぎは順調に売り上げを伸ばすことができ、営業しなくても自然に売れるようになりました」と前田さん。袋入り小ねぎは、需要と非需要期の価格の差があり過ぎて不安定だったが、カットねぎは、価格を決めて提供しても、消費量が変わらず、安定供給できる主力商品となった。次なる加工品の展開について前田さんは、「毎日200kg近く出る小ねぎのロスを減らしたく、なにか活かせる方法はないか?」と考えていた。茹でたねぎを巻いて作る熊本の郷土料理「一文字のぐるぐる」を試作してみたり、様々な商品開発を行う中、乾燥ねぎの試作品が完成。お湯に戻すと生に近い状態になり、「これはいい!」と、前田さんの中でスイッチが入った。

 「でも、もう少しひと味つけたい。乾燥ねぎは、輸入もので安い商品が市販されているし、高品質の小ねぎを使用するだけではなく、加工商品としてさらに何らかの付加価値を付けたかった」と前田さん。そんな時、若い女性客から「抹茶塩はあるのに、ねぎ塩はないんですか?」と質問されたことをきっかけに調べてみたところ、市場に無いということを確認し、ねぎ塩の商品化に着手。しかし、ねぎ塩が他社に真似されることを予想した前田さんは、さらさらとした通常の塩ではなく、顆粒状の塩を使用したねぎ塩玉を考案。知人から加工業者を紹介してもらい商品化した。

蓄積したノウハウやネットワークを
地域の特産物の地産地消活動やブランド化に注ぐ。

04_DSC00339.JPG急速の冷凍庫で保管されている試作段階のねぎのペースト。「まだまだ工夫が必要」と話す前田さんのアタマの中には、堆肥の一部としても利用できないかなど、様々なアイディアが。 従業員を12名、パートを8名抱えても、伊万里グリーンファームは生産が中心。「営業マンはいないので、なんでも自分でやらなければならなりません」と前田さん。だが、生産や加工に携わりながら営業をするには限界がある。そこをフォローしてくれたのが、佐賀県庁の流通課や伊万里市商工会議所の経営革新支援課だった。「展示会に出展しても実際に現地に行けないことがありますが、担当の方が代わりに商品の説明や営業もしてくれるのは本当に有難いですね。販路開拓だけでなく、商品開発の面でも支援いただき助かっています。」

 加工に取り組み始め7年。軌道に乗ってきたと感じた前田さんは、2013年に六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の認定を受けた。「ある程度、商品開発や販路開拓が進んでいくと、生産能力を高めるために設備が必要になってきます。大きな設備投資にも備えておくことが必要と感じ、認定を受けました」。前田さんのアタマの中には、規格外の小ねぎを利用した商品開発のアイディアが次から次に浮かぶ。「次の商品開発のために必要な情報が集まってきます。そういうパイプもつながってきていると感じています」と前田さん。蓄積したノウハウは、自社のためだけでなく、伊万里牛や梨など、地域の特産物の地産地消の活動にも注がれ、伊万里の6次産業化を牽引している。

サポーター

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〜ここで働く仲間、外部でサポートしてくれる仲間がいて成り立っている〜

有限会社伊万里グリーンファームをサポート

伊万里商工会議所 経営革新支援課 専門官
平松保男さん(67)

バイヤーに出会って意見を聞く。改善していくことも
商品開発の大事なポイントのひとつ。

サポーター_DSC00388.JPGサポーター_DSC00388.JPG平松さんは東京でプロダクトデザインの仕事に携わった後、奥様の実家がある伊万里市に移住。 平松さんは伊万里商工会議所経営革新支援課の専門官を務める傍ら、6次産業化プランナーの肩書きも持つ。伊万里グリーンファームの前田さんとは、2009年、伊万里の食材を使った商品開発のプロジェクトで知り合うことになった。
この頃、「伊万里香ねぎ」や「香ねぎ塩」などの加工商品を販売していた前田さんは、日本商工会議所が主催する「feel NIPPON(地域力活用新事業∞全国展開プロジェクト)」への出展を目指し、新商品を検討していた。平松さんと話し合いを重ねていくうちに、主力商品の乾燥ねぎを使ったスープを開発しようということになり「伊万里香ねぎスープ」が完成。このスープを「feel NIPPON」の会場で試飲してもらいアンケートを収集、それを基にパッケージや価格調整などさらに改善を行い販売を始めた。

