有限会社 碧山園

達人名:安間 智慧子 Chieko Yasuma
    有限会社 碧山園 代表取締役
ジャンル:農業 Agriculture
神奈川県愛甲郡愛川町 Aikawa-machi Aikou-gun Kanagawa

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杜仲を活用した6次産業化を支える、産学官による技術の連携

安間智慧子さんは、1951年生まれで神奈川県出身。2003年に愛媛県産の杜仲茶と出会い、その美味しさに感激。この出来事と、遊休農地が増える一方だった愛川町に新たな産業を興したいという思いが重なり、愛川町の「町民アイデア町づくり事業」に『ジィージィー、バァーバの杜仲茶栽培事業』を提案した。アイディアは採用されたが、安間さんはご主人が社長を務める建設会社の専務取締役を務めていて、農業をはじめ、加工・販売の経験はゼロ。そこで安間さんは、杜仲茶栽培事業を進めていくため、様々な機関や専門家に技術的なアドバイスを求めた。まちおこしのための特産品づくりから始まったプロジェクトはやがて、地域の団体、行政、大学教授、そして中学・高校までも巻き込み、それぞれの技術を結集した6次産業化を展開。碧山園の杜仲茶は、栄養機能食品として注目され始めている。
(2015年7月7日 取材・撮影/RPI)

有限会社 碧山園
http://www.hekizanen.jp/

インタビュー

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杜仲によるまちづくりで事業がスタート

01ブロック.JPG遊休農地をプロジェクトメンバーと共に整地。地元・愛川中学校の生徒が参加しての植樹会も行われた。 安間さんが取り組む杜仲を活用した6次産業化は、2003年、愛川町の「町民アイデア町づくり事業」にアイディアを提案したことがきっかけだった。「愛川町は江戸時代から養蚕が盛んでしたが、平成になると衰退し、蚕の餌となる桑も使用されなくなり遊休農地が増えました。何か次の新しい産業を興したい。農地を使って愛川町らしいものを始めたいと思い、『ジィージィー、バァーバの杜仲茶栽培事業』を提案しました。これは、愛川町の老人会を中心とした高齢者達が、次代の子供達に残せるものづくりを行っていくというコンセプトで、遊休農地に杜仲を植え、完成したお茶をみんなで飲もう!というものです。

 杜仲は無農薬栽培が可能ですから愛川の自然に影響を与えませんし、体にもいいと言われていることから、高齢化により増大する医療費の削減にも役立てられたらという願いもありました」と安間さん。アイディアは町の支援事業のひとつに選ばれ、安間さんが代表を務める市民グループ「愛川町の健康を考える会」と地域の高齢者グループの「田代第二長寿会」が中心となり、まずは、遊休農地を復旧させることからプロジェクトはスタートした。

連携の輪を広げ、生産技術、加工技術を確立
杜仲が持つ機能性を最大限に引き出していく

02ブロック.JPG神奈川県産業技術センターは、碧山園の6次産業化において、機能性食品の品質向上に関わる技術支援や商品化・販売に向けて経営アドバイス、企業理念の構築、販売方法など、総合的に支援。 まちづくりのアイディアは事業として展開していくことになるが、安間さんは農業をはじめ、食品の加工、販売にも携わったことがなかったため、様々な機関や専門家に技術的なアドバイスを求めた。まず、杜仲の栽培技術に関しては、神奈川県農業技術センターや、地元農家の生産グループによる支援を受けた。杜仲は挿し木をしても発根が遅く、日本での挿し木は不可能と言われていたが、2009年に挿し木に成功し、優良株のみの増殖が可能となった。また、杜仲の苗木は当初広島県の因島から取り寄せていたが、愛川町で育った杜仲の種を発芽させ、苗木にすることにも成功。これにより「愛川産・杜仲茶」の原料となる葉の収穫も可能となった。

 次に、安間さんは、愛川町で育った杜仲の素晴らしさを実証できないかと考え、杜仲の成分分析について模索したころ、和薬医薬学会理事長でもある服部征雄富山大学名誉教授が協力。杜仲に有効成分が含まれていることを実証できた。しかし、杜仲茶に加工する過程で、乾燥による収縮など物理的なストレスを受けると細胞壁が壊れ紫色に変色し、有効成分も損なわれやすいことがわかった。そこで、安間さんは、神奈川県産業技術センターに相談。当時、神奈川県産業技術センターで碧山園の技術支援を担当した大澤利幸さんは、物理的なストレスを減らし、杜仲の葉を緑色のまま乾燥させると有効成分が失われにくいことを突き止めた。

