株式会社 山田の牡蠣くん

達人名:佐々木俊之 Toshiyuki Sasaki 
    株式会社 山田の牡蠣くん 代表取締役
ジャンル:漁業 Fishery
岩手県下閉伊郡山田町 Yamada-machi Shimohei-gun Iwate

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地元の漁師や県内の業者を巻き込み、6次産業化で地域の復興を牽引

岩手県山田町で牡蠣の養殖を営んでいた佐々木俊之さんは、2009年から自社で牡蠣の加工品の製造・販売に着手。燻製にした牡蠣をオリーブオイル漬けにした『山田の牡蠣くん』を完成させ、続いてアカザラ貝の燻製をオリーブオイル漬けにした『山田のあかちゃん』を製造・販売。パッケージ改良などで売上げを大幅にアップさせ、さらなる事業拡大に向け加工場を新設するが、2011年の東日本大震災で加工場は全壊。しかし、佐々木さんは4カ月後に事業を再開。多くの人々の協力を得て製造が叶った『山田の牡蠣くん』は『友情の牡蠣くん』(限定販売)として復活を果たした。2013年~2014年にかけては、県内で6次産業化に取り組む農家とのコラボ商品『山田の牡蠣くん 大西ファーム バーニャカウダ漬け』と『山田のしうり貝 大西ファーム ドライトマト漬』を発売。これまでに製造・販売している4つの商品はすべて、岩手県水産加工品コンクールで県知事賞を受賞。事業の発展と共に、地元の漁師や県内の業者を巻き込み、原料の調達・商品開発において連携の輪を広げ、6次産業化で地域の復興を牽引している。
(2015年6月24日 取材・撮影/RPI)

株式会社 山田の牡蠣くん
http://kakikun.shop-pro.jp/

インタビュー

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ノロウィルスの風評被害から始まった、
養殖牡蠣による佐々木さんの6次産業化

01_DSC_3909.JPG1日におよそ15~20kg、多い時は30kgの牡蠣の殻を剥き加工する。 船越(ふなこし)半島と重茂(おもえ)半島に抱かれるように三陸海岸のほぼ中央に位置する山田湾は、湾の入り口が狭く波が穏やかな漁場。牡蠣やウニ、ホタテといった海の幸が豊富で、特に殻付き牡蠣は築地市場でトップシェアを誇っていた。漁師の佐々木俊之さんも長年の経験から季節や海水温の変化を捉え、湾口または湾奥といった場所の違い、そして毎年の気候の変化を一番良い環境で牡蠣を養殖していた。
しかし、2006~2007年のノロウィルスの流行により風評被害を受け、牡蠣の売上げは大幅にダウン。佐々木さんも窮地に立たされた。他の漁師たちは水揚げした牡蠣に加熱処理を施して出荷するようになったが、佐々木さんはこの機会に、牡蠣の加工品製造に取り組み始めた。

 「加工の技術は特に学んでいませんが、料理は好きでしたから。いろんな調味料を試して、作り方も試行錯誤していたら、そのうち仲間から『美味しい』と言われ、注文を受けて作るようになりました」と佐々木さん。それが『山田の牡蠣くん』の始まりだった。だが、当初の商品名に「山田」は入っておらず「牡蠣くん」だけ。パッケージのラベルは友人からパソコンの使い方を教えてもらい、佐々木さんが自分でデザインした。

『牡蠣くん』から『山田の牡蠣くん』へ。
商品名を変えたことで地元ファン拡大

02_DSC_3928.JPG『山田の牡蠣くん』の魅力について、「塩とオリーブオイルと牡蠣の燻製だけ。とてもシンプルです。あともうひとつ、私の愛情ちょっとだけ」と話す佐々木さん。 「せっかく商品は完成したのに、どうやって売っていいのかわかりませんでした」と佐々木さん。そんな時に出会ったのが商品開発コーディネーターの五日市知香(株式会社パイロットフィッシュ)さんだった。『牡蠣くん』を試食した五日市さんは、「いくら中身が美味しくても、このパッケージデザインでは売れない」とストレートに伝えたが、佐々木さんはこれに反発。お互いに疎遠になってしまったが、しばらくして佐々木さんは思い直し、五日市さんにパッケージの変更を依頼した。五日市さんは、佐々木さんの商品に対する思いや要望を聞きながら、瓶やパッケージデザインを提案。佐々木さんに選んでもらった。

 新しいパッケージには、『山田の牡蠣くん』と記されていたが、これは五日市さんからの提案。「牡蠣は全国どこにでもありますから、山田とわかるように地名を入れた方がよいと思いアドバイスをさせてもらいました。山田という地域名なのか、それとも山田さんという人が作っているのか? その方がお客様も興味を持ってくださるんじゃないかな?と思いました」と話す。地名が加わったことで、これが山田町の土産物としても重宝されるようになり、地元ファンの拡大にもつながった。

新しくなったパッケージで売り上げが大幅にアップ!

