株式会社ブルーフィン三重

達人名:小川 広光さん Hiromitsu Ogawa
    株式会社ブルーフィン三重 代表取締役社長
ジャンル:漁業 Fishery
三重県度会郡南伊勢町 Minamiise-machi Watarai-gun Mie

00_main_268A4761.JPG00_main_268A4761.JPGスクリーンショット(2012-09-26 17.02.46).png

飼料にこだわった養殖で「伊勢まぐろ」をブランド展開

三重県度会郡南伊勢町の神前浦(かみさきうら)地区は、三重県の中でも有数の養殖マダイの産地で、ほかにも真珠母貝やヒオウギといった養殖が行われている。しかし、漁業・養殖業を取り巻く現状が厳しさを増すなか、地域経済の脆弱化や過疎化が進行していた。「こういった問題を打開して、地域の活性化を図っていくために、ひとつ大きなプロジェクトを立ち上げられないか。そういう発想で検討を重ねた結果、神前浦地区でクロマグロの養殖事業を始めることになりました」と、三重県漁業協同組合連合会の植地基方さん(写真右)は語る。そして2011年に三重県漁業協同組合連合会が中心となり、県内の漁業関係者らの出資によってブルーフィン三重を設立。ブルーフィン三重では、クロマグロを「伊勢まぐろ」と名付けてブランド化し、養殖から加工、販売までを一体的に取り組む6次産業化を代表取締役社長 小川広光さん(写真左)のもと展開している。
(2016年1月23日 取材・撮影/RPI)

株式会社ブルーフィン三重
http://bluefin-mie.com/

インタビュー

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漁業不振からの脱却と、
地域活性化を目指し、新会社を設立

01_268A4797.JPG神前浦地区沿岸は、暖かい黒潮と紀伊山地から流れ出たミネラルを豊富に含んだ海水が混ざる恵まれた漁場。伊勢志摩国立公園に指定されている。 2015年、ブルーフィン三重の2代目の代表取締役社長に就任した小川広光さんは、三重県漁業協同組合連合会の出身で、養殖方法や販路、市場の状況等、三重県の漁業事情に詳しい人物。神前浦を養殖場として選定した理由について、「第一に周辺海域がクロマグロの稚魚であるヨコワの好漁場であること、第二に近隣に三重県一の水揚高を誇る奈屋浦漁港があり、大量に餌が確保できること、第三に黒潮の恩恵を受けた潮流の速い海域で、常に新鮮な海水が循環する環境にあり、大きな河川がなく環境悪化の要因が少ないことが挙げられます。クロマグロは、日本をはじめ世界各地で需要が高く、また高価格で推移している魚なので、好条件が揃った漁場で品質の良いクロマグロを養殖し、販路を開拓できれば、収益が見込めると思いました」と小川さんは話す。

伊勢まぐろの品質を高める
データベースで管理された給餌

02_2_餌こね1.jpg給餌は一日に2回、生餌とモイストペレット(写真)の2種類を与えている。1種類につき40~60分かけ給餌を行う。 しかし、クロマグロは需要が高いだけに、全国各地には大間のマグロや近大マグロ等、様々なブランドマグロが存在する。後発事業者であるブルーフィン三重は、他のブランドマグロとの差別化を図る必要があり、品質を高めるための様々な工夫を行った。まず、ヨコワの確保においては、7〜9月の期間、熊野灘近海を中心に地元の漁師が一尾ずつ釣ったものを仕入れ、体長が20〜30cmと魚体が小さいうちから養殖することにより、個々のクロマグロの個体差が少なく、安定した身質になるようにした。また、飼料については、飼料メーカーの日清丸紅飼料株式会社と共同で固型飼料のモイストペレットを開発した。

 「給餌は、午前と午後で一日に2回、生餌とモイストペレットの2種類を与えています。生餌は、奈屋浦漁港で水揚げされたゴマサバやイワシ類など、新鮮な魚を三重県漁業協同組合連合会を通じて仕入れています。また、日清丸紅飼料さんと共同開発したモイストペレットは、粉末配合飼料と近海で獲れた新鮮な魚を船上で混合、攪拌、造粒することにより、製造しています。このモイストペレットを給餌することにより、生臭さが少ない美味しい身質になります。また、カロリーベースでデータ管理を行い、魚の成長具合を見ながらモイストペレットの大きさを調整することもできます」と小川さん。