「こういった展示会や商談会に出展して、バイヤーさんに出会って意見を聞き、改善していく作業はとても大切なことです。出会いがないと改善のしようがありませんから、支援課のメンバーとして、また6次産業化プランナーとしても、そこのところをお手伝いできたらと思っています」と平松さんは語る。

まずは、事業者自身が動くことから始まる。
そして、周りも動き出す。

サポーター02_DSC00489.jpg「前田さんは動く人。ネットワークを広げていくと、新たな6次産業化の種が生まれます」と話す平松さん。 「地域資源は磨けばもっと良くなります。ただ、6次産業化でいえば、一次加工品がちゃんとできていないと応用品ができません。ここがちゃんとできれば、あとは人的ネットワークを使って、時間をかければ商品開発や販路開拓は見えてきます。ただ、6次産業化に取り組まれてる方の中には、まだネットワークを構築できていない方がいらっしゃいます。新しいことを始めるには、人の知恵や経験を借りることが大切です。ただし、まずは事業者自身が動かないと何も始まりません。」

「そういった意味では、前田さんは動く人です。伊万里グリーンファームさんの場合、商品開発も販路開拓も前向きに動いたことで、ある程度ネットワークが構築できています。それを他の方たちが見て、“そういうやり方があるんだな”と知ってもらえれば、新たな6次産業化の種が生まれてくると思います。見本市も佐賀県内だけ、九州の中だけでの出会いではスケールが小さいです。東京に出ればいろんな方と出会え、経験値も増えるでしょう。そういったことを経験する人が増えていくことが地域の活性化につながっていくのではないかと思っています。」

達人からのメッセージ

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最初から高いハードルを作らず、まずはやれることから。考えていることを試作したり、実行することが大切だと思います。考えはあっても、実際に動ける方は何割ぐらいでしょう。とにかく、小量でもいいので、失敗してもいいからやってみることです。でないと次の段階に進めません。そして、作ったら終わりでもないし、売れたから終わりでもありません。先に進むためには、常に動くしかありません。

有限会社伊万里グリーンファーム

001 カット伊万里香ねぎ
量販店の青果マネージャーに認められたことから走り出した、伊万里グリーンファームの主力商品。「生のカットねぎは、シャキシャキ感があり、ごはんにかけて食べても意外と美味しいですよ」と前田さん。ねぎ名人が手がけた小ねぎの美味しさをそのまま味わえる。

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002 伊万里香ねぎ(乾燥ねぎ)
手軽に使える乾燥ねぎ。「熊本の同じ農業生産法人の方と話をする中で、乾燥ねぎの話が出て、テスト的に作ってもらったら、非常にいいものが出来ました。今でも、うちの商品で一番自信があるものです」と前田さん。ジッパー付きのアルミ袋に入ったものは3サイズ(5g、10g、50g)、瓶詰タイプは7g。お湯に戻すと生に近い状態になる。

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003 香ねぎ塩、香ねぎ塩玉、ごま香ねぎ塩ふりかけ
乾燥ねぎを応用した加工商品は、この3つの商品からスタート。「香ねぎ塩」は、若い女性客から「抹茶塩はあるのに、ねぎ塩はないんですか?」と質問されたことがきっかけで商品化。チャーハンの調味料として、また天ぷらにも合う。「香ねぎ塩玉」は、噛めば噛むほどねぎの香りが広がり、お寿司や生牡蠣、ステーキと相性が良い。「ごま香ねぎ塩ふりかけ」は、ごはんだけでなくトーストにふりかけても美味しい。

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004 伊万里香ねぎスープ
伊万里ねぎがメインのチキンコンソメ味のスープ。ゴマ、コラーゲン、ねぎパウダーも加わり、体を温めてくれる。あっさりとした体に優しいスープ。

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005 伊万里香ねぎ味噌大豆(右)、伊万里香ねぎ塩黒豆(左)
佐賀県伊万里産の乾燥ねぎを佐賀県産大豆と国産黒豆にコーティングした豆菓子。食物繊維、鉄分を多く含んでいる。

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006 香ねぎドレッシング
ご当地グルメ「伊万里牛ハンバーグ」を出しているレストランが、伊万里グリーンファームの小ねぎを使ったドレッシングを提供。そのドレッシングのレシピの無償提供を受け、野菜ソムリエの前田さんの奥様が商品化。ねぎだけのタイプと柚子胡椒を加えたタイプの2種類がある。焼肉のタレとしても◎。

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