丸本酒造株式会社

達人名:丸本 仁一郎 Niichirou Marumoto
    丸本酒造株式会社 代表取締役
ジャンル:農業 Agriculture
岡山県浅口市 Asaguchi-City Okayama

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常温流通を可能にしたスパークリングの
日本酒で新たなファンを獲得!

丸本 仁一郎さんは1963年生まれ。大学を卒業後、醸造試験場で酒造りを学び、丸本酒造6代目当主に。やがて、酒造りにおいて最も大切な原料である酒造好適米を他社に依存していることに疑問を抱き、自社栽培を始めた。また、伝統を守りつつ新しい日本酒商品の開発にも力を注ぎ、日本酒に苦手意識を持つ女性でも飲みやすい微発泡の日本酒を開発。品質にこだわり完成した新商品は要冷蔵タイプだったが、保冷設備を持つ流通や販売店は限られており、販路を広げられないという課題に直面。試行錯誤の末、常温タイプの商品を完成させ、国内外に販路を広げている。
(2015年10月20日 取材・撮影/RPI)

丸本酒造株式会社
http://www.kamomidori.co.jp/

インタビュー

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日本酒に苦手意識を持つ女性に向けて
スパークリングの日本酒を開発

01.JPG酒蔵前の田んぼの一部では丸本酒造が使用する酒造好適米「山田錦」などを栽培している。2003年、この地を含む旧鴨方町全域が「鴨方町酒米栽培振興特区」に認定された。 丸本酒造株式会社の創業は幕末の1867年。150年続く老舗酒蔵を今に引き継いでいるのは、6代目の丸本仁一郎さん(52)。経営者で杜氏も務める丸本さんは、「美味しいお酒を造るには、優れた原料を確保しなければならない」との思いから、1987年より「山田錦」など酒造好適米の自社栽培を始め、米作りと酒造りの一体化を図っている。

 さらに、日本酒離れと言われる中、1998年より新しい日本酒の開発に着手。イメージしていたのは、日本酒が苦手な女性でもシャンパン感覚で飲める微発泡の日本酒。当時を振り返り、「自社の製造技術で、スパークリングの日本酒を開発できるという自信があり開発に着手しました。まずは、程よい微発泡を実現するため、発酵方法を工夫したり、炭酸ガスを注入するなど、様々な方法を試しました。また、アルコール度数を抑えた飲みやすい日本酒にするため、さらに特殊な発酵方法も試しました。しかし、品質が安定せず、アルコール度数も下がらないなど、イメージしていた商品がなかなかできずに苦労しました」と丸本さんは話す。

開発に5年の月日をかけた
商品の賞味期限は要冷蔵で4ケ月

02.JPG酒造りに入る10月から3月くらいまで、丸本さんは杜氏として酒造りに集中する。出張しても48 時間以内に必ず戻り、もろみの様子などをチェックする。 新しい日本酒の開発期間は5年に及び、酵母が生きたままの状態で瓶詰めを行い、瓶の中で二次発酵させるという製造方法に絞られた。「瓶内二次発酵は、スパークリングワインなどでもよく使われる方法です。ただし、微発泡を残しつつ、日本酒の風味を落とさずに充填するには、通常よりも高度なテクニックが必要で、私たちはそこに特殊なプロセスを導入し、微炭酸で甘い麹の美味しさが味わえるスパークリングの日本酒を完成させることができました。ところが、瓶の中に「オリ」と呼ばれる酵母や米の粉などの小さな固形物が残ることが原因で、常温に戻すと1カ月程度で品質が悪化するため、要冷蔵で4ケ月の賞味期限で発売することにしました」と丸本さん。

 新商品は、「泡々酒( ほうほうしゅ)」と名付けられ、2003年より発売を開始した。直売所での販売や、通信販売をはじめ、地元スーパーにも納品。岡山県内で配送が可能な範囲は、丸本酒造が所有する保冷車で輸送した。当時、スパークリングの日本酒は珍しく、「泡々酒」は、それまで日本酒に縁のなかった女性たちから注目を集めた。しかし、自社による輸送では販売エリアが限られてしまう。販路の拡大が課題として浮かび上がってきた。

常温流通を可能にしなければ多くの消費者には届かない

03.JPG販売先のスーパー・山陽マルナカでは、女性の心をつかむ商品として、注目される位置にディスプレイされている。 「酒類の物流には、冷蔵施設が備えられていないことがほとんどでした。また、宅配便で遠方に保冷輸送するとコストがかかります。さらに、コストを抑えるためまとめて輸送しようとしても、販売先では店頭に並べている商品が全てで、バックヤードで在庫を備蓄しない場合がほとんどです。納得のいく商品を常温で流通できるようにしないと、多くの消費者に商品を提供できないと痛感しました」と丸本さん。

