農業生産法人 株式会社クックソニア

達人名:芳野幸雄 Yukio Yoshino
    農業生産法人 株式会社クックソニア 代表取締役
ジャンル:農業 Agriculture
沖縄県名護市 Nago-City Okinawa

メイン_DSC00848.JPGスクリーンショット(2012-09-26 17.02.46).png

東京から沖縄へ移住して新規就農
地域の魅力を伝える6次産業化をよそ者が牽引

芳野幸雄さんは、1970年生まれで東京都出身。東京で農産物などの流通に15年間携わり、自分で作った野菜を自分で値段を決めて売りたいと考え退職。2003年に沖縄県名護市に移住して農業を始める。新規就農の厳しさを経験しながらも、2009年に農業生産法人 株式会社クックソニアを設立。「沖縄畑人(はるさー)くらぶ」も発足させ、自身に続く新規就農者の支援も行っている。また、地域の飲食店や企業らと連携し、”やんばる”(沖縄県北部)に来ないと味わえない商品を開発する「やんばる畑人プロジェクト」を立ち上げ、国産では難しいとされていたカレー粉「やんばるスパイス」を開発。地域ぐるみの6次産業化で、地域のものを食べて幸せになってもらうプロジェクトを牽引している。
写真は、名護市が6次産業化による農業の活性化を目的に整備を進めている「なごアグリパーク」の施設内に2014年にオープンした「Cookhal(クックハル)」。「クックソニア」が運営しているこのカフェでは、やんばるスパイスを使ったメニューや、畑人くらぶのメンバーが作った野菜を味わえるほか、直売も行っている。
(2015年7月3日 取材・撮影/RPI)

農業生産法人 株式会社クックソニア
http://cooksonia.net/

インタビュー

7.psd

夢を持って始めた農業。でも現実は厳しかった

01_IMG_0357.JPG耕作放棄地の多い名護市。芳野さんは条件のいい畑を借りながら、13年間で畑を1haまで広げた。 東京で農産物などの流通に15年間携わった芳野さんが、農業を始める地として選んだのは沖縄県名護市。「農業を始めるなら一年中農業ができる暖かい地域でと考え、沖縄へ下見に行ったところ、市場には見たことのない野菜があり、これを東京に持って行けば売れそうだと閃きました。見渡せば畑も多くあり、僕には沖縄で夢が広がっていくのが見えました」と芳野さん。

 新規就農者を受け入れてくれる研修先も見つかり、名護市に移住して農業を始めるが、収入はほぼゼロに近い状態からスタート。沖縄北部の「やんばる」と呼ばれるこの地域で、うりずんまめ(四角豆)や島オクラなどの野菜栽培に励み、農家としてやっていけるようになったと実感したのは、沖縄に移住して5〜6年経ってからだったという。

 「地元のイベントに参加し、自分たちが作ったものを食べてもらう努力をしながら地域に馴染んでいくうちに、農業は絶対一人ではできないものだと痛感しました」と芳野さん。自身の経験も踏まえ、後に続く新規就農者にノウハウを提供するなどサポートして、専業農家を増やしていくために、芳野さんは「沖縄畑人(はるさー)くらぶ」を立ち上げた。

新規就農者を支援する「沖縄畑人(はるさー)くらぶ」を発足

02_DSC_0182.JPG「沖縄畑人くらぶ」の15人のメンバーの前職は、営業、経理、SE、デザイナー、ライターなど様々。平均年齢は35歳。 「沖縄畑人くらぶ」に参加するには条件が2つある。ひとつは、世襲でなく新規就農者であること。もうひとつは、既存のオリジナルメンバーのところで1〜2年研修した後に、農家として独立していることである。現在6期目を迎え、県内外からの新規就農者15名が参加しているが、これまで辞めた人は一人もいないそうだ。
「目標をしっかり共有しているので、とにかく壊れないものができてるのかな」と芳野さん。その目標とは、利益性の高い農業を営んでいくために、除草剤は使わない、土壌消毒はしない、化学肥料も農薬もできる限り使わないなど、安全性の高い野菜作りを行い、自分たちで営業して直接流通を増やしていくこと。

 「でも、そんな風に一生懸命取り組んでも、台風がくると全部ダメになってしまうこともあります。ただ、僕自身は13年間もやっていると、次の日には種をまく根性が備わってきました。それも一人ではなく、仲間がいるとさらに心強いですね。沖縄畑人くらぶに参加しているメンバーが、いい野菜作りを目指してお互いに支え合い、刺激し合えれば、農業はもっと楽しくなるでしょう」と芳野さんは期待を込める。