無農薬栽培、特許製法で注目される栄養機能食品

03ロック.jpg杜仲の葉の色を活かすため独自の技術で仕上げられた緑色の粉末茶「碧山(へきざん)」( 杜仲茶100%)。碧山園の第1号加工商品。 碧山園は、神奈川県産業技術センターの支援により杜仲の葉を緑色のまま乾燥させる製造法を確立し、2008年に特許を取得。技術による差別化を図った。これにより、杜仲を活用した碧山園の6次産業化が大きく動き出す。販路には大手百貨店も加わり、碧山園の杜仲茶は、栄養機能食品として注目されるようになった。

 今後の事業展開について安間さんは、「まずは、杜仲茶の機能性表示を目指し、各大学の先生方との共同研究を進め、サプリなど新商品開発を行っていきたいと考えています。機能性食品の開発・拡販は、都市型農業の新しい形として地域活性化の原動力になるでしょう。研究費を獲得して、エビデンスに裏打ちされた質の高い食品づくりを進めていきたいです」と話す。さらに、神奈川県衛生研究所などの研究グループが、動物実験により生活習慣病のリスクを下げる効果を見出し、遺伝子レベルでそのメカニズムを解明した。この他、横浜市立大学、帝京科学大学、茨城大学では、杜仲茶によるメタボリックシンドローム抑制の研究や抗癌の研究も行われている。

愛川町の人々の手で、次世代につなげていく事業に

04ブロック.jpg04ブロック.jpg安間さんは、碧山園と併設で杜仲栽培を事業とするNPO法人瑞宝を立ち上げ、障害者雇用を進めていく。 「昔から杜仲は、中国では五大漢方薬のひとつと言われてきました。その素晴らしさが専門の先生方の研究によって、改めて実証されてきていると感じています。もしかしたら予想以上かもしれません」と、安間さんは、杜仲茶の可能性に手応えを感じている。碧山園の現在の売上高は、約1500万円だが、5年以内に2億円とすることを目指している。「今後は、神奈川県の農産物の中で、品質・生産量ともにトップを目指し、いずれは海外の市場も視野に入れたい」と安間さん。また、碧山園では現在3名の障害者を雇用しているが、安間さんは杜仲の葉の収穫や加工作業の場面で、障害者が活躍できることを確信。障害者や高齢者が働きやすい環境を作り、さらに雇用を進めていきたいと考えている。

 「事業がスタートしてから12年になり、初めての植樹会に参加してくれた中学生も今では立派な社会人です。次世代につなげていく事業として、その礎を築いていきたいです」と安間さん。足元から固めていくためにも、地元の人々から愛される商品でありたいと、地元ブランドとして登録を申請し、2015年、碧山園の杜仲茶は愛川町より「愛川ブランド」として認定を受けた。

サポーター

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〜ここで働く仲間、外部でサポートしてくれる仲間がいて成り立っている〜

有限会社碧山園をサポート

愛川杜仲研究会
会長 諏訪部さん

畑の提供から杜仲の栽培までをバックアップした
愛川町在住の農家、有識者を中心としたメンバー

01.jpg愛川杜仲研究会のみなさん。前列左から2番目が諏訪部さんで、前列中央が安間さん。 「まちおこしに採用された安間さんのプロジェクトの内容を聞き、これは休耕地の多い愛川町にとって将来有望な事業になると思い、愛川杜仲研究会を作り、農業未経験の安間さんをサポートしようと取り組み始めました。ただし、私たち自身も杜仲栽培の経験はありません。杜仲の栽培方法については、愛媛県の生名杜仲茶生産グループの経験者を招き、手ほどきを受けました。そして、木がどんどん大きくなっていく段階で剪定の必要性があると考え、親の代まで行っていた桑の栽培の知識を応用して取り組み始めました。ただし、3~4年の間は失敗が重なり全滅することもありましたね。研究会では毎月勉強会を開催し、誰ひとり欠席することなく、3年近く杜仲栽培の研究を重ね、ここ数年でようやく安定し、先が見えてきました。これからは次世代につないでいくための栽培技術の引き継ぎが必要と考えています。」