 そして、2012年から新たな「泡々酒」の商品開発が始まった。常温流通を実現するためには、瓶の中に残るオリを取り除く必要があるが、瓶内二次発酵を行いつつオリを取り除くとなるとコストが大幅に高くなる。そこで丸本さんは、瓶の中ではなく、タンクの中で二次発酵させ、加圧しながら濾過し、発生した炭酸ガスを閉じ込めたまま瓶に充填する「シャルマー方式」への転換を図った。しかし、充填の段階で泡が溢れてしまうという課題に直面。一方で、溢れないように調整をすると、今度は味が落ちてしまう。そこで、社内の専門家が細かく分析を行い、試行錯誤を重ね、泡を溢れさせずに、かつ風味を保ちながら充填することができる製造条件を確立。常温流通可能な「泡々酒」を、一年をかけて完成させた。

オーガニック・サケをアピールして
海外にも販路を開拓

04.jpg04.jpg「泡々酒に合う料理レシピ」をフェイスブックで募集して、消費者から寄せらレシピの一例。一口サイズの細巻をはじめとしたパーティメニューと泡々酒を組み合わせている。 常温流通を可能にしたことにより、「泡々酒」の出荷本数は3〜4倍になり今では年間20万本を出荷。海外への輸出はこのうち2割を占めている。「基本的に酒類の物流網の範囲内なら、どこにでも流通させることが可能となりました。現在は、県内・県外のスーパーや百貨店、大手コンビニエンスストアチェーンでも採用され、欧米やアジア諸国など海外にも輸出をしています」と丸本さん。

 国内での需要のみに頼らず、海外に販路を求めた背景には、商品に対する自信や裏付けもあった。丸本酒造では、お酒の原料となる米作りにこだわり、国内外のニーズを踏まえて有機栽培も行っている。さらに、有機食品に関する日本農林規格の認証を取得。2009年には国産米による日本酒としては初めて、米国統一オーガニック基準であるNOP認証とEU統一オーガニック基準のECレギュレーションも取得した。欧米ではオーガニックに対する需要が高く、丸本酒造が海外に輸出している「泡々酒」や純米大吟醸の「竹林(ちくりん)」などは、オーガニック・サケとして、外国人ファンを獲得している。

サポーター

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〜ここで働く仲間、外部でサポートしてくれる仲間がいて成り立っている〜

丸本酒造株式会社をサポート

株式会社山陽マルナカ グロッサリー商品統括部
加工食品商品部 バイヤー 森山 寛志 さん

味と品質を維持したまま冷蔵から常温に
上手に切り替えられた商品

サポーター.JPG これまでのスパークリングの日本酒は、常温タイプよりも冷蔵タイプの方が甘さや香りが引き立ち、女性に人気があるという印象がありました。しかし「泡々酒」は、冷蔵タイプから常温タイプに切り替えた後も風味がそのままで、上手に切り替えられたと思います。日本酒を普段飲まない女性の場合、日本酒特有の風味を感じると苦手意識を持たれる場合がありますが、「泡々酒」は「ワインみたいに飲める」という感想をいただき、手応えを感じています。
 近年、大手メーカーがスパークリングの日本酒の販売を開始したことをきっかけに市場が広がり、「泡々酒」の売上げも伸びてきました。現在、岡山県内の山陽マルナカで、「泡々酒」はひと月に200本程度販売させていただいています。

達人からのメッセージ

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スパークリングの日本酒の可能性はまだまだあります。弊社独自の開発技術を活かし、次世代商品の開発研究にも着手しています。また、海外の販路開拓については、基本的には私が輸出を目指す国に出向き、営業を行っています。商品を作った人は、責任を持って自分で売りに行くことが大切だと思います。私の場合、その土地の食べ物をしっかり食べて、そこに住むお客様のことを考え、ご提案させていただいています。

丸本酒造株式会社

001 泡々酒(ほうほうしゅ)ストライプ
日本酒の発酵過程で発生した炭酸ガスを閉じ込めた、発泡純米酒。アルコール度数5%で糖類無添加。シャンパンのような味わいで「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2013」スパークリングSAKE部門で金賞を受賞。「泡々酒」という商品名は丸本さんの奥様が考案。この商品名が、中国や香港、台湾では、「パオパオチュウ」「ポウポウチュウ」という現地で親しみやすい発音で呼ばれており、商品のアピールにつながっている。

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002 花泡々酒
花泡々酒は、ハーブのハイビスカスとローズヒップを入れて発酵させたお酒で、ほんのりピンク色。

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