生産者、飲食店、加工業者が取り組み始めた6次産業化

03_2015-07-25 14.03.57.jpg「やんばる畑人プロジェクト」の応援店として、やんばるスパイスを使ったパンを提供している名護市の「Pan de Kaito」。 「沖縄畑人くらぶ」の人数が増え、農作物の生産を増やしていく中、地元の飲食店オーナーたちから「もっと地元の農産物を取り入れたメニューを提供したい」という声を聞いた芳野さん。それまでは、地元への貢献と言いながら、自分たちで作った野菜のほとんどを「野菜セット」などにして県外に出荷していたが、その声をきっかけに考えが変わったという。

 芳野さんは、「〝やんばる〞に来ないと味わえない」というコンセプトを立て、地域の農家と飲食店、加工業者が手を組み、生産から商品開発、加工製造、販売までを行う「やんばる畑人プロジェクト」を立ち上げた。2011年の立ち上げから応援店は徐々に増え、今では37の飲食店やホテルがプロジェクトに参加している。

 プロジェクトで芳野さんがまず取り組んだのは、沖縄県産の素材で作る、純国産のカレースパイスミックスだ。ターメリックはウコン、トウガラシは島トウガラシ、ジンジャーは島ショウガに置き換えられることに気付き、沖縄県産の素材を58%使用した「やんばるスパイス」を完成させた。

沖縄だからこそ可能なモノづくりで挑む

04_2015-07-25 11.51.59-1.jpg04_2015-07-25 11.51.59-1.jpg2015年7月下旬、伊勢丹新宿店で開催された催事で、やんばるの野菜や加工品を販売する芳野さん。 「やんばるスパイス」の販路は、商品をメニュー化しているプロジェクトの応援店のみ。コンセプトとおり“やんばる”に来ないと味わえないもので、ブームに終わらない商品にしていくためには、地元の人に愛される商品でなければならないと考えた。また、芳野さんが経営する「クックソニア」は、2011年に六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画の認定を受け、「やんばるスパイス」に続き、プロジェクトのメンバーと共に、「やんばるスパイスカレー」を開発した。

 「やんばる畑人プロジェクト」の最終的なゴールは、“やんばるはおいしい”という地域ブランドを確立して、全国的に知名度を高め、地域の食にかかわる事業者全体が豊かになることです」と話す芳野さん。地域の魅力を伝えていくプロジェクトの取組は、2012年農林水産省 フード・アクションニッポンアワードにおいて審査員特別賞を受賞した。
「様々な団体の代表やプロジェクトのリーダーをやらせてもらってますが、僕が今こうやっていられるのも、地元の人のおかげ。これからは、恩返しをしていきたいと思っています」と芳野さんは語る。

サポーター

7.psd

〜ここで働く仲間、外部でサポートしてくれる仲間がいて成り立っている〜

農業生産法人 株式会社クックソニアをサポート

株式会社Kaito 代表取締役
河本 雅一さん(40)

「やんばる畑人プロジェクト」の応援店として、やんばるスパイスを使ったパンを販売

サポーター01_DSC00862.JPG河本さんは横浜でパン職人として実績を積み、2008年に名護市に移住。今では、名護市で3店舗を運営する大人気のパン屋の主人だ。 僕はパン屋を開業しようと横浜から名護へ家族で移住してきました。お客さんが増えてきた頃、芳野さんが突然店にやって来て「このインゲンをパンに使ってくれないか?」と言うんです(笑)。地元の野菜があるなら使ってみようと取引を始めましたが、こちらからは発注せず、その日に収穫された野菜の中から規格外のものを中心に納品してもらい、安く買わせてもらっています。
当日にならないと、どんなパンが出来上がるかわかりませんが、おかげで旬の野菜を使った季節感のあるパンが増えました。沖縄科学技術大学院大学や名桜大学にもカフェを出店していますが、「やんばる畑人プロジェクト」の応援店として、やんばるスパイスを使ったパンも各店舗で販売しています。

野菜村
渡部裕介さん(32)

「沖縄畑人くらぶ」で学び、沖縄では栽培が難しい葉野菜の栽培に挑戦!