富山大学
監事 服部 征雄 名誉教授

杜仲茶の成分分析を実施して学会で発表
碧山園と共同で製造特許を取得

02_服部征雄 13顔写真(2).jpg02_服部征雄 13顔写真(2).jpg杜仲の成分分析を行い、事業展開の可能性を実証してくれた服部教授。 安間さんは、愛川町で育った杜仲の素晴らしさを実証できないかと考え、杜仲の成分分析について模索したところ、和薬医薬学会理事長でもある服部征雄富山大学名誉教授が協力。服部氏は、杜仲に含まれる有効成分を分析し、ゲニポシド酸、アスペルロシドなどのイリドイド類やクロロゲン酸などのポリフェノール類、各種ビタミン・ミネラルなどが豊富に含まれていることを学会で発表した。この成分分析結果を受け、安間さんは、有効成分を損なうことなく安定して加工するにはどうしたら良いか、神奈川県産業技術センターに相談した。

大阪工業大学工学部環境工学科教授 マイクロエネルギー研究室
(元 神奈川県産業技術センター 化学技術部)
大澤 利幸 教授

杜仲の機能性を示す技術的な根拠をわかりやすく伝えられるようサポート

03.JPG現在は大阪工業大学で教鞭を取る大澤さん。印象に残った事業支援ということもあって、今も大澤さんの手元には杜仲の種が残る。 「私は、杜仲茶の製造法の開発以外にも、杜仲に関連した世の中の動きを調べて、誰とどのようにコンタクトを取ったらいいか安間さんにお伝えしてきました。また、安間さんが販路を開拓する場面などで、技術的な根拠があることをわかりやすく伝えられるよう、翻訳のような作業もさせてもらいました。」

 「安間さんに限らず、発想があって、事業主の思いがあって、いいところと連携ができれば商品開発まではどなたでも到達できると思います。ですが、流通面などで行き詰まる方が多いのです。そこを乗り越えていくためには、自社製品の特徴をアピールし、様々な分野の方々に意見を求めていくことが、商品化にとって非常に大事です。そこで必要となるのは行動力でしょうか。碧山園の杜仲茶による6次産業化も多くの障害があったと思いますが、そこを乗り越えていけたのは、地域活動によるネットワーク力や、販売会などにおける外部への発信力など、開発から販売まで安間さんの一貫したパワー、行動力によるものだと思います。」

神奈川県立吉田島総合高等学校(草花部)

地元高校生が部活動で杜仲の栽培を研究

04.jpg草花部顧問 髙橋晋太郎先生(右)草花部 宗形由美さん(左) 杜仲の増殖研究は、地元・神奈川県立吉田島総合高等学校の草花部でも行われている。杜仲は苗木からの成長は早いが、苗木にするまでが難しい植物。草花部の宗形真実さんは、顧問の髙橋先生の指導を受けながら、試験管で培養している杜仲の観察を続け、順化・植え出しに成功。こういった次世代への杜仲栽培の技術伝承を安間さんも期待している。





達人からのメッセージ

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メッセージ.jpg私は、農業も加工も販売もすべて経験がありませんでした。この事業を進めていくにあたり大切にしたのは、造り酒屋の頭首だった曾祖母からの「己に判らないことは、専門家に訊ねなさい」という教えでした。私がいくら頑張っても機能性の評価はつけられませんし、条件づけもできません。「餅は餅屋」といいますよね。専門の知識を持った方たちのお力を借りる事はスピードアップにもつながりました。町おこしのためのアイディアから始まった杜仲のプロジェクトが、6次産業化として事業展開できるようになったのも、多くの方々の支えと「プロとプロの連携」があってのことで、感謝の念が尽きません。

有限会社碧山園

001 碧山園を代表する商品3点
杜仲茶100%の「碧山」(中央)/杜仲茶と桑茶をブレンドした「瑞茶」(右)/桑茶100%の「桑恵」(左)
いずれも無農薬で栽培した茶葉のみを使用し、加工したもので内容量は30g。ノンカフェインなので昼夜を気にすることなく飲める。現在、愛川町特産品売り場で販売。横浜タカシマヤなどの百貨店でも催事販売を行っている。

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