03_kpc-1261.jpg加工商品第2弾『山田のあかちゃん』は、アカザラ貝を燻製にして味付けをした商品。収益にならなかった貝が加工商品の原料になることにより、地元の漁師たちも潤う。 新パッケージと同時に製造方法も一部変え、これまでの『牡蠣くん』ファンからは「さらに美味しくなった」と高評価。そして、かねてから佐々木さんを悩ませていた販路開拓についても、五日市さんがアドバイス。製造数が限られ賞味期限も短かったので、岩手県内で品物にこだわったセレクトショップや道の駅を中心に納品。そして、マスコミの力を借りて商品を紹介してもらうことで、知名度が上がり売上アップにもつながった。もちろん、新しくなったパッケージの効果も大きかった。「催事でそれがよくわかりました。試食用の商品がなくなっても、パッケージだけを見て買ってくれるお客様の反応を目の当たりにして、パッケージの重要性を改めて知りました」と佐々木さん。

 そして佐々木さんは、第2弾の加工商品の開発に着手。材料に選んだのは、養殖の牡蠣に付着してしまうアカザラ貝。漁師たちの間では、自家用で消費するか廃棄してしまう貝だが、「私はホタテよりも美味しい貝だと思っています」と佐々木さん。完成した商品は『山田のあかちゃん』と名付けられ、原料を提供してくれる漁師たちの間でアカザラ貝は「あかちゃん」と呼ばれ親しまれるようになった。「今度は地域のことを考えていきたい」という佐々木さんの思いは、仲間の漁師たちにも伝わり始めていた。

地元の漁師や県内の業者を巻き込み、
6次産業化で地域の復興を牽引

04_DSC_3983.JPG佐々木俊之さん(左)と商品開発コーディネーターの五日市知香さん(右)。意見が違いぶつかることがあっても、五日市さんは6年間に渡り、佐々木さんの6次産業化を見守ってきた。 『山田の牡蠣くん』と『山田のあかちゃん』で2009年度、2010年度の岩手県水産加工品コンクールで県知事賞を受賞した佐々木さんは、生産量アップと新商品開発を目指し加工場を新設するが、2011年3月の東日本大震災で加工場は全壊。漁船、牡蠣の養殖いかだ、そして自宅までも失った。しかし、すでに全国に広がっていた『山田の牡蠣くん』ファンから励ましの声を受け、佐々木さんは4か月後に事業を再開。自治体の支援や多くの人々からの協力を得て製造された『山田の牡蠣くん』は『友情の牡蠣くん』(限定販売)として復活を果たした。

 震災後しばらくは、花巻市に生産拠点を置き、材料も他県産の牡蠣を使い製造を行っていたが、2013年には山田町に戻り牡蠣の養殖も再開。2013年には、五日市さんが架け橋となって、同じ県内で6次産業化に取り組む大西ファームと連携して、『山田の牡蠣くん 大西ファーム バーニャカウダ漬け』を発売。第4弾商品の「山田のしうり貝」も大西ファームとのコラボ商品で2014年から発売。原料の調達、商品開発の連携などで、地元の漁師や県内の業者を巻き込み、6次産業化で地域の復興を牽引している。

サポーター

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〜ここで働く仲間、外部でサポートしてくれる仲間がいて成り立っている〜

株式会社山田の牡蠣くんをサポート

株式会社パイロットフィッシュ 代表取締役
商品開発コーディネーター
五日市知香さん(48)