サポーター02_DSC00746.JPGサポーター02_DSC00746.JPG300坪の敷地にハウス3棟を建て、従業員の上原準さん(32)と共に、葉野菜の栽培を行っている渡部さん(右)。 私が農家になろうと僕が決心したのは25歳。「沖縄畑人(はるさー)くらぶ」に入り、勉強会で農業について様々なことを教えてもらいました。研修期間を経てから、地元で祖父が営んでいたマンゴー園を畑に改良して、小松菜やチンゲンサイなど葉野菜の栽培を始めました。
実は、沖縄の風土・気候では葉野菜の栽培は難しく、県内の市場に並ぶ葉野菜の多くは県外のものなんです。需要はありますがリスクも大きい。何度も失敗しましたが、「沖縄畑人くらぶ」を通じて、北部農林水産振興センター農業改良普及課の方からアドバイスを受けたり、またメンバーからも刺激をもらい、8年目の栽培に取り組んでいます。
地域で必要とされる葉野菜を地元農家の手で作り、新鮮なものをなるべく安く消費者に提供していくためにも、今後は規模を10倍ぐらい大きくできたらと考えています。

達人からのメッセージ

7.psd
メッセージ_a_DSC00784.JPGメッセージ_a_DSC00784.JPG<新規就農を考えている人へのメッセージ>
農業なんて絶対やらない方がいいです(笑)。ちょっと勘違いされている場合があるのですが、いろんなことに疲れて、農業だったら作物は喋らない、人との付き合いもなくストレスがかからないから農業をしたいという人がいます。しかし、それは100%間違いです。農業は絶対ひとりではできません。いろんな人に助けてもらわないと成り立ちません。地元のイベントに参加して、自分たちが作ったものを食べてもらうなど地域に馴染んでいく努力も必要で、人が好きな人ほど農業は成功しやすいかもしれません。そして、よっぽどの覚悟が必要です。覚悟してやってやれば、必ずいいことあります。


農業生産法人 株式会社クックソニア

001 やんばるスパイス
料理研究家の渡辺玲(あきら)氏をアドバイザーに迎え、国産では難しいと言われていたカレー粉製造に挑戦。「やんばる畑人プロジェクト」で開発された第一弾商品。ターメリックはウコン、トウガラシは島トウガラシ、ジンジャーは島ショウガに置き換え、沖縄県産の素材を58%使用。手作りカレーはじめ、揚げ物や炒め物に加えると、強い香りや風味を楽しめる。今後さらに商品開発を進め、5年後を目標に、100%やんばる産のスパイスを開発したいと考えている。

商品01_畑人_DSC00972.JPG

002 やんばるスパイスカレー
やんばる畑人プロジェクト発で取り組んだ第2弾の加工商品。やんばるスパイスの香りと、やんばる島豚の希少部位『ピートロ肉』の旨み、そして、やんばる産パパイヤの南国沖縄ならではの爽やかさをプラスしたカレー。別添の『やんばるスパイス(粉)』をかけると、よりスパイシーに。2015年2月に県内のローソンで8千食限定で発売し、知名度を高めた。

商品02_畑人_DSC01041.JPG

003 やんばるスパイス原料シリーズ 
    黄金ウコン 乾燥チップ
やんばるスパイスにも使われている黄金ウコンを乾燥チップにした商品で、やんばる畑人プロジェクト発で取り組んだ第3弾の加工商品。お米を炊くときに3チップ程度入れれば、簡単ターメリックライスが完成。もちろん、カレーにもスープにも使える。乾燥チップになっているので、使い勝手が良いのも特徴。

商品03_畑人_DSC01055.JPG

004 Cookhalのエッグベネディクト
芳野さんが運営するカフェ「Cookhal」の人気メニューで、やんばるの野菜や自家製ベーコンがプレートに並ぶ。土曜日9:00~ 11:00の限定メニュー。

商品04_クックソニア_02b_DSC01014DSC01017.JPG

005 やんばるピクルス
クックソニアで販売している、旬の野菜を使ったピクルス。野菜の良さが最大限に引き出されるよう、カットの仕方や詰め方など試行錯誤を繰り返してできた商品。Cookhalなどで購入可能。

商品05_クックソニア_DSC01065.JPG

006 やんばる野菜
クックソニアで生産している野菜(四角豆やモーウィ、島オクラといった島野菜、コリアンダー、島唐辛子、コショウといったスパイス類など)や、沖縄畑人くらぶのメンバーが生産している野菜は、Cookhalで直売されている。

商品06_クックソニア_DSC00984.JPG

ページの先頭へ