地域で連携して
「伊勢まぐろ」のブランドを発信

03_268A4931.JPG03_268A4931.JPG現在、社員数は10名。20~30代の若い社員たちもブランドマグロの養殖に関わっている。 さらに、ブルーフィン三重では、伊勢まぐろの健康管理には、魚の成長具合だけではなく、季節や環境にも合わせた飼料を使用することも必要と考え、2014年から、水揚げした伊勢まぐろの身の栄養成分の分析を毎月行っている。「こういった取組により、繊細で緻密な身質の伊勢まぐろに仕上がっていると思います。実は、神前浦地区はクロマグロ養殖漁場としては日本最北東にあります。沖縄や九州などの国産の生産地と比べ海水温が低く、成長が遅いという不利な条件もありますが、脂がノリ身の締まったマグロが育つというメリットもあります」と小川さんは話す。

 飼料の開発だけでなく、ブルーフィン三重ではクロマグロの養殖環境にも配慮しており、水中網洗浄機を使用し、6日間をかけてひとつの生簀を洗浄している。海中での作業となるため、クロマグロの養殖に直接関わる社員全員が潜水士の免許を取得。誰もがこの作業を行うことができる。
そして十分に生育したクロマグロの水揚げでは、電気ショックを与え、血抜き、神経除去、内臓・エラ除去、魚体冷却までの作業を3分以内で終わらせている。「素早く処理をして鮮度を保ち、品質の良い美味しい伊勢まぐろを食べてもらいたいという意識が、若い社員たちにも浸透しています」と小川さん。

ブランドマグロの認知度アップとともに、
神前浦地区全体の漁業を活性化していく

04_IMG_2595.JPG地元・神前浦地区振興産地協議会と共に、伊勢まぐろの給餌体験ができる漁業体験を企画。地域との連携を深め、伊勢まぐろを中心とした地域活性化に取り組んでいる。 自慢の伊勢まぐろの販路開拓は地元から始まり、三重県漁業協同組合連合会もその一役を担った。「まずは、地元の方々にプロジェクトの主旨を理解いただくこと、品質の良い伊勢まぐろを育てていることを知ってもらうことが必要です。本格出荷の前に、神前浦地区の組合員の方々に、伊勢まぐろを食べていただいたり、イベントに出展してPRしてきました」と植地さん。販路は徐々に広がり、水揚げされている7割のクロマグロが東海地方に出荷されるようになった。一方、販売量が増えるにつれ、安定した生産を求められるようになる。小川さんは、「自然相手のリスクもあり、稚魚の入手が困難になることも予想されます。今後は、人工種苗の入手も視野に入れています」と話す。

 生簀は現在12基稼働しているが、ブルーフィン三重では、将来的に18基の設置を予定し、毎年1万尾の伊勢まぐろを水揚げしたいと考えている。「『伊勢まぐろ』のブランド発信とともに、地元のタイなどほかの養殖業者とも連携して、神前浦地区全体の漁業を活性化していけたらと思っています」と小川さんは抱負を語る。

サポーター

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〜ここで働く仲間、外部でサポートしてくれる仲間がいて成り立っている〜

株式会社ブルーフィン三重をサポート

神前浦地区で「神前丼」が食べられる5つの飲食店

「伊勢まぐろ」を使った丼を作り、地元民が一体となってPRしていく
『神前浦伊勢まぐろ美味しプロジェクト』

support_2.jpgランチの店としても居酒屋としても人気の店「たまり場」のメニュー。「伊勢まぐろ」に加え、ネギトロ、その日に獲れた新鮮な魚の刺身、そして海老を贅沢に盛ったゴージャスな丼。 三重県漁連 水産振興室は、地元の飲食店に働きかけ「伊勢まぐろ」を使った「神前丼(かみさきどん)」を考案。プロジェクトは、『神前浦伊勢まぐろ美味しプロジェクト』と名付けられ、協力店は旅館や民宿、定食屋など5店。「神前丼」は、「伊勢まぐろ」とごはんが使われていることのみが条件で、レシピの内容は各店とも実にさまざま。神前浦地区を訪れた観光客が、『伊勢まぐろ』の美味しさを味わってもらえたら嬉しいです」と、たまり場の女将、西脇月世さんは話す。

※「神前丼」が食べられるお店/ありすえ/たまり場/タカラ旅館/かわちや旅館/民宿 八方


達人からのメッセージ

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我々は、マグロの養殖では後発事業者で、まだスタートしたばかりです。社員も少ないですから、網の修理、給餌、水揚げなどすべて誰でもなんでもできるようスキルを磨いています。そして、「自分たちが作りたい魚はどういう魚なんだ」というテーマを持って、改善できるとこは改善していくようにします。マグロは非常にデリケートな魚ですが、社員全員が、「伊勢まぐろを死なせない」という思いも持って、日々、養殖事業に取り組んでいます。

株式会社ブルーフィン三重

001 伊勢まぐろ 柵
「伊勢まぐろは、クセのない甘味と旨味が特徴。なめらかな食感ととろけるような美味しさを堪能してください」と小川さん。

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