どれだけ意見がぶつかっても、いい商品を世に送り出すために正直に話し合う

サポーター_01_82_DSC_3892.JPGフリーペーパーの営業、編集・広告の代理店、印刷会社の営業を経て2009年に独立。商品開発コーディネーターとして岩手県を中心に全国を飛び回っている五日市さん。農林水産省支援事業 食農連携コーディネーター、6次産業化ボランタリープランナーなども務める。 株式会社山田の牡蠣くん代表の佐々木さんとは知人の漁師さんを通して知り合いました。ご自身で養殖された牡蠣を加工されていて、「どうしたら売れるようになるのか?どこに販売していったらいいのか?」といったアドバイスを求められました。商品を見せていただき、まず気になったのがパッケージのデザインでした。自慢の牡蠣を燻製にしたオリーブオイル漬けは、当時としては珍しく、試食をしても大変美味しく商品価値が高いものと感じましたが、パッケージが伴わない。正直申し上げると安っぽいデザインと感じました。

 佐々木さんには、「商品の品質や価格帯に合ったお洋服(パッケージ)を商品に着せてあげた方がいいですよ」と申し上げましたが、ご自身で作られたパッケージに対して思い入れが強かったせいか、なかなか聞き入れていただけなかったですね。しばらくして、佐々木さんから「お手並みを拝見したい」とご連絡いただき、正式に商品開発コーディネーターとして関わらせていただくことになりました。

パッケージのデザインは引き算。
スッキリさせて、消費者に一番の魅力を訴える

サポーター_02.JPG佐々木さんの思いが詰まった改良前のパッケージ。五日市さんはオリーブオイルの美しい色を見せるためラベルの要素を整理してスッキリさせた。 佐々木さんからは「お手並み拝見」と私に一任されましたが、実は、実際に作業していく過程で大切なのは、依頼された生産者さんの意志です。まずは、瓶の選定から始めましたが、私の考えを申し上げつつも佐々木さんの意志を尊重しながら進めました。そして、ラベルに掲載する要素を整理していく作業でも佐々木さんに確認いただき、最終的に3パターンのデザイン案の中から選んでいただきました。大切なのは事業者が「どんな商品を、どんなお客様に提供していきたいか」というイメージをきちんと持っていただき、そのために何が必要かを決めていただくことです。

 また、佐々木さんには同じ岩手県内で6次産業化に取り組まれている大西ファームさんを紹介させていただき、燻製の牡蠣とバーニャカウダのコラボ商品が出来上がりました。岩手県の海の美味しいものと、畑の美味しいものが出会い、今までになかった商品が完成したことでマスコミからも注目され、様々な媒体で紹介いただいたのはありがたく、私もとても嬉しく感じました。いろんな組み合わせにより商品の可能性を引き出していけることも商品開発コーディネーターとしての楽しみで、役割のひとつかなと感じています。

達人からのメッセージ

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6次産業化って改めて構えなくていいのではないでしょうか。素材をどうしたら美味しく食べれるか? というのは生産している方々がよく知っていること。6次産業化は、そこを追求し広げていくものですが、私たち生産者には、パッケージのデザインや販売の方法は経験がありません。そういう部分は頼るべき人に頼る。一人で頑張らないことが大切だと思います。

株式会社 山田の牡蠣くん

001 山田の牡蠣くん(大瓶・小瓶)
大粒の牡蠣のむき身を独自の製法で加工。味付けには塩とオリーブオイルだけを使用し、保存料、化学調味料は一切使用していない。2009年度に岩手県水産加工品コンクール県知事賞受賞。大瓶220g、小瓶100g

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002 山田のあかちゃん(大瓶・小瓶)
天然アカザラ貝のむき身だけを独自の製法で加工。味付けには岩手県の老舗メーカーである八木沢商店の無添加醤油「丸むらさき」とオリーブオイルだけを使用し、保存料、化学調味料は一切使用していない。2010年度に岩手県水産加工品コンクールで県知事賞を受賞。大瓶220g、小瓶100g

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003 山田の牡蠣くん 大西ファーム バーニャカウダ漬け(小瓶)
商品開発コーディネーター五日市さんからの提案で実現した、岩手県内で6次産業化に取り組む大西ファームとのコラボレーション商品。大粒の牡蠣のむき身だけを独自の製法で加工し、大西ファームのバーニャカウダで漬け込んでいる。季節限定で数量限定の商品。2013年度岩手県水産加工品コンクールで県知事賞を受賞。小瓶100g。

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004 山田のしうり貝 大西ファーム ドライトマト漬け(小瓶)
大西ファームとのコラボ商品第2弾。 山田湾で育ったムール貝を、独自の製法で加工。 燻製にしたムール貝とドライトマトの爽やかな酸味を楽しめる。 2014年度岩手県水産加工品コンクールで県知事賞受賞。こちらも季節限定で数量限定で販売。小瓶100